第3033回 ラグビーフランス代表、4回目の訪日(3) 代表経験の浅い選手が活躍する伝統

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■経験の浅いメンバーで戦った2020年のオータムネーションズカップ決勝

 6月20日に42人のメンバーを発表した後、3人が新型コロナウイルスの陽性反応を示したが、チームに遅れて合流した。一方ドリアン・アルドゲリが負傷のため、メンバーから外れて、日本に向かった。
 第1テストは7月2日に豊田、第2テストを9日に東京で行う。フランスにとっては経験の少ないメンバーで戦うことになるが、本連載の読者の方であれば、2020年秋のオータムネーションズカップの決勝を思い出されるであろう。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年は夏と秋の南北対抗のテストマッチを開催することができなくなったために急遽開催された大会である。シーズン中に行われる大会とあって、所属クラブと代表チームの活動が重なり、代表チームでの出場試合数は最大3試合までと制限が設けられた。フランスは決勝まで進出したが、主力選手はそれまでの試合で出場可能試合数の制限に達してしまった。

■イングランド相手に大魚を逃す

 決勝の相手はベストメンバーのイングランド、2020年1月の6か国対抗ではフランスが勝利しているとはいえ、前年のワールドカップでは北半球勢最高の準優勝チームである。しかも、舞台はイングランドの聖地トゥイッケナム、6か国対抗での勝利はパリであったため、若手中心のフランスに勝機はないと思われてきた。
 ところが、このロンドンでの決勝戦、前年のワールドカップメンバーが1人しかいないフランスは大健闘、試合収容間際まで7点差のリード、ラストプレーでイングランドにトライを許し、ゴールも決められたため、同点となって試合は延長戦にもつれ込む。延長戦でオーウェン・ファレルのペナルティゴールによって敗れるが、若いメンバーの健闘はその後のこのチームの飛躍のステップとなった。

■イングランドとの決勝戦を支えたバティスト・クイユーとマチュー・ジャリベール

 そのトゥイッケナムでの試合の主将を務めたのがスクラムハーフのバティスト・クイユーであり、ハーフ団でコンビを組んだスタンドオフがマチュー・ジャリベールであった。この2人はアントワン・デュポン、ロマン・エンタマックが不在のチームの屋台骨となり、今回の日本遠征のメンバーにも入っている。そしてこのイングランド戦で代表にデビューした唯一の選手がセレバジオ・トロフアであり、日本遠征ではグレゴリー・アルドリットの穴を埋めることを期待されている。それ以外にフッカーのピエール・ブルガリ、センターのヨラム・モエファナも出場選手で日本遠征のメンバーに選ばれている。

■代表選手の基盤となるTOP14

 経験の浅い選手であってもフランス代表に入って一定レベルのパフォーマンスを残せる理由は彼らの所属しているTOP14のレベルの高さにあるであろう。現在のフランス代表に入る資格はフランス国籍を有していることに加え、フランス国内のリーグに所属していることが要求される。1部リーグに相当するTOP14は14チームからなり、レギュラーシーズンだけで年間26試合、上位6チームはポストシーズンにプレーオフを戦う。特筆すべきはリーグ上位の7チームは欧州チャンピオンズカップに出場し、他国のトップレベルのチームと対戦することになる。この欧州チャンピオンズリーグはフランス勢の独壇場であり、5月にはラロッシェルが初王座についている。
 このように高いレベルのリーグで多くの試合を重ねていることから、どの選手がフランス代表に入っても安定したパフォーマンスを残すことができる。その好例がメルバン・ジャミネである。昨夏の豪州遠征で代表に入り、そのまま、フルバックに定着している。
 一方、リーグ戦上位のチームの選手は欧州チャンピオンズカップ、ポストシーズンのプレーオフと過密なスケジュールを過ごしていることも事実であり、今回の2000分ルールが適用されたわけである。フレッシュな選手の起用が吉と出るか凶と出るか、注目である。(続く)

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