第886回 2010年ワールドカップ予選開幕(2) 22人全員が欧州カップ組のフランス

■フランス代表メンバー発表と同日に行われたチャンピオンズリーグ組み分け抽選

 前回の本連載では9月6日に開幕するワールドカップ予選で、アウエーのオーストリア戦とホームのセルビア戦に向けてレイモン・ドメネク監督が選出したフランス代表22人のメンバーを紹介した。このメンバーの発表は8月28日にパリのフランスサッカー協会で行われたが、同日にモナコではチャンピオンズリーグのグループリーグの組み分けが発表されており、南北での発表にフランスのサッカーファンは注目した。驚くべきことにフランス代表の22人中17人がチャンピオンズリーグの本戦に出場する。

■22人中17人がチャンピオンズリーグ、残る5人はUEFAカップに出場

 フランス国内からチャンピオンズリーグの出場するチームはリヨン、ボルドー、マルセイユの3チームであるが、そのいずれにも代表選手がいる。また、これ以外のフランス国内のクラブでフランス代表を輩出したのはレンヌだけであるが、このレンヌからはファンニ、ブリアンというフランス代表歴がない選手がリストに入っている。
 一方、国外のチームに関してはアーセナル、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド(以上イングランド)、バルセロナ(スペイン)、ASローマ(イタリア)がチャンピオンズリーグに出場し、ポーツマス(イングランド)、セビリア(スペイン)、ACミラン(イタリア)はチャンピオンズリーグには出場できないが、レンヌ、ポーツマス、セビリア、ACミランはいずれもUEFAカップ本戦に出場する。すなわち22人全員が欧州カップに出場するという豪華メンバーである。

■半数しか欧州カップに出場しないオーストリア代表

 一方、開幕戦で対戦するオーストリア代表について目を転じてみよう。オーストリア代表は19人を選出したが、欧州カップに出場するのはベルダー・ブレーメン(ドイツ)に所属するセバスチャン・プレドルとマーチン・ハルニク、そしてパナシナイコス(ギリシャ)のアンドレアス・イバンシッツ、ユベントス(イタリア)のアレクサンダー・マニンガーという4人だけである。さらにUEFAカップについても本戦に残っているチームに所属しているのはザルツブルク(オーストリア)のロナルド・ジャーカル、レネ・アウフハウザー、クリストフ・ライトゲブ、マルク・ジャンコとブラガ(ポルトガル)のローランド・リンツであり、登録19人中欧州カップに出場するのは10人だけであり、オーストリアとフランスの実力差は所属クラブを見ても一目瞭然であり、それが第5シードという代表チームのシード順位にも表れているのである。

■ワールドカップ予選の初戦で過去20年間勝利のないフランス

 しかし、第5シードのオーストリアが相手とはいえ、フランス代表にとってワールドカップの予選の初戦はそれほどいい成績ではなく要注意である。まず、2006年ドイツ大会予選は2004年9月に開幕したが、フランスはホームでイスラエル相手にスコアレスドローで発進している。そして2002年韓国・日本大会は前回優勝で予選免除、1998年フランス大会は開催国で予選免除であり、1994年米国大会予選は1992年9月にブルガリアとアウエーで戦い、0-2と敗れている。結果的にはこのアウエーのブルガリア戦の敗戦が最後の最後で米国行きを逃す伏線となっている。実はフランスはワールドカップ予選の初戦では1988年のイタリア大会予選のノルウェー戦(パリで対戦し、1-0とフランスが辛勝)以来勝利していないのである。 
 このように初戦、特にアウエーの試合で思わぬ取りこぼしをしてしまうのはシーズンが始まったばかりであり、各選手にエンジン全開という状況でこの開幕戦を迎えていないことが理由のうちの1つとして考えられるであろう。
 もちろん8月15日にはスウェーデンと親善試合を行っているが、真剣勝負の国際試合はこの時期にはチャンピオンズリーグやUEFAカップの予備戦くらいしかない。フランス代表の選手は17人がチャンピオンズリーグ、残る5人がUEFAカップに出場すると上述したが、予備選を戦わずに本戦から直接参戦するビッグクラブに所属している選手が多い。したがって、これまでに欧州カップの予備選やインタートトを戦ってきたチームはマルセイユ、レンヌ、アーセナル、ポーツマス、バルセロナ、ACミランだけであり、これらのチームに所属する選手はわずか10人だけである。一方のオーストリアはほとんどの選手がチャンピオンズリーグあるいはUEFAカップの予備戦を戦い、真剣勝負の国際試合を経験しており、この時期に対戦するフランスにとっては油断できない相手なのである。(続く)

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