第1631回 ウクライナと運命のプレーオフ(6) ローラン・コシエルニーの退場で再燃したストッパー問題

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■中3日では立て直しがきかないプレーオフ

 ホームアンドアウエー方式でアウエーの第1戦を0-2と落としてしまったフランス、前回の本連載で紹介した通り、1998年ワールドカップ予選、2000年欧州選手権予選からグループ2位のチームが欧州域内でのプレーオフに回るようになった(2008年欧州選手権を除く)が、これまで28回のプレーオフで第1戦を2点差で落として逆転したチームはない。一般的にホームアンドアウエー方式では第2戦をホームで戦う方が有利と言われているが、第1戦で勝利したチームはそのままの勢いで第2戦も勝利または引き分けというケースが多く、むしろ先手必勝と言えるであろう。もっとも、チャンピオンズリーグなどのホームアンドアウエー方式が中2週間おいて行われるのに対し、欧州域内のプレーオフは中3日で行われ、精神的な切り替えができないばかりではなく、戦術的にも練り直すことができないために、このような結果になるのであろう。

■ストッパー1人が退場で第2戦には出場停止となる両チーム

 また、2点差で負けたというだけではない。第1戦の終盤、フランスはストッパーのローラン・コシエルニーが退場処分を受け、出場停止処分で第2戦に出場できなくなった。ウクライナも同様にストッパーのオレクサンデル・クチェルが2枚のイエローカードを受け、退場となり、第2戦には出場できない。

■ストッパー問題を解決したエリック・アビダルとローラン・コシエルニーのコンビ

 両チームともストッパー1人を失うという状態はイーブンであるように見えるが、フランスにとってこのストッパーというポジションは人材難に悩むポジションである。かつてはマルセル・デサイー、ローラン・ブランなどがいたが、前回のワールドカップ予選ではウィリアム・ギャラス以外のもう1人のストッパーが固定せず、苦戦の元となった。
 第1戦ではエリック・アビダルとコシエルニーがコンビを組んでいる。アビダルは本職はサイドDFであるが、33歳のベテランで肝臓の移植手術から立ち直り、今季7年ぶりのフランスリーグに復帰、モナコの快進撃を支えている。一方のコシエルニーはイングランドのアーセナルに所属する28歳の選手であるが、代表ではなかなか試合に出場する機会に恵まれなかった。この2人がコンビを組んだのは今年8月14日にベルギーとの親善試合が最初であり、それ以降10月の豪州との親善試合を除く4試合に出場している。この2人がストッパーを組んだ試合は、最初のベルギー戦はスコアレスドロー、9月に入ってグルジア戦もスコアレスドロー、ベラルーシ戦は2点を許したものの、4-2と勝利、10月の豪州戦はラファエル・バランとアビダルがコンビを組み、フィンランド戦では再びアビダルとコシエルニーのコンビで完封している。この夏以降の2人のストッパーがコンビを組んだ試合の戦績は2勝2分、失点は2、この数字を見ているとここ数年の課題であったストッパー問題は解決したかに見えた。

■不安の残る代わりのストッパー陣

 ところがコシエルニーの退場によって第2戦はコシエルニー以外の選手がストッパーとして出場しなくてはならなくなる残りの登録メンバーでストッパーはママドゥ・サコーかバランの2人である。サコーは南米遠征のブラジル戦に出場したが、散々な出来で、これがベルギー戦以降の新コンビになっている。バランは本連載でもしばしば取り上げている20歳のタレントであるが、代表には3月にデビューしたが、その後負傷などもあり、豪州戦が3試合目の出場というキャリアの浅さが気になる。また、南米遠征で試合に出場したアディル・ラミは代表で26試合出場とストッパーとしては最多出場を誇るが、南米遠征のブラジル戦が最後の出場で、8月以降はベンチメンバー、そして10月以降は代表メンバーから外れている。そしてバランと並ぶ若手のホープ、22歳のエリキアム・マンガラは南米遠征のウルグアイ戦で代表にデビューしたが、それ以降は出場機会はなく、今回もメンバーに入っていないのである。
 ストッパーに問題を抱える中でフランスは第2戦を戦うことになったのである。(続く)

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