第2346回 親善試合3戦無敗で本大会へ(5) 最終戦は米国相手にまさかのドロー

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■久しぶりの予選落ちとなった常連国の米国

 サンドニのスタッド・ド・フランスでアイルランド、ニースのアリアンツリビエラでイタリアと欧州予選で出場権を獲得できなかった強豪相手に連勝したフランス、仕上げとなる第3戦も新しいスタジアムで本大会出場を逃した常連国と対戦する。
 6月9日の試合の舞台はリヨンのグルーパマ競技場、ヨーロッパリーグの決勝の舞台にもなった欧州有数の新スタジアムである。そして対戦相手は米国である。1990年大会から7大会連続で本大会に出場していたが、今大会は北中米カリブ海予選の最終予選で勝ち点が1及ばず5位にとどまった。4位チームがアジア予選の5位と戦う大陸間プレーオフにも出場できず、久しぶりの予選落ちとなった。

■最終戦はベストメンバーで大勝を狙うフランス

 ワールドカップ常連国とはいえ、アイルランド、イタリアに比べれば一段力が劣ることは否めない。米国相手に快勝して、気分を最高にしてロシア入りしたいところである。前回もスタッド・ド・フランスでノルウェー、ニースでパラグアイと対戦し、最後はリールでジャマイカ相手に8-0と大勝してブラジル入りしている。
 この米国戦のメンバーがディディエ・デシャン監督の選んだベストイレブンであろう。 GKはウーゴ・ロリス、DFは右からジブリル・シディベ、ラファエル・バラン、サミュエル・ウムティティ、バンジャマン・マンディ、MFは中央の低い位置にエンゴロ・カンテ、右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、FWは中央の低い位置にアントワン・グリエズマン、右にキリアン・ムバッペ、左にオリビエ・ジルーという布陣となった。
 ストッパーにはレアル・マドリッド(スペイン)の一員としてチャンピオンズリーグの決勝を戦ってチームに遅れて合流したバランがようやく試合に出場する。代表出場試合数が10試合以下という選手は左サイドDFのマンディだけ、またマンディとGKのロリス以外は全員代表での得点があるというキャリアを積んだ選手がやはり選ばれた。 そのマンディはアイルランド戦で1年ぶりに代表の試合に出場したが、このスパーリングマッチ3試合すべてに出場している。酒井宏樹にポジションを奪われる形でマルセイユからモナコに移籍したが、酒井も出場するワールドカップへの道は整った。

■米国で最も注目を集めたティモシー・ウェア

 対する米国は大幅に選手を入れ替え、若いチームとなった。半数以上は欧州で活躍する選手であるが、最も注目を集めたのはパリサンジェルマンのティモシー・ウェアである。リベリアの怪人と言われ、モナコとパリサンジェルマンで全盛期を迎えたジョージ・ウェアの息子である。現在は大統領となっているジョージ・ウェアが引退後に住んだニューヨークで生まれたため、米国代表の資格があり、今年の3月のパラグアイ戦で米国代表としてデビュー、2000年代に生まれた最初の米国代表選手となった。そして5月28日のボリビア戦では代表初先発で初ゴールをあげたばかりである。フランスのファンも期待したが、この日はベンチスタートとなる。

■守備の乱れで失点、ポストに2度嫌われ、ドローに終わる

 米国はLGBTの支援を訴え、この日の背番号は虹色の7色を使用した。フランスは攻めに攻めた。しかし、虹色の背番号に幻惑されたのか、前半5分にはポグバ、38分にはグリエズマンのシュートがいずれもポストに嫌われてしまう。そして前半終了間際の44分、絶対の信頼を置くアンカーのカンテが代表3試合目のシャケル・ムーアに競り負ける。ムーアは右サイドにボールを持ち込み、マンディをかわしてクロスをあげる。これをゴール前でシディベがクリアミス、シディベがマークしていたジュリアン・グリーンがゴール右隅に蹴りこんで先制する。
 フランスは78分にムバッペが同点ゴールを決め、ムバッペはゴールの中まで自らがネットを揺らしたボールを拾いに行き、逆転を狙ったが、その後はノーゴールで引き分けに終わった。またジルーも米国選手と激突し、頭を縫う深刻な負傷で58分に途中退場した。
 リヨンのグルーパマ競技場はマルセイユがヨーロッパリーグの決勝で負けた時以来のどんよりとした空気で覆われたのである。(この項、終わり)

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