第80回 デンマークに惨敗、悪夢再び(3) 疑問の残る昨秋から今春にかけての親善試合

■ディディエ・デシャンとローラン・ブランの引退後に3連続引き分け

 前回の本連載ではロジェ・ルメール監督の保守的な思考が今回の惨敗の理由であると述べた。しかし、もちろん監督だけの責任ではない。準備段階で問題はなかったであろうか。まず、この1年間の親善試合のマッチメーキングについては大きく疑問の残るところである。本連載でもたびたび取り上げてきたが、振り返ってみよう。
 前回優勝のフランスは予選を免除されているため、この2年間は親善試合を繰り返してきた。予選を免除されるということは緊張感のない試合ができないというデメリットはあるが、自分たちの目標にあった相手と試合をすることができるというメリットもある。フランスはそのメリットを享受してきたのであろうか。
 欧州選手権以降の最大の課題はディディエ・デシャンとローラン・ブランの引退という中で文字通り新チームを立ち上げていくことであった。2人の引退試合として9月にイングランド戦、10月にはタイトなスケジュールの中でアフリカのカメルーン、南アフリカと連戦する。この3試合は3戦連続で引き分ける。3戦連続で勝ち星がないということは過去10年間のフランス代表の歴史の中で2回目のことである。そして11月にはトルコとアウエーで戦い、4-0と一蹴し、20世紀を締めくくる。

■強豪相手に好成績を残した2000-2001シーズン

 そして年が改まって新世紀最初の対戦はドイツ戦、この難敵に1-0と勝ち、3月には日本に5-0と大勝した直後にスペインに1-2で敗れる。そして4月にはタレント軍団のポルトガルに4-0と再び大勝し、シーズン中の試合が終わる。結局欧州選手権の翌シーズンは4勝3分1敗という成績であったが、注目すべきは8試合の相手すべてが今回のワールドカップ本大会に出場し、しかもイングランド、トルコ、ドイツ、日本、スペインと8チーム中5チームが決勝トーナメントに進出していることである。これらの強豪相手に好成績を残したことについては評価しなくてはならないであろう。

■収穫の少なかったコンフェデレーションズカップ出場

 6月には韓国と日本でコンフェデレーションズカップが開催された。スペインリーグやイタリアリーグと日程が重なるため、多くの選手がエントリーできず、不参加も検討したが、結局多くの若手選手をメンバーに入れて出場した。結果的には優勝したものの、本大会に向けて開催国である韓国と日本の地を踏んだことを除くと、抜擢された若手選手の中でその後従来のメンバーをしのぐ選手が誰一人としていなかったことやベストメンバーの強豪チームと対戦できなかったことを考えてみれば、この大会に出場した意味はそれほどなかったのかもしれない。
 コンフェデレーションズカップが終了し、恒例の8月の親善試合では10月後に惨敗することになるデンマークを1-0で下す。これがフランス代表の最後の輝きとなったのである。

■弱小国との連戦の後、ワールドカップ出場国に苦戦

 秋になってからの親善試合については本連載第73回で紹介した通り、全く脈絡のない対戦相手ばかりと試合をしている。アルジェリア、チリ、豪州、ルーマニア、スコットランドとワールドカップ本大会に出場しないチームとの親善試合が続く。アルジェリア、ルーマニア、スコットランドについては大勝したが、いずれもすでにワールドカップ予選で敗退し、新チームを結成したばかりの相手であった。下位を低迷していたとは言え南米予選を戦っていたチリに敗れ、ウルグアイとのプレーオフを控えた豪州と引き分けたということを考慮するとワールドカップ予選で敗退したチームとの対戦がいかに意義が少ないかがよくわかる。
 そして春を迎え、ロシア、ベルギー、韓国と対戦し、日本が勝ったロシアにはスコアレスドロー、日本が引き分けたベルギーには負けている。そして韓国には勝ったものの、ジネディーヌ・ジダンを失った。もちろん親善試合は両国が相手に敬意を示してこそ成り立つものであり、単純にワールドカップに向けた強化だけを目的としたものではない。しかしながら、昨秋から今春にかけての親善試合がフランス代表というサッカーチームにとってどれだけ意味があったかは大いに疑問の残ることである。2000-2001シーズンには強豪相手に対して好成績を残していること、昨年8月にホームとは言え1-0と勝ったデンマークに仁川で惨敗していることを考えると、フランス代表というチームが意味のない親善試合を続けていた1年の間に急速に弱体化したということも否定できないであろう。(続く)

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