第3324回 2024年6か国対抗開幕(6) 初戦はアイルランドに記録的大敗

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■追い上げるフランス、ポソロ・ツイランギが代表デビュー

 アイルランドがリードし、それに対してフランスが追い上げるという展開となり、後半に入った53分、フランスはポール・ガブリヤーグのトライとトマ・ラモスのコンバージョンで17-24と7点差に迫る。そしてフランスがトライに至ったプレーでアイルランドの選手に反則があり、シンビンとなって10分間、両チームとも14人で戦うことになる。
 ファビアン・ガルティエ監督はここで最初のインパクトプレーヤーを投入する。4年ぶりのトライをあげたガブリヤーグに代えてポソロ・ツイランギを投入した。
 本連載の読者の皆様であれば本連載第3319回で紹介した34人のメンバーに入っていなかったことをご指摘されるであろう。当初、この試合のメンバーに入っていたロマン・タオフィフェヌアが体調不良のため、直前にメンバーから外れ、代わりに招集されたのが19歳のポソロ・ツイランギなのである。

■父はペルピニャンでプレー、フランス国籍を有せずフランス代表入りしたツイランギ

 名前からお分かりの通り、サモアの生まれである。サモアから欧州に舞台を移して活躍するツイランギファミリーの一員であり、父親はかつてサモア代表として活躍したヘンリー・ツイランギである。なお、ヘンリーの弟がNTTコミュニケーションズの黄金期を支えたアレサナ・ツイランギである。さらにアレサナの弟にはイングランド代表のナンバーエイトを務めたマヌ・ツイランギがいる。ポソロの父ヘンリーはツイランギファミリーが多数在籍したイングランドのレスタータイガースから2007年にペルピニャンに移籍してきた。当時3歳だったパソロもイングランドからフランスに渡る。
 それ以来パソロはペルピニャンで育ち、ペルピニャンの下部組織に所属し、年齢別のフランス代表にも選ばれた。そして2022年9月に父も袖を通した赤と黄色のジャージを着て、プロとして最初の試合を迎えたのである。昨年夏にはワールドラグビーU-20チャンピオンシップで優勝し、フランス代表の首脳部の目に留まった。しかし、ポソロはフランス国籍を取得していなかった。フランス代表入りするためにはフランス国籍が必要であるが、ポソロはフランス国籍を取得していないことが問題となった。しかし、最終的にはワールドラグビーの定める5年間連続して在住という条件を満たしているため、フランス代表入りが可能となったのである。また代表入りの中でガルティエ監督と面談し、ロックではなくプロップへのコンバートも打診されたが、ロックでの出場を希望している。今回は主力ロックの体調不良により、19歳での代表初キャップとなったのである。

■アイルランド、ボーナスポイント獲得となる4トライ目をあげる

 1メートル94センチ、149キロという規格外のサイズのツイランギが入り、フランスはスクラムでの流れは変わったが、アイルランドは試合巧者であった。フランスの反則によって得たペナルティキックで前進し、62分にはゴール前5メートルのラインアウトからフッカーのダン・シーマンがトライをあげ、この試合で4トライ目となりボーナスポイントを獲得する。ジャック・クローリーのコンバージョンも決まり、31-17とリードを広げる。

■ゴール前のラインアウトからモールでトライを再び許し、記録的大敗

 フランスは64分にノーラン・ルギャレックも代表初キャップを獲得し、フレッシュなプレーを見せるが、攻め込むことができない。
 フッカーがシーナンからローナン・ケラハーに代わったアイルランドは、78分に同じように左サイドのゴール前5メートルからのラインアウトからモールを組んでケラハーがトライをあげ、クローリーのコンバージョンも決まって38-17と大勝した。
 6か国対抗となってからフランスがアイルランドにホームで敗れたのはこれまで3回あるが、いずれも2点差の惜敗であった。今回は21点差で敗れ、これは1911年の当時の5か国対抗の25-5を上回るアイルランド戦の最多得点差での敗戦となったのである。(この項、終わり)

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