第3096回 ワールドカップメンバー発表(3) 開幕前日に離脱したカリム・ベンゼマ

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■相次ぐ選手の入れ替え、開幕前日にカリム・ベンゼマが離脱

 11月9日にメンバー発表、欧州の主要リーグの中断前最後の試合が終わった翌日にクレールフォンテーヌに集合、16日にカタール入りし、22日に第1戦の豪州戦を迎えるというあわただしいスケジュールとなった今回のフランス代表、選手の入替もあわただしくなった。
 今大会の登録選手数は新型コロナウイルスの影響もあり26人に拡大されたが、ディディエ・デシャン監督は当初、26人は不要ということで25人しか発表しなかった。その後、26人目の選手としてマルクス・テュラムを追加招集、クレールフォンテーヌでクリストファー・ヌクンクとプレスネル・キンペンベが負傷で離脱、ランダル・コロムアニとアクセル・ディザジを追加招集し、カタールのドーハに移動して合宿を始めた。
 そして開幕前日の19日、フランスにとっては衝撃的なアクシデントが発生した。攻撃陣の中心となるカリム・ベンゼマが練習を途中で切り上げ、左足太ももの負傷、MRIで検査し、チームドクターのフランク・ルガル氏の診断は全治3週間ということでベンゼマはワールドカップに出場しないことになった。

■レアル・マドリッドでキャリアハイの成績を残したベンゼマ

 ベンゼマは34歳のベテラン選手であるが、フランス代表入りしたのは今から15年前の2007年3月のことである。19歳のベンゼマは2008年の欧州選手権予選で代表にデビュー、同年10月には初ゴールを決めている。当時リヨンに所属していたベンゼマはリーグ戦7連覇の終盤の立役者となり、2009年にはスペインのレアル・マドリッドに移籍している。競争の厳しいレアル・マドリッドで現在までレギュラーの座を守り、2021年には主将に任命されている。そして、2021-22シーズンのリーグ戦では27点をマークし、リーグ優勝、さらにはチャンピオンズリーグでも15得点をあげ、前年に続いて2年連続の得点王となり、チームを優勝に導いた。リーグ戦もチャンピオンズリーグでもこの得点数はリヨン時代を含めても自己最多である。10月にはフランス人選手として5人目となるバロンドールを受賞した。

■恐喝事件による追放から2021年に代表に復帰し、期待に応えたベンゼマ

 このベンゼマの活躍を支えたものに代表復帰がある。ベンゼマは2015年秋に代表のチームメイトのマチュー・バルブエナを恐喝した事件を起こし、逮捕される。当時のフランスのマニュエル・バルス首相の意向もあり、フランスサッカー連盟から無期限代表活動停止となる。その翌年にベンゼマはフランス代表への復帰が可能となったが、チームの和を重視するフランス連盟ならびにデシャン監督はベンゼマの復帰を認めず、デシャン監督とベンゼマの間の確執がしばしば報じられた。デシャン監督は2012年に代表監督に就任したが、チームの成績が思わしくないときにはファンやマスコミから「ベンゼマ待望論」がそのたびに起こった。しかしながら、デシャン監督はベンゼマの復帰を認めず、チームも好調で2018年のロシアでのワールドカップでは優勝を果たすに至り、国内のベンゼマ待望論は沈静化した。
 ところが、2021年5月、新型コロナウイルスの感染拡大によって1年延期となった欧州選手権のメンバーに選出され、背番号19のユニフォームは飛ぶように売れた。欧州選手権では全試合に出場、ポルトガル戦では2得点をあげマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
 欧州選手権では準々決勝でスイスにPK負けしてしまったが、決勝ラウンドからの出場となったUEFAネーションズリーグでは準決勝のベルギー戦、決勝のスペイン戦でいずれもチーム最初の得点をあげ、優勝に貢献した。

■試練の開幕を迎えるベンゼマなきフランス代表

 この代表での活躍が、所属クラブでの活躍にもつながり、先述の通り、生涯で最高ともいえるパフォーマンスを残すことにつながった。今年6月と9月に行われたUEFAネーションズリーグのグループリーグでフランスは3位に終わり、特にワールドカップ本大会でも対戦するデンマークとはホーム、アウエーとも敗れている。しかし、そのデンマークから唯一のゴールを奪ったのがベンゼマである。ベンゼマなきフランス、試練の開幕を迎えるのである。(この項、終わり)

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