第3112回 準々決勝のイングランド戦 (4) オーレリアン・チュアメニのミドルシュートでフランスが先制

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■欧州の五大リーグに選手が分散しているフランス、プレミアリーグに集中するイングランド

 フランスとイングランド、両チームの先発メンバーは5年前の親善試合に出場していた選手の数は少ないが、所属クラブでの試合で頻繁に対戦している。フランスの先発11人の所属クラブであるが、イングランドのクラブ所属が2人(ウーゴ・ロリスとラファエル・バラン)、スペインが4人(ジュール・クンデ、オーレリアン・チュアメニ、アントワン・グリエズマン、ウスマン・デンベレ)、イタリアが3人(テオ・エルナンデス、アドリアン・ラビオ、オリビエ・ジルー)、ドイツが1人(ダヨ・ウパメカノ)、フランスが1人(キリアン・ムバッペ)、一方のイングランドはドイツのボルシア・ドルトムントに所属しているジュード・ベリンガム以外はイングランドのクラブの選手である。

■先発11人中10人がチャンピオンズリーグで戦っているフランス

 このように所属するクラブのリーグだけを見れば、それほど交流はないと思われるだろうが、彼らのほとんどはチャンピオンズリーグで戦うクラブに所属している。イングランドは6人がチャンピオンズリーグ、3人がヨーロッパリーグ、1人がヨーロッパカンファレンスリーグに参戦し、欧州カップに出場していないのはエバートン(イングランド)のジョーダン・ピックフォードだけである。フランスに関して言えばマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)でヨーロッパリーグを戦っているバラン以外の10人はチャンピオンズリーグを戦っており、欧州の高いレベルで日ごろから切磋琢磨し、クラブの質だけを考えればフランスの方が優位である

■注目のチームメイト対決、ウーゴ・ロリス対ハリー・ケイン

 またチームメイトが青と白に分かれて戦うケースもあり、マンチェスター・ユナイテッドにはフランスのバランとイングランドのハリー・マグワイア、ルーク・ショーが在籍するが、トットナム・ホットスパーには両リームの主将であるロリスとハリー・ケインが在籍する。トットナム・ホットスパーは韓国の主将の孫興慜もおり、3か国の主将を輩出している。
 トットナムの主将でもあるロリスはこの試合が代表出場143試合目、リリアン・テュラムと並んでいたが、この日で最多出場試合数を記録する。この記念すべき試合で試合前にコイントスを行った相手がチームメイトのケインである。
 そのケインはイングランド代表としてこれまで52得点、ウェイン・ルーニーの持つ代表通算得点の53にあと1点で並ぶことができる。

■アントワン・グリエズマンからのパスをオーレリアン・チュアメニが豪快にシュート

 試合はフランスのキックオフで始まる。これまで左サイドで高速ドリブルのムバッペと配給役のテオ・エルナンデスのコンビでチャンスを作ってきたが、イングランドのウォーカー、ストーンズなどの右サイドの守備はこの動きをよく研究しており、フランスは左サイドの強みを出すことができない。左を封じられると見るや、中央のグリーズマンは右サイドのデンベレにボールを配給し、自らも右サイドにシフトしてチャンスメイクを試みる。11分には右サイドのデンベレからのクロスをジルーがヘディングで合わせるが、ピックフォードの守備範囲内でセーブされる。しかし、これもショーとマグワイアのマンチェスター・ユナイテッドのコンビが対応する。
 両チームとも中盤での守備が厳しく、相手のボールを奪ってカウンターという展開になる。フランスの司令塔ともいえる役割を果たしているのがグリエズマンである。簡単には得点を奪うことができないと判断したパスが先制点を呼び込んだ。17分にペナルティエリアの外の右サイド寄りの位置でボールをキープしたグリエズマン、これまでであったならば右サイドのデンベレにボールを預けたであろう。しかし、中央にマイナスのパス、ここにはゴールからは遠いもののノーマークでゴールに正対していたチュアメニがいた。ゴールから25メートルの位置からチュアメニが右足でシュート、虚を突かれたヘンダーソンも飛び込んだが、間に合わない。GKのピックフォードも正しい位置に飛んだが、わずかに及ばず、ゴールネットが豪快に揺れ、チュアメニは代表19試合目で2回目のゴールをあげたのである。(続く)

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