第3124回 歴史に残る決勝、PK戦で敗れる (5) 前半のうちに2点をリードされたフランス

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■60年ぶりの連覇に向けて盛り上がるフランス

 60年ぶりの連覇か、36年ぶりか、いずれも3回目の優勝を狙う青一色のフランスと水色と白の縦縞のアルゼンチンがピッチに入る。
 スタンドには準決勝に続いて、エマニュエル・マクロン大統領が大統領専用機でフランスから赴いた。パリの地下鉄にはその名も「Argentine」という駅があるが、RATP(パリ交通公団)がこの日は駅の表示名を「France」と書き換えてしまった。一方、開催地のドーハの地下鉄はスタジアムに向かう観客を十分に輸送する能力がなく、決勝開始の1時間前から始まったセレモニーでは大半が空席のまま行われ、試合開始が近づいても観客席がなかなか埋まらないというトラブルに遭遇した。

■ワールドカップでは南米勢に相性のいいフランス

 そのような状況ではあるが、アントワン・グリエズマンのキックオフで戦いの火ぶたは切って落とされた。フランスは、ワールドカップでアルゼンチンに1勝2敗と負け越してはいるものの、ワールドカップで南米勢に敗れたのは1978年アルゼンチン大会でのアルゼンチン戦が最後であり、それ以来10試合で6勝4分(1つのPK勝ちを含む)と圧倒的な相性の良さを誇る。中立地での対戦となると1966年イングランド大会のウルグアイ戦までさかのぼらなくてはならない。

■動きの悪いフランス、今大会4回目のPK献上、リオネル・メッシが先制点

 ところが、試合開始から攻めたのはアルゼンチンであった。フランスの選手は序盤から全く足が止まった状態である。ボールを保持するアルゼンチンに対し、オリビエ・ジルーがプレスをかけるが、効果なく、アルゼンチンが前線に攻め込む。アルゼンチンは準決勝と唯一先発メンバーが変わったのは負傷から戻ってきたアンヘル・ディマリアであるが、見事にその期待に応え、左サイドからフランスのゴールに迫る。最初の枠内シュートは5分、アレクシス・マックアリステルのミドルシュートはウーゴ・ロリスに防がれる。
 フランスの攻撃陣はボールを失う機会が多く、これまで攻撃の原動力となってきた両サイドは全く怖さを感じさせない。左サイドのキリアン・ムバッペは孤立し、右サイドのウスマン・デンベレは簡単にアルゼンチンの守備陣につかまる。アルゼンチンが攻めるが、両チームともファウルで相手の攻撃を止める。
 そして21分、アルゼンチンはディマリアが左サイドからペナルティエリア内に進入する。これを後方からデンベレが倒してしまう。主審のシモン・マルチニアク氏は迷うことなくPKを与える。今大会に入ってフランスはペナルティエリア内の反則が多く、ポーランド戦で1本、イングランド戦で2本のPKを与え、これが4つ目に与えたPKとなる。マルチニアク氏は今大会で両チームの試合で笛を吹いてる(フランス-デンマーク戦、アルゼンチン-豪州戦)が、これらの試合ではPKを与えることはなかったが、この試合はPKがドラマの主役となっていくのである。
 PKのキッカーはもちろんメッシである。アルゼンチンは今大会で得たPKはこれが3本目、いずれもメッシが蹴って成功させている。またメッシは準々決勝のオランダ戦では試合中のPKに加えて、準決勝進出を決めるためのPK戦にもトップで登場し、成功させている。このメッシが名手ロリス相手に決めて、アルゼンチンが先制、メッシは得点王争いでもムバッペを一歩リードする。

■アンヘル・ディマリアが追加点、前半から選手交代をしたフランス

 フランスがリードを許したのは、グループリーグ初戦の豪州戦と、第3戦のチュニジア戦に続き、7試合で3回目のこととなる。ここまでに与えたPKの数と言い、先制された試合数と言い、守備の軽さがフランスの弱みである。しかしながら、その弱みを補うのが攻撃力であるが、この日は攻撃陣に切れがない。36分にフランスは中盤でボールをアルゼンチンに奪われる。これをマックアリステルにつなぎ、ペナルティエリアの前で中央にパス、走り込んできたのはディマリア、左足で決めて2点目となる。
 ディディエ・デシャン監督が動く。早くも前半のうちにジルーとデンベレを下げて、ランデル・コロムアニとマルクス・テュラムを投入したのである。(続く)

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