第2365回 フランス、輝く2回目の優勝(3) 黄金世代の攻撃サッカーのクロアチア、決定力のフランス

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ワールドカップでは2回目の決勝トーナメント進出となるクロアチア

 フランスの相手は初の決勝進出を果たしたクロアチア、ユーゴスラビアの解体により、1991年に誕生した国であるが、サッカーの代表が国際大会にチャレンジしたのは1996年の欧州選手権が最初であり、予選では第3シードながらイタリア、ウクライナをおさえて首位突破する。本大会でも決勝トーナメントに進出した。そして1998年のワールドカップでは欧州予選は今回同様プレーオフを経て、本大会に出場、準決勝に進出した。準決勝ではフランスに敗れたが、創成期を除いて初出場でこれだけの成績を残したチームはない。
 もともと東欧のブラジルと言われたユーゴスラビアの数多くのタレントをそろえた国であったが、その後はワールドカップではグループリーグ敗退が続く。意外なことにワールドカップでは今大会が2回目の決勝トーナメント進出である。

■最後の対戦は7年前、8人が出場していたクロアチア

 フランスとクロアチアは1998年ワールドカップの準決勝が初対決であるが、その後4回対戦している。唯一のタイトルマッチが2004年欧州選手権のグループリーグでの対戦であり、この時はフランスがオウンゴールで先制したが、その後2点を入れられて逆転され、ダビッド・トレゼゲの同点ゴールで引き分けに持ち込んでいる。親善試合ではフランスが2勝1分、通算するとフランスの3勝2分、最後の対戦は2011年3月29日にスタッド・ド・フランスで行われた親善試合である。親善試合であり両チームとも6人を交代させたが、この試合に出場していたメンバーで今大会にエントリーしているのはフランスはウーゴ・ロリスとブレーズ・マツイディの2人だけであるが、クロアチアはベドラン・チョルルカ、デヤン・ロブレン、ルカ・モドリッチ、イバン・ペリシッチ、イバン・ストリニッチ、イバン・ラキティッチ、ドマゴイ・ビダ、ニコラ・カリニッチの8人が7年前の試合にも出場している。今大会でもアルゼンチン、日本、スペインと並ぶベテランの黄金世代がそろうチームであり、昨年10月に就任したばかりのズラトコ・ダリッチ監督のマネジメントは特筆されるであろう。

■モナコのリーグ優勝の立役者、ダニエル・スバシッチ

 フランスのファンにとって最も身近なクロアチアの選手はモドリッチでもマリオ・マンジュキッチでもない。決勝トーナメントで2回のPK戦を勝利に導いたGKのダニエル・スバシッチである。2012年の初めにモナコに移籍、モナコのゴールを守り続け、2016-17シーズンはリーグ優勝に貢献し、ベストイレブンに選出されている。代表チームでも2014年以降はレギュラーに定着、記憶に新しいところでは2016年の欧州選手権ではスペイン戦でPKをストップし、決勝トーナメント進出に貢献している。昨年のモナコのリーグ優勝の守りの立役者がスバシッチであるならば、攻撃の立役者はキリアン・ムバッペである。ムバッペは現在はパリサンジェルマンに所属し、3月31日にはリーグカップ決勝でモナコと対戦、本連載第2313回と第2314回で紹介した通り、ムバッペはPKを誘うとともに2アシストの活躍でかつてのチームメイトのいるモナコを破った。

■攻撃力を誇るクロアチア、シュートの精度の高いフランス

 決勝までの数値を見ると、攻撃面のクロアチアの優位性が明らかである。総得点はクロアチア12、フランス10と僅差であるが、1試合当たり平均のパス数はクロアチア549品、フランス462本、ボール支配率はクロアチアが56%、フランスが51%である。またクロスの数もクロアチア19本、フランス10本である。パスをつないでボールを支配し、クロスからも攻撃を仕掛け、シュートするというのがクロアチアのサッカーである。
  ただし決定力となるとフランスが優位である。クロアチアは99本のシュートを放ち、74本のフランスを上回っている。しかしながら、99本のシュートのうち枠内は33本、枠内シュート率は33%である。一方、フランスは74本のシュートのうち枠内は28本、枠内シュート率は38%である。この結果、フランスはシュート7.4本で1得点、クロアチアのシュート8.3本で1得点を上回る高率性を誇っているのである。(続く)

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