第2362回 ベルギーに勝利、決勝進出(4) サミュエル・ウムティティの一撃でベルギーを下す

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■青いユニフォームのフランス、メンバーはほぼ固定

 選手だけではなく首脳陣も手の内を知った同士の対戦となったフランス-ベルギー戦、両チームの先発メンバーを紹介しよう。青のユニフォームのフランス、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバンジャマン・パバール、ラファエル・バラン、サミュエル・ウムティティ、ルカ・エルナンデ、MFは低い位置の右にポール・ポグバ、左にエンゴロ・カンテ、3人の攻撃的なMFは右にキリアン・ムバッペ、中央のトップ下にアントワン・グリエズマン、左にブレーズ・マツイディ、FWは1トップにオリビエ・ジルーという布陣、ウルグアイ戦は出場停止となったマツイディがコランタン・トリッソに代わって入った。1トップは今大会に入っていまだ得点のないジルーを疑問視する声もあったが、ポストプレー、高い位置での守備を評価し、連続して先発する。

■トマ・ムニエのいない赤いユニフォームのベルギー

 一方、赤いユニフォームのベルギー、こちらも4-2-3-1システムである。GKはチボー・クルトワ、DFは右からナセル・シャドリ、トビー・アルデルバイレルト、バンサン・コンパニー、ヤン・ベルトンゲン、MFの低い位置には右にアクセル・ビッツエル、左にムーサ・ダンベレ、攻撃的な位置には右からケビン・デブライネ、マルーアン・フェライニ、エデン・アザール、そしてトップにはロメル・ルカクというメンバーである。実に先発11人中9人がイングランドのプレミアリーグに所属する選手である。またパリサンジェルマンに所属しているトマ・ムニエは累積警告で出場停止、準々決勝のウルグアイのエディンソン・カバーニに続き、対戦相手のパリサンジェルマン勢が出場しない試合となった。

■試合を支配し続けたベルギー

 試合はブラジル戦では守勢であったベルギーが、主導権を握る展開となった。それまでは3バックであったベルギーがムニエの出場停止もあり、攻撃的なシャドリを入れて4バックにしたベルギーのシステム変更にフランスは対応できず、パスをつながれ、陣地的にも押し込まれる展開となる。フランスが守勢に回ったのは今大会6試合目で初めてのことである。
 フランスはベルギーの攻撃を主将のロリスとその前の2人のストッパーのバランとウムティティが堅実な守備を見せ、カウンターに望みをつなぐ。しかし、ムバッペのスピードもグリエズマンの技術もベルギーの厚い守備陣を切り裂くことはできず、前半はアディショナルタイムにフランスの守備の乱れからベルギーは決定的なチャンスをつかんだが、ルカクが反応しきれず、シュートには至らず、両チーム無得点で折り返すことになる。
 両チームともハイレベルな戦いを続ける中で、当然延長戦まで考慮した選手交代を考えなくてはならず、ハーフタイムには選手交代はない。

■ニアで合わせたサミュエル・ウムティティが決勝のヘディングシュート

 後半は立ち上がりから立て続けにベルギーのシュートがフランスのゴールを襲う。ベルギーの攻勢をしのぎ、試合を動かしたのは意外な選手であった。50分、フランスはエルナンデスが前方にフィード、このボールをジルーがおさめる。得点こそないが献身的な動きで前線でボールをキープし、最後は相手に当てて、CKを獲得する。キッカーはもちろんグリエズマン、後半最初のCKはニアに合わせる。ベルギーの守備陣も前線に上がってきたバランとウムティティをマークしていたが、まさかニアに走りこむとは思っていなかったのであろう。マークが一瞬ずれた。ニアに走りこんできたウムティティがヘディングでシュート、名手クルトワも虚を突かれ、ネットが揺れた。2016年の欧州選手権の本大会でアディル・ラミが負傷して代表デビューし、今大会もローラン・コシエルニーの負傷離脱によってレギュラーを獲得したウムティティがゴールを奪った。
 この1点をフランスは守りきる。長身選手の多いベルギーの試合終盤のパワープレーに備えてジルーに代えてチーム最長身のスティーブン・エンゾンジを投入するというディディエ・デシャン監督の采配もさえる。終盤は無理に攻めず、ブロックを敷いてベルギーの攻撃をしのぎ切り、フランスは1998年、2006年に続き、3回目の決勝進出を決めたのである。(この項、終わり)

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