第573回 決勝トーナメントかけたトーゴ戦(2) 伝統の4-4-2システムに回帰

■逆転突破の難しいグループリーグ

 前回の本連載では、過去のワールドカップのグループリーグで第3戦を迎える段階で下位の場合、逆転してグループリーグを突破することが難しいことフランスの事例から紹介した。事実、フランスが第3戦を迎える前日に行われたグループEとグループFでは連勝してグループリーグ突破を決めたブラジル以外の7チームすべてに決勝トーナメント進出の可能性があったが、結局決勝トーナメントに進出したのはグループEは第2戦を終えた段階で1位のイタリアと3位のガーナ、グループFではグループ2位の豪州であった。グループFで最終戦を迎える段階で4位であった日本も、決勝トーナメント進出の最初の条件であるブラジルに2点差で勝つことは困難なことではないと思われた。しかしワールドカップという独特の舞台で力が発揮できずにブラジル戦で予想外の敗戦を喫し、第3戦の壁が立ちはだかったのである。

■ティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲの2トップ

 今度はフランス自身がその第3戦の壁に臨むことになる。ジブリル・シセを失ったフランスはワールドカップ本大会に入ってからはティエリー・アンリの1トップという布陣で臨んできたが、2試合連続の引き分けとなった。また、第2戦の韓国戦はフランス代表史上最年長のメンバーをピッチに送り出し、韓国の運動量とスピードに負けてしまった。フランス国内からレイモン・ドメネク監督に対する非難の声も高まってきた。さらにジネディーヌ・ジダンが通算2枚のイエローカードを受け、第3戦は出場停止となる。さらに左サイドバックのエリック・アビダルも出場停止処分を受けている。このような苦しい中でレイモン・ドメネク監督はまたもやシステムの変更を決断し、伝統の4-4-2システムを採用する。
 本大会に入ってからのフランスの問題点は得点力不足と高齢化である。所属チームのアーセナルで活躍しているティエリー・アンリであるが、代表チームではさっぱりの出来である。そのアンリに刺激を与える意味もあり、FWは2トップ、アンリとダビッド・トレゼゲのコンビを組む。アンリとトレゼゲが先発でコンビを組むのは昨年11月のドイツとの親善試合以来のことである。また、シセが負傷した6月7日の中国戦ではシセに代わりトレゼゲが出場し、アンリ-トレゼゲのコンビで得点を挙げている。

■若返った陣容の攻撃陣、苦悩の末のサニョルの起用

 MFは4人、左サイドのシルバン・ビルトールを外すことを決断、守備的な位置にパトリック・ビエイラとクロード・マケレレ、攻撃的な位置にフランク・リベリーとフローラン・マルーダを配置する。スイス戦で先発したリベリーはこれが先発2試合目である。攻撃的なポジションの選手の年齢について言及するならば、リベリーは23歳、マルーダは26歳、アンリは28歳、トレゼゲも28歳と、軒並み20代となった。高齢化は攻撃陣については改善されている。
 そして守備陣であるが、左サイドにアビダルの代わりにはミカエル・シルベストルを起用する。中央にはリリアン・テュラムとウィリアム・ギャラスを配する。右サイドはビリー・サニョルを指名する。サニョルはすでに警告を受けているため、このトーゴ戦で警告を受けると、決勝トーナメントに勝ち上がった場合、出場停止となってしまう。したがって、通常ならばサニョルを先発させず、バックアップのメンバーを起用したいところであるが、右サイドバックのバックアップは今回驚きの代表入りをしたばかりのパスカル・シンボンダである。おそらく勝てるであろうという相手であっても、シンボンダを起用するには勇気がいる。そのため苦悩の末のサニョルの起用となった。
 最後にGKであるが、数々の批判を受けながら、これまで2試合で1失点のファビアン・バルテスを起用する。

■主将はビエイラ、不吉な実績

 そしてジダンを欠くフランスのキャプテンの重責はビエイラが担うことになる。2004年の欧州選手権後にジダンがいったん引退してから2005年夏にジダンが復帰するまでの苦しい期間、主将を務めていた。ビエイラが主将の試合の戦績は2勝5分と負け無しであるが、勝ったのはキプロスとフェロー諸島という弱小国相手の試合だけであり、スウェーデン、イスラエル、ポーランド、スイスといったある程度の力を持つチームとの試合は引き分けに終わっている。引き分けでは決勝トーナメントに届かない。不安いっぱいの中でのキックオフとなる。(続く)

このページのTOPへ