第2978回 12年ぶりのグランドスラム達成 (1) 勝ち点2差でフランスを追うアイルランド

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■優勝争いのサバイバルゲームとなったイングランド-アイルランド戦

 フランスは第4節のウェールズ戦で13-9と勝利して4連勝、グランドスラムに王手をかけた。最終戦は3月19日のスタッド・ド・フランスでのイングランド戦であるが、フランスは第4節では最初に試合を行い、最終節では最後に試合を行う。ウェールズ戦からイングランド戦までの間に4試合が行われ、これらの結果が優勝の行方に大きく影響している。
 第4節、ウェールズ-フランス戦は金曜日の3月11日に行われ、4勝したフランスはこの試合終了時点でボーナスポイントを含めて勝ち点18とした。翌日の午後にはイタリア-スコットランド戦が行われ、スコットランドが5トライをあげて33-22と勝利し、ボーナスポイントを獲得し、勝ち点を10に伸ばし、イタリアは勝ち点0のままである。
 そして夜に行われたイングランド-アイルランド戦は優勝争いのサバイバルゲームとなった。イングランドもアイルランドもここまで2勝1敗、ボーナスポイントを含めた勝ち点はイングランドが10、アイルランドは11である。つまり、この試合で勝利して勝ち点4を得ない限り、逆転優勝は不可能となる。そしてイングランドは最終節の相手はフランス、すなわち自力で優勝の可能性を残しており、モチベーションも維持されている。

■開始早々に史上最速のレッドカードで数的不利となったイングランド

 ロンドンのトゥイッケナムで行われた注目の一戦は思わぬ展開となった。試合が始まって2分経っていない時点、イングランドのロックのチャーリー・ユールズのタックルが危険なタックルとしてフランス人主審のマチュー・レイナル氏はレッドカードを提示する。6か国対抗の歴史で最も早い時間帯での退場処分となった。またユールズのタックルを顔面に受けたアイルランドのジェームズ・ライアンも試合継続が不可能となり負傷交代する。この反則で得たペナルティキック、アイルランドはショットを選択し、ジョナサン・セクストンが先制のペナルティゴールを決める。さらにどよめきが収まらない8分に、アイルランドは数的優位をいかしてボールをつないで前進、ウイングのジェームズ・ロウが快足を飛ばしてトライ、セクストンのコンバートは外れたものの、8-0とリードを広げる。80分間のほとんどを14人で戦わなくならなくなったイングランドは浮足立つ。

■イングランドを救ったジャック・ノエルとマーカス・スミス

 アイルランドの一方的な試合になるかと思われたが、イングランドには試合の救世主が2人現れた。1人目がウイングのジャック・ノエルである。スクラムではフランカーの位置に入り、スクラムでイングランドはアイルランドを圧倒する。
 このスクラムでの反則で得たペナルティキックを得点につなげたのが、2人目のスタンドオフのマーカス・スミスである。スミスは昨年の夏に代表の試合のデビューし、23歳になったばかりの選手である。フィリピン出身でアジア枠として日本のチームが獲得に乗り出したことから、日本の皆様もよくご存じの選手であろう。近年ヘンリー・フォード、オーウェン・ファレルが務めてきたスタンドオフの座を勝ち取った。スミスは17分にスクラムで得たペナルティゴールを決め、32分にもペナルティゴールで3点を追加し、2点差に迫る。アイルランドもトライを決めて、ゴールも成功させるが、スミスは前半終了間際にペナルティゴールを成功させ、前半はアイルランドが15-9とリードして折り返す。 攻めるアイルランド、守るイングランドという構図は変わらなかったが、スクラムで優位に立つイングランドはペナルティゴールを52分、60分とスミスが決めてついに15-15と追いつく。

■4トライをあげてイングランドを最後に突き放したアイルランド

 しかし、イングランドの健闘はここまで、セクストンに勝ち越しのペナルティゴールを決められ、その後は72分と76分にトライを重ねて32-15と勝利する。アイルランドは、4トライをあげてボーナスポイントも獲得する。ここまですべての試合でボーナスポイントを獲得したアイルランドは勝ち点を16とし、フランスと勝ち点2の差で最終節を迎えるのである。(続く)

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