第3115回 モロッコに勝利、決勝へ (2) 今夏に監督を交代したモロッコ

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■アフリカのチームとして初めてグループリーグ突破を果たした1986年大会

 1970年のメキシコ大会で初めて生粋のアフリカ代表としてワールドカップ本大会に出場したモロッコであるが、同大会ではアジア・オセアニアからイスラエルが出場しており、こちらも2分1敗でグループリーグで敗退している。
 モロッコの出場以降、アフリカ代表がワールドカップに出場することになり、ザイール(現在のコンゴ民主共和国)、チュニジア、アルジェリア、カメルーンがこれに続き、モロッコが2回目のワールドカップに出場するのは1986年のメキシコ大会、奇しくも初出場時と同じ開催国での大会となる。イングランド、ポルトガル、ポーランドという欧州勢と戦ったグループリーグでは1勝2分で首位となり、アフリカ勢として初めてグループリーグを突破し、世界の16強に入った。決勝トーナメント1回戦では西ドイツに0-1と敗れたが、モロッコはアフリカのサッカーにまた新たな歴史を作ったのである。

■2010年代後半にようやく低迷から復活

 それ以降は1994年米国大会、1998年フランス大会に出場し、いずれもグループリーグで敗退、今世紀に入ってからは一度もワールドカップの本大会に出場していなかった。またアフリカ選手権でも2004年に準優勝した以降はこれといった成績を残していない。 モロッコが長い低迷から復活したのが2018年ワールドカップロシア大会である。アフリカ予選では前評判は高くなかったが、コートジボワール、マリ、ガボン相手に6戦して無失点で20年ぶりの本大会出場を果たした。ロシアでの本大会ではイラン、ポルトガルに敗れ、スペインに引き分けただけで最下位で敗退したが、この時のメンバーが今大会でも主力となる。

■欧州に散らばるタレントを呼び戻して強化

 モロッコからは多くの移民が欧州で生活している。この移民の二世は欧州で育ち、サッカーの世界で才能を開花させるケースもある。2015年あたりからモロッコサッカー協会はこれらの選手をモロッコのフル代表に招集する活動を行っている。かつてはモロッコからの移民は旧宗主国であるフランスが中心であったが、現在はオランダ、ベルギー、スペインと多岐にわたる。これらの国のアンダーエイジの代表をモロッコのフル代表として呼び寄せ、2018年のワールドカップに出場しただけではなく、アフリカ選手権でも2017年大会は準優勝した2004年大会以来の決勝トーナメント進出(準々決勝)を果たし、2019年大会も2021年大会(新型コロナの影響で実際には2022年に開催)も決勝トーナメントに進出した。
 今回のワールドカップ予選は二次予選から参戦、6戦全勝で難なく最終予選に進出、ホームアンドアウエー形式でコンゴ民主共和国を下し、6回目の出場を決めた。

■今夏、バヒッド・ハリルホジッチ監督を解任、ワリド・レグラギ監督が就任

 この快進撃を支えたのがフランス人監督のエルベ・ルナールと2019年のアフリカ選手権後に就任した元日本代表監督のバヒッド・ハリルホジッチ監督である。
 順調に来たかに見えたアトラスのライオンことモロッコ代表であるが、今夏、ハリルホジッチ監督と主力選手が対立、ハリルホジッチ監督が退任し、後任にはウィダド・カサブランカの監督だったワリド・レグラギが就任する。フランス生まれでフランスとモロッコの2つのパスポートを有するレグラギ監督はフランスのクラブで現役時代を過ごし、モロッコ代表として活躍した。引退後はモロッコ代表のコーチを皮切りにモロッコのクラブで指揮を執ったが、本大会まで3か月を切ったところで代表監督に就任した。
 就任後はハリルホジッチ前監督から追放された主力選手を呼び戻した。本大会まで指揮を執ったのはわずか2試合、9月23日のチリ戦(2-0で勝利)と27日のパラグアイ戦(0-0で引き分け)だけである。本大会まで2試合しか指揮をしなかった監督はこれまでに2人しかいない。2010年大会のコートジボワールのスベン・ゴラン・エリクソン監督、2018年大会の日本の西野朗監督であり、コートジボワールはグループリーグ敗退、日本は決勝トーナメント進出を決めた。モロッコはグループリーグ首位で決勝トーナメント進出を決めたのである。(続く)

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