第1632回 ウクライナと運命のプレーオフ(7) ママドゥ・サコー、カリム・ベンゼマのゴールで追いつく

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■試合当日でも売れ残ったチケット、負け知らずのウクライナ

 アウエーで2点差の敗戦、ローラン・コシエルニーの退場による出場停止という条件の重なる中で中3日のパリ郊外サンドニのスタッド・ド・フランスで行われるプレーオフ第2戦。本来ならば関心も高まるところであるが、第1戦でのふがいない戦いぶり、そして前回の本連載で紹介した通り、過去のデータから逆転は難しいとパリジャンは考えたのか、チケットの販売の出足は悪い。試合当日になってもチケットは5000枚も売れ残るというありさまである。
 ウクライナは今年に入って負け知らず、そしてGKのアンドリー・ピアトフは730分間無失点という堅守を誇っている。今年最後の試合も最低でも引き分けでワールドカップ出場を決めたいところである。先発メンバーは第1戦で退場となって出場停止のオレクサンデル・クチェルを含む3人だけが第1戦と入れ替わっている。

■4-3-3システムを採用したディディエ・デシャン監督

 迎え撃つ背水のフランス、最低でも3得点が必要なディディエ・デシャン監督は思い切った陣容でこの1戦に臨む。これまでの4-2-3-1システムではなく4-3-3システムで大量点を狙う。GKはウーゴ・ロリス、DFは右からマチュー・ドビュッシー、ラファエル・バラン、ママドゥ・サコー、パトリス・エブラ、MFは右からポール・ポグバ、ヨアン・カバイエ、ブレーズ・マツイディ、FWは右からマチュー・バルブエナ、カリム・ベンゼマ、フランク・リベリーと並ぶ。
 第1戦と比べてシステムを変えただけではなく5人の選手を入れ替えた。前回の本連載で取り上げたストッパーであるが、出場停止のコシエルニーに加え、ベテランのエリック・アビダルも先発メンバーから外し、バランとサコーを起用した。バランは代表での試合はこれが4試合目で10月11日の豪州戦以来の出場、サコーは16試合目であるが、代表での試合は6月の南米遠征のブラジル戦以来の出場となる。そしてこの2人のコンビは3月22日のグルジア戦、すなわちバランの代表デビュー戦で1回だけコンビを組んだことがある。

■5か月ぶり出場のママドゥ・サコー、代表初ゴール

 さて、試合はフランスが出色の出来を見せる。守備的なウクライナに対しボールを支配するだけではなく、積極的にゴールを狙う。この攻撃の起点となったのは右サイドに入ったバルブエナである。バルブエナを起点とするセットプレーだけではなく、左サイドからは高速ドリブルのリベリーがチャンスを作る。そしてこの2人が次々とチャンスを創り出すことができたのは中盤のカバイエ、ポグバといった選手の献身的な動きと抜群のボール支配力である。フランスは分にバルブエナのCKをポグバがヘディングで合わせる。完璧なタイミングであったがシュートはゴールバーの上をわずかに越える。22分にフランスは待望の先取点、右サイドからのバルブエナからのFK、ウクライナのクリアボールをリベリーが強烈なミドルシュート。ここまで750分以上無失点を続けていたウクライナのGKピアトフが思わずはじく、そこに走り込んだのは背番号5のサコー、最後尾の選手がゴール前に詰めてこぼれ球を押し込んで先制する。代表初ゴールを決めたサコーはベンチに走り、デシャン監督と抱き合って得点を喜ぶ。

■2回目のオフサイドは得点が認められたカリム・ベンゼマ

 ウクライナの動きは悪くはなかったがフランスの動きがよく、追加点は時間の問題であった。30分にはリベリーのクロスをベンゼマがシュートし、ゴールネットを許すが、オフサイドの判定でノーゴール。そしてその直後の34分、カバイエのシュートのこぼれ球をゴール前でバルブエナが胸で落とし、ベンゼマがゴールに押し込む。ベンゼマはオフサイドポジションにいたが、今度はオフサイドの判定はなく、フランスは2-0とリードする。
 前半34分という早い時間にフランスは2点目をあげ、2試合通算得点でウクライナと並び、残り56分で3点目をあげることができるかどうかの勝負となったのである。(続く)

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