第558回 フランス代表メンバー発表(1) 新人を抜擢しなかった予選突破後の親善試合

■5月中旬に終了し、ワールドカップに備える欧州のリーグ戦

 いよいよ6月9日に開幕するワールドカップ・ドイツ大会、参加メンバーの最終登録期限は5月15日であったが、フランス代表のレイモン・ドメネク監督は23人のメンバーをリーグが終了した翌日の5月14日に発表した。
 前回のワールドカップでのフランスの敗退はさまざまな理由が挙げられるが、欧州各国のリーグの終了する日程がまちまちであったため、23人の選手がそろって合宿に参加する期間が結果的に短くなり、選手のコンディション、チームの結束が不十分なまま、本大会に突入したことが挙げられる。今回はその反省をもとに、欧州の各リーグは5月中旬にリーグ戦等を終了し、ある程度の休養をとってメンバーがそろって合宿に参加する日程となった。

■新人、若手を起用しなかったドメネク監督

 本連載でも紹介したとおり、フランス代表は昨年秋にワールドカップ予選が終了してからはほとんど活動の機会がない。スイス、アイルランド、イスラエルを相手に苦しんだ予選であるが終わってみれば首位であり、プレーオフを経験することがなかった。プレーオフと同時期にコスタリカ、ドイツと親善試合を行い、その後は今年3月1日にスロバキアと親善試合を行って今日に至っている。つまり過去半年間でわずか1試合を行っただけである。23人のメンバーはワールドカップ出場が決まってからの3試合に出場したメンバーから選出されるであろうと言うことを誰もが考えていた。
 この親善試合3試合で起用した選手はのべ24人、ちょうど定数の23人と似たような数字である。3試合フル出場したのはリリアン・テュラムただ一人である。途中交代を含む3試合に出場したのは、ビカッシュ・ドラッソー、アルー・ディアラ、フローラン・マルーダ、ニコラ・アネルカ、ティエリー・アンリの5人である。
 24人の選手で代表歴が1桁の選手はディアラ(8試合)、エリック・アビダル(5試合)アントニー・レベイエール(5試合)の3人であり、ベテラン中心の選手起用であった。そしてこれらの3試合で新人は試合前の合宿に招集されたが試合には出場していない。本連載第520回でスロバキア戦にフランソワ・クレルクとジェレミー・トゥーラランが招集されたことを紹介したが、結局クレルクはベンチ入りしたものの出場機会に恵まれず、トゥーラランはスタッド・ド・フランスのスタンドから観戦することになった。

■注目を集めた正GK争い

 この14日のメンバー発表の焦点はドメネク監督が正GKにファビアン・バルテスとグレゴリー・クーペのいずれを指名するかであった。バルテスは所属チームのマルセイユでも精彩を欠き、リヨンのクーペを推す声が圧倒的に強い。そして最後の親善試合となったスロバキア戦ではバルテスを起用したが、凡ミスから2失点を喫しており、クーペを正GKに推す声はファンからだけではなく選手たちからも強くなったのである。

■予選突破後に代表に復帰したアネルカ

 また、攻撃陣での注目はアネルカである。アネルカはユース時代からドメネク監督が高く評価し、1998年のワールドカップ前に代表にデビューしたが、1998年大会、2002年大会とワールドカップには出場していない。欧州選手権も2000年大会に出場しているが、2002年4月のロシア戦を最後に以降代表から離れていた。そのアネルカが復帰したのが、昨年11月に海外県のマルティニックで行われたコスタリカ戦である。マルティニックが先祖の故郷であるアネルカは逆転の口火を切る劇的なゴールを決め、それ以来ドイツ戦、スロバキア戦と3試合連続してブルーのユニフォームを着ている。FWで3つの親善試合全てに出場したのはアネルカとアンリだけである。しかしながらアネルカに疑問を持つ声も少なくない。
 さらに3つの親善試合には出場しなかったが、バルセロナがチャンピオンズリーグ準決勝のACミラノ戦で殊勲のゴールをあげたルドビック・ジュリー、2002年大会を負傷で棒に振り、長らく代表から離れているロベール・ピレスなどの去就が注目を集めた。ドメネク監督が合宿所のクレールフォンテーヌで発表した23人は大きな衝撃を与えたのである。(続く)

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