第574回 決勝トーナメントかけたトーゴ戦(3) 主将パトリック・ビエイラ、フランスを救う

■フランス戦の勝利を狙うトーゴ

 グループリーグの最終戦を迎える段階で決勝トーナメント進出を決めたチームがなかったのはグループEとグループGだけである。スイス、韓国、フランスの3チームに決勝トーナメント進出の可能性のあるグループGの最終戦は23日21時から2試合同時にキックオフされた。
 最終戦に勝たなくてはならないフランスの相手はトーゴである。トーゴはフランスを旧宗主国とし、フランスリーグに所属している選手が多いことから大会前は4年前のセネガルの再来かと恐れられていたが、韓国に逆転負け、スイスにも敗れており、すでにグループリーグ敗退が決まっている。トーゴは今年はじめに行われたアフリカ選手権でもグループリーグでコンゴ民主共和国、カメルーン、アンゴラに対して3連敗しており、2大国際大会で連続して3連敗は避けたいところである。特にエースのエマニュエル・アデバイヨルは今年の1月までモナコで活躍し、現在はイングランドのアーセナルに所属しているが、チームメイトのティエリー・アンリに激しいライバル心を燃やしている。そして23人のトーゴの選手のうち、フランスのクラブに所属している選手は9人で1部のチームに所属している選手はわずか2人、したがって多くのフランス人が見ている前で活躍し、上位のクラブへの移籍を夢見ている選手が多いはずであり、ワールドカップ初勝利を狙っている。

■若い攻撃陣が得点機を逃し、前半は無得点

 フランスは1点差の勝利の場合はスイス-韓国戦の結果によっては3位にとどまる可能性もあり、2点差以上の勝利が欲しいところである。フランスのメンバーは前回の本連載のとおりであるが、は伝統の4-4-2システムに戻してアンリとダビッド・トレゼゲの2トップ、攻撃陣に若手を起用する。試合は立ち上がりからフランスが支配する。試合開始早々にアンリからトレゼゲへパスが通るが、トレゼゲが得点機を逃してしまう。また、若さが裏目に出て、フランク・リベリーが決定的なチャンスをつぶすなどしてなかなか得点をあげることができない。勝利しない限り決勝トーナメントのないフランスであるが、前半は無得点に終わってしまう。

■主将パトリック・ビエイラが1ゴール1アシスト

 後半も開始早々にリベリーからのFKにトレゼゲがあわせるが、トーゴの主将ジャン・ポール・アバロがCKに逃げる。フランスに待望の得点が生まれたのは55分のことであった。リベリーがドリブルでペナルティエリアに入り込み、中央に折り返す。そこにブルーのユニフォームの選手が1人走りこんできた。守備的MFの主将パトリック・ビエイラである。リベリーのパスを受けたビエイラは一度反転して右足で見事なミドルシュート、先制点を決めたのである。
 そして61分、またもビエイラの活躍である。前方に攻めあがっていたビエイラに対し右からのクロスが入り、ビエイラはアバロと空中戦。主将同士の空中戦はビエイラが勝ち、ボールはビエイラの頭からアンリの足元へ、アーセナルのストライカーは僚友アデバイヨルの前でゴール右隅へ見事なシュートを決めて追加点となる。
 2点差以上の勝利でスイス-韓国戦の結果に関係なく決勝トーナメントに進出するという条件をこれで満たした。ほぼ同時刻にスイスも韓国に対して追加点、フランスが1点差勝ち、スイスと韓国が引き分けの場合はフランスの順位は1位から3位まで可能性があったが、残り時間を考えると極めてその可能性は少ない。これでほぼスイスの1位、フランスの2位が確定する。

■マン・オブ・ザ・マッチはビエイラ

 1得点1アシストと活躍し、この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたビエイラであるが78分には相手選手との空中戦の接触プレーにより、負傷退場、ピッチを後にするが、主将としてジネディーヌ・ジダンの代役以上の結果を残した。終盤はトーゴも反撃するがゴールを割ることはできず、フランスは1998年大会の決勝戦以来のワールドカップでの勝利を収めるとともに、グループ2位として決勝トーナメント進出を決めたのである。(この項、終わり)

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