第1633回 ウクライナと運命のプレーオフ(8) フランス大逆転、主要大会10回連続出場

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■2点差を追いついたフランス

 劣勢が予想されたプレーオフの第2戦、4日前のキエフでの試合と5人を入れ替えたフランス代表は非常にいい内容でウクライナ戦の前半を制する。22分に5か月ぶりに代表戦に出場したママドゥ・サコーが先制点、34分には2試合ぶりに先発したカリム・ベンゼマが追加点をあげ、今回入れ替えたメンバーの2得点によってフランスは2試合通算成績でウクライナに追いついた。
 残りの56分間でフランスが得点をあげるのか、ウクライナが得点をあげるのか、ワールドカップ出場の行方はこの1時間弱の戦いに委ねられることになる。

■スタンドのボルテージは最高潮

 前回の本連載で紹介した通り、試合当日になってもチケットは売れ残っていたが、ほぼ満員の77,098人の観衆が集まった。その中には女子のフランス代表、そしてサッカー選手を含む高所得者に対する課税でストを起こされたフランソワ・オランド大統領の姿も見える。
 この2得点でスタッド・ド・フランスのボルテージも上がり、スタンドからはラ・マルセイエーズの大合唱が沸き起こる。フランスはヨアン・カバイエを中心とするMF陣がよくボールを保持し、右のマチュー・バルブエナ、左のフランク・リベリーにボールをつなぐ。前半にあと1点が入ってもおかしくない展開であったが、ロスタイムにサコーとエフゲニー・カチェリディというストッパー同士が衝突し、両者に警告が与えられて前半が終了する。

■1人少なくなったウクライナ

 満場のファンからの拍手でハーフタイムを迎えたフランス、数少ないファンの歓声がかき消された形のウクライナ、対照的な両チームであるが、メンバー交代なく、後半がキックオフされる。後半もフランスは立ち上がりから攻勢をかける。フランスは左サイドのリベリーのドリブルが攻撃の決め手である。47分、リベリーのスピードあるドリブルについていけず、ウクライナのDFがボールを離したリベリーにタックル、このプレーがイエローカードとなる。警告を受けたのはストッパーのカチェリディ、前半の最後から通算し、わずか2分間に2度の警告である。魔の時間帯となり、2枚目のイエローカードで退場となり、ウクライナは10人で残り時間を戦わなくてはならなくなった。ここから試合は一方的な展開となり、フランスは面白いようにボールを支配し、次々とシュートを放つ。58分には決定的なチャンスを迎えたが、ベンゼマがバーの上にはずしてしまう。
 数的不利となったウクライナであるが、1点取れば、フランスは2得点が必要となることから守りを固め、個人技に活路を託す。右サイドのアンドリー・ヤルモレンコのドリブルから前線へのパスにかける。フランスはヤルモレンコを止めようとパトリス・エブラ、マチュー・ドビュッシーと両サイドのDFが立て続けにイエローカードを受けるタックル。これでフランスはDF4人のうちラファエル・バラン以外の3人がイエローカードを受けた。

■ママドゥ・サコーのゴールでフランスが大逆転

 そして72分、ついにフランスに歓喜のゴールが生まれる。カバイエからのCKからこぼれ出たところをエブラが強烈なシュート、ゴール前の混戦となったが、最後はウクライナのオレグ・グゼフに競り勝ったサコーが決勝ゴールをあげる。喜ぶサコーはユニフォームを脱ごうとするが、自らがすでに警告を受けていることを思い出したのかシャツにかけていた手を離す。
 試合時間は残り18分、このままのスコアで進めばフランスがワールドカップ出場決定、ウクライナが1点でもあげればフランスはまた得点をあげなくてはならない。11人のフランスは10人のウクライナに対し、優位に試合を進めるが、予断は許さない。ロスタイムは3分、このロスタイム中にフランスはFKを得るが、20年前のブルガリア戦とは異なり、ボールキープ。フランスは危なげなく大逆転、ワールドカップ、欧州選手権に通算10回連続出場を果たしたのである。(この項、終わり)

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