第887回 2010年ワールドカップ予選開幕(3) 初戦はオーストリアに34年ぶりの敗戦

■欧州選手権決勝の舞台、エルンスト・ハッペル競技場

 2年後の南アフリカでのワールドカップを目指すフランス代表の初戦はウィーンでのオーストリア戦である。戦いの舞台はウィーンのエルンスト・ハッペル競技場である。このエルンスト・ハッペル競技場は今回の欧州選手権のオーストリアでのメイン競技場であり、決勝戦の舞台であった。フランスもグループリーグで2位に入るか、準決勝に進出していれば、この欧州有数のスタジアムで試合をしていたはずであった。
 このエルンスト・ハッペルというのはオーストリアの歴史に残る智将の名である。1925年生まれのハッペルは自らが選手として活躍したラピッド・ウィーンの監督を皮切りに国内外のクラブ、代表チームで監督を歴任してきた。1970年にはオランダのフェイエノールトを率いてチャンピオンズカップ獲得、1978年にはオランダ代表を率いてワールドカップ準優勝、そして1983年にはドイツのハンブルガーSVを率いてチャンピオンズカップで2度目の優勝を果たしている。このハッペルは1992年に死去し、それまでプラター競技場と呼ばれていたオーストリア最大の競技場はエルンスト・ハッペル競技場と改名されたのである。またハッペルは選手生活で唯一の国外での経験がラシン・パリでの2年間であり、フランスとも縁のある人物である。

■低迷する中央の古豪オーストリア

 そのオーストリアは中欧の古豪と呼ばれ、フランスはオーストリアと1925年の初対戦以来これまでに21回対戦し、11勝2分8敗とフランスが勝ち越している。フランスは初対戦から6連敗し、フランスの初勝利は第二次世界大戦後の1946年のことであった。それ以降はフランスが一方的に勝ち越しており、オーストリアの最後の勝利は1970年のことである。それ以降はフランスが5勝1分と言う成績である。またオーストリアは今回の欧州選手権は開催国として出場したが、ワールドカップ、欧州選手権の予選を通過したのは1998年のワールドカップフランス大会が最後であり、FIFAランキングも3桁と低迷している。

■ファン期待のメンバーで臨んだフランス

 第5シードのオーストリア相手に勝利は堅いと思われたフランスであるが、思わぬ結果となった。フランスが相手を甘く見てメンバーを落としたわけではない。フランスは22人を代表に招集したが、ベンチ入りするのは18人、体調が万全でないフローラン・マルーダとエリック・アビダル、代表歴のないロッド・ファンニ、ジミー・ブリアンという4人がスタンドから観戦することになった。
 そして先発メンバーであるが、GKは代表3試合目のスティーブ・マンダンダ、DFは右からバカリ・サーニャ、ウィリアム・ギャラス、フィリップ・メクセス、パトリス・エブラ、DFは守備的な位置にラッサナ・ディアラとジェレミー・トゥーララン、攻撃的な位置に右はシドニー・ゴブー、左はサミール・ナスリ、FWはティエリー・アンリとカリム・ベンゼマの2人である。メンバーは若返ったものの、現在所属クラブで高い評価を集めている選手ばかりであり、勢いのあるメンバーである。

■フィリップ・メクセス誤算、攻撃陣も守りを崩せず、公式戦では74年ぶりの敗戦

 しかし、その期待のメンバーの1人が思わぬ誤算となった。前半8分、オーストリアのロングFKがフランスゴール前に届き、ターゲットのマルク・ジャンコの背後に落ちたボールをメクセスが自陣ゴールに入れてしまい、オウンゴールで失点する。そして41分もオーストリアがゴール前に放り込んだボールをギャラスがクリアミスし、レネ・アウフハウザーが追加点を上げて、2点のビハインドで前半を折り返す。
 後半に入って62分にフランスはエブラの左サイドからのクロスをゴブーがゴールを決めて1点差、そしてその後もしばしば同点のチャンスを得るが、なかなか同点には追いつけない。逆に81分には相手CKの際にメクセスがオーストリアの選手の胴に手を回して倒してしまい、PKが与えられる。これをアンドレアス・イバンシッツが決めて再び2点差となる。
 フランスは猛攻を仕掛けたが、人数を多くしてゴール前を固めるオーストリア守備陣を崩せず、まさかの敗戦となった。フランスのオーストリア戦敗戦は38年ぶり、そして公式戦では1934年のワールドカップイタリア大会以来のことで実に74年ぶり、欧州選手権のショックからまだ立ち直っていないのであろうか。(続く)

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