第559回 フランス代表メンバー発表(2) 驚きの抜擢、パスカル・シンボンダ

■最終期限より1日早くメンバーを発表

 5月14日日曜日の11時30分、レイモン・ドメネク監督は23人の代表メンバーを発表した。エントリーの最終期限は翌15日であったが、日曜日にレギュラーで放映されるサッカー番組の中でメンバー発表を行ったため、1日早いメンバーの発表となった。
 前回の本連載で紹介したとおり、このところ選出されるメンバーは固定しており、それほど大きな驚きはないと、朝市から帰って昼食の準備に取り掛かろうとしているテレビの前の視聴者は考えていた。2002年のワールドカップからエントリーメンバーが22人から23人に増えた。これは各ポジション2人ずつという基本的な考え方に加え、負傷の可能性のあるGKは1人余計に3人をエントリーさせるように配意したものである。

■予想されたメンバー

 3人のGKはファビアン・バルテス、グレゴリー・クーペ、ミカエル・ランドローが確実であるが、問題は第一GKに誰を指名するかであった。
 DF陣は7人か8人が選出、ここもビリー・サニョル、ウィリアム・ギャラス、リリアン・テュラム、エリック・アビダル、ジャン・アラン・ブームソン、ガエル・ジベなどが当選確実であるが、右サイドDFでサニョルのバックアップメンバーが見当たらないことが懸案であり、逆に人材豊富な左サイドにミカエル・シルベストルを追加するかが議論の分かれ目であった。
 MFは守備的な役割のパトリック・ビエイラ、クロード・マケレレ、アルー・ディアラ、攻撃的な位置のジネディーヌ・ジダン、ビカッシュ・ドラッソー、フローラン・マルーダがほぼ確実、攻撃陣では前回紹介したルドビック・ジュリー、ロベール・ピレスやジェローム・ロタンの復活、守備的な位置ではアーセナルで左サイドのレギュラーを獲得したマチュー・フラミニの抜擢が期待された。
 そしてFWはティエリー・アンリ、ダビッド・トレゼゲ、シルバン・ビルトールなどに異論はなく、ジブリル・シセ、ニコラ・アネルカなどの復帰、そして代表発表の前日に4月の月間最優秀選手の表彰を受けたフランク・リベリーの抜擢に注目が集まった。

■プレミアリーグのベストイレブン、パスカル・シンボンダ

 結局発表された23人はGKはバルテス、クーペ、ランドローと予想通り、そして第一GKにはバルテスが指名された。
 DFは8人が選出され、サニョル、ギャラス、テュラム、アビダル、ブームソン、ジベが順当に選出されたほか、シルベストルが入り、右サイドDFのバックアップメンバーとして本連載でも紹介したことのなかったパスカル・シンボンダを代表に初選出、大きな驚きを与えた。
 グアドループ出身のシンボンダはすでに27歳、2000年にルアーブルでプロデビュー、2003年にバスティアに移籍、コンスタントに試合に出場するが決して目立つ存在ではなかった。昨年夏、イングランドのプレミアリーグに昇格したばかりのウィガン・アスレチックスに移籍、そこで花が開く。右サイドバックとして大活躍、フランク・ランパード、スティーブン・ジェラード、ウェイン・ルーニー、ティエリー・アンリなどとともにプレミアリーグのベストイレブンにも選出される。プレミアリーグの右サイドバックというとマンチェスター・ユナイテッドのガリー・ネビル、リバプールのスティーブ・フィナン、チェルシーのパウロ・フェレイラなど多士済々である。10年前は4部に所属し、今季1部に昇格したばかりのクラブからベストイレブンに選出されることだけでも事件であるが、昇格1年目を10位という上々の成績を残したチームの要としての活躍は代表選出に値する。

■ニコラ・アネルカ、三たびワールドカップを逃す

 MFについてはビエイラ、マケレレ、ディアラ、ジダン、ドラッソー、マルーダの6人だけとなり、実績のある選手の復帰は実現しなかった。
 そして最後にFWであるが6人が選出された。アンリ、トレゼゲ、ビルトールのほかにはシセ、ルイ・サア、そしてリベリーの6人である。本大会出場決定後の親善試合にコンスタントに出場していたアネルカはワールドカップ出場を3回連続で逃したことになる。
 驚きはあったものの、代表経験のない2人については今季所属チームで急成長、彼らの成長を評価したドメネク監督がチーム作りすることのできる時間は1か月ないのである。(続く)

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