第575回 無敵艦隊スペインと対戦(1) 順調にグループリーグを勝ちあがったスペイン

■第1シードのうち6チームが首位でグループリーグ突破

 スイス、韓国と引き分けたため、フランスはグループGで2位にとどまってしまった。第1シード国のグループリーグでの戦績を振り返ると3連勝したのはドイツ、ブラジル、スペイン、2勝1分がイングランド、アルゼンチン、イタリアの3チームであり、ここまでがグループリーグを首位で突破している。グループリーグを2位で通過したのが1勝2分のフランスと1勝1分1敗のメキシコである。奇しくも本大会直前に唯一の第1シードの親善試合を行ったフランスとメキシコは1位突破ができなかったが、第1シード国のうちフランス、アルゼンチンの2か国がグループリーグで敗退した前回大会に比べればはるかに波乱の少ない大会である。逆に首位突破できなかったことは、フランスの地力が不足していることを意味しているとも言えるであろう。

■決勝トーナメントの相手を選ぶ余裕のなかったフランス

 グループGで勝ちあがった場合、グループHを勝ち抜いてきたチームと決勝トーナメント1回戦で対戦する。グループGで1位の場合は、グループHの2位チームが相手で、グループリーグ最終戦から中2日おいてハノーバーで試合が行われる。片やグループGで2位となった場合はグループHの1位チームと中3日おいてハノーバーで試合が行われる。すなわち、1位になった場合は2位チームと戦うことができ、短い試合間隔で戦わなくてはならないが、フランスについてはグループリーグ最終戦と同じケルンで試合を行うことができる。一方、2位になった場合はグループHの首位チームと戦い、試合間隔が1日多くなるが、ハノーバーに移動しなくてはならない。本連載第507回ではフランスは8年前のワールドカップでの経験から、決勝トーナメント1回戦はたとえ相手がスペインとなろうとも、グループリーグ最終戦と同じケルンで戦うことを選択するであろうと述べたが、実際には相手を選ぶ余裕などなく、結果的にはスペインとハノーバーに移動して戦うことになってしまった。

■主力を休ませた第3戦も勝利したスペイン

 フランスと対戦するスペインであるが、無敵艦隊という愛称とは裏腹に、ワールドカップ本大会では常に期待を裏切ってきた。1998年大会はグループリーグで敗退、2002年大会も決勝トーナメントで韓国に敗れている。ところが、今大会は初戦で最大のライバルと目されるウクライナに4-0と大勝してスタート、第2戦もチュニジアに3-1と勝利して、決勝トーナメント進出を決める。
  第3戦は第1戦、第2戦に出場したメンバーを休ませ、先発メンバー全員を入れ替えるという余裕。それでもアジア予選を無敗で勝ち上がったサウジアラビアを1-0で下した。本連載の読者の皆様ならば、1998年ワールドカップのフランスの戦いぶりを思い起こされるであろう。同じ3連勝組のドイツ、ブラジルという前回の決勝進出チームは第3戦も主力を出場させており、スペインのグループリーグでの好調さは本物である。

■中3日でスペインに立ち向かうフランス

 第1シードらしい戦いぶりを見せてきたスペインと第1シードらしくない試合内容のフランスという好対照なチームの対戦となったが、フランスにも好材料がないわけではない。まず、試合間隔が中3日あるということである。フランスの高年齢化は深刻でスイス戦、韓国戦では完全にその欠点を露呈してしまった。トーゴ戦では攻撃陣に若手を起用したが、それでもかなり高い平均年齢のチームである。試合間隔が中2日と中3日では疲労からの回復度が大きく異なるであろう。さらに相手のスペインは決勝トーナメントでベストメンバーを復帰させるであろう。スペインの主力メンバーは6月19日のチュニジア戦以来、実に中7日という十分な休養を取っていることに加え、若いメンバーも多い。十分にフランスの弱みはわかっており、運動量でフランスを圧倒しようとしているであろう。そのような相手に対し、少しでも休養が多いこと、そして少しでも若手メンバーが多いことが勝利の可能性を広げる。そしてスイス戦、韓国戦で精彩を欠いたジネディーヌ・ジダンは、幸か不幸か第3戦が出場停止のため、休養十分である。
 このように劣勢を予想されるフランスであるが、ハノーバーで無敵艦隊を迎え撃つのである。(続く)

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