第3106回 ポーランドを下してベスト8入り (1) 40年ぶりに国際大会の本大会で対戦

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■オフサイドの新解釈の契機となったキリアン・ムバッペのゴール

 それまでの2戦とメンバーを大幅に変えて臨んだチュニジアとの第3戦、フランスは後半に主力メンバーを投入して反撃を試みたが、後半アディショナルタイムのアントワン・グリエズマンのゴールがオフサイドの新解釈によってVARの結果取り消され、0-1で敗れてしまった。
 このオフサイドの新解釈は、フランスが優勝した昨年のUEFAネーションズリーグの決勝のスペイン戦でのキリアン・ムバッペのゴールが議論を生んで今夏から適用されたものである。フランスのUEFAネーションズリーグの優勝を呼び込んだゴールが、その翌年にワールドカップで逆に適用されるとは皮肉な話である。

■グループDは首位フランス、2位豪州が決勝トーナメント進出

 フランスがワールドカップで欧州以外のチームに敗れたのは2010年大会の南アフリカ大会の南アフリカ戦が最後のことである。また、チュニジアにとっては1978年の初挑戦以来、5回目にして初めての勝利、しかもそれが親善試合以外での初の対戦での快挙となった。
 フランスに勝利をあげたチュニジアであるが、決勝トーナメント進出は同時刻に行われていたもう1つの豪州-デンマーク戦の結果次第である。デンマークは勝利すれば豪州を勝ち点で上回り、決勝トーナメント進出の可能性が高くなる。前半からデンマークが試合を支配したが、得点をあげることができない。押され気味の豪州は後半に入って60分にカウンターからマシュー・レッキーのゴールで1点先制する。決勝トーナメント進出のためには逆転が必要なデンマークであったが、得点を奪うことができず、豪州が1-0で勝利する。  この結果、グループDは2勝1敗の勝ち点6でフランスと豪州が並ぶが、得失点差+3のフランスが首位、-1の豪州が2位となった。歴史的な1勝をあげたチュニジアが勝ち点4で3位、フランスの対抗馬とされたデンマークは勝ち点1に終わり、最下位となった。

■フランスの決勝トーナメント1回戦の相手はポーランド

 一方、グループDの勝ち上がりチームはグループCの勝ち上がりチームと対戦するが、グループCは第1節でアルゼンチンがサウジアラビアに敗れるという波乱のスタートであったが、アルゼンチンはその後、メキシコとポーランドに連勝し、2勝1敗で勝ち点6となり、サウジアラビアは逆にポーランドとメキシコに連敗、1勝2敗の勝ち点3となる。2位争いは、ポーランドとメキシコ、この両チームはともにアルゼンチンに敗れ、サウジアラビアに勝利、直接対決ではスコアレスドローとなって、得失点差の勝負となった。第3節でメキシコは勝利したものの、後半アディショナルタイムに失点、この失点によって得失点差でポーランドが上回り、2位となる。フランスの決勝トーナメント1回戦の相手はポーランドとなったのである。

■ポーランドサッカー最後の輝き、1982年スペイン大会の3位決定戦

 東西冷戦時代のポーランドはソ連、ユーゴスラビアなどとともに東側のサッカーを牽引してきた。その絶頂期が1970年代から1980年代であり、ワールドカップでも卓越した成績を残している。1974年の西ドイツ大会では3位、1978年のアルゼンチン大会では二次リーグ進出、1982年スペイン大会でも3位、1986年メキシコ大会でも決勝トーナメントに進出(ベスト16)したが、東欧の自由化とともにポーランドは国際舞台での存在感を失う。長い低迷期を経験することになり、欧州選手権でも本大会にはなかなか出場することができなかった。
 その最後の輝きとなったのが1982年大会であった。この大会はフランスのファンにとってはセビリアでの西ドイツとの準決勝が強烈な記憶として残っているが、その死闘の日後、アリカンテに舞台を移し、フランスは3位決定戦をポーランドと行った。この試合は控え選手を中心に臨み、フランスはルネ・ジラールが先制点をあげたが、点の取り合いとなり、ポーランドに2-3と敗れ、4位に終わっている。これがフランスとポーランドのワールドカップ、欧州選手権の本大会での唯一の対戦である。当時の3位決定戦はリラックスした雰囲気の中で行われたが、今回はベスト8をかけたノックアウト方式での対戦となり、高い緊張感の中で行われるのである。(続く)

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