第179回 マルタ、イスラエルと連戦(8) 独走フランス、逆転勝ちで5連勝

■最大のライバルとジャック・サンティーニ監督も認めるイスラエル

 マルタに大勝し、順風満帆のフランス代表。イスラエルはこれまでの連載で紹介してきたように1980年代まで政治的な問題でワールドカップ予選を様々な地域で戦い、1994年ワールドカップ予選以降に力を蓄え、ワールドカップ、欧州選手権の本大会まであと一歩、という進歩を見せてきた。今回のグループ1の中でイスラエルは第3シードながら、ジャック・サンティーニ監督を始め多くの選手がフランスの対抗馬であると発言し、試合消化はわずか2試合であるが2位につけている。

■欧州カップで活躍するマッカビ・ハイファ、ハポエル・テルアビブ

 クラブレベルにおいても今季はチャンピオンズリーグでマッカビ・ハイファが活躍した。1次リーグのグループFでマンチェスター・ユナイテッドをホームで3-0と一蹴した。世界ナンバーワンのチームは1次リーグではこの試合以外5戦全勝しており、このマッカビ・ハイファの勝利は欧州を驚かせた。勝てば2次リーグ進出というオリンピアコスとの最終戦で3-3のドロー。あと一歩で2次リーグ進出を逃し、UEFAカップ3回戦ではオリンピアコスと同じギリシャ勢のAEKアテネに敗れた。UEFAカップに出場したハポエル・テルアビブは代表チームが2002年ワールドカップ予選で苦汁を飲まされたオーストリアのケルンテンを破り、2回戦に進出している。昨シーズンもこのハポエル・テルアビブは、UEFAカップでパルマ、チェルシーを破ってベスト8に進出している。

■厳戒のパレルモ、マフィアの発祥地のシチリア島

 さて、UEFAが指定した会場はイタリアのシチリア島のパレルモ、1990年のワールドカップのために建造された。このワールドカップにおいて治安上の問題となったのが、イングランド、オランダ、アイルランド、エジプトからなるグループFである。
 主催者はこのグループFをシチリア島のパレルモとカリアリで行い、万全のセキュリティの下で大会運営を行った。パレルモではオランダ-エジプト、アイルランド-エジプト、オランダ-アイルランドの3試合が行われ、その経験を下に今回も1000人の警官がこの試合の警備に駆けつけたのである。
 セキュリティ上はいいが、シチリア島はかつてフランス軍が占拠していたという歴史がある。その際、婚約者をフランス軍に強姦・惨殺されたシチリアの青年たちが秘密結社を結成し、「フランス人の死は、イタリア人の叫び(モルテ・アラ・フランチャ、イタリアーナ・アナーラ)」という標語の各単語の頭文字をつなげて「マフィア」となったのである。中立地とはいえ、フランスにとってはアウエーなのである。

■立ち上がりに先制を許すも主将ジネディーヌ・ジダンが逆転ゴール

 さて、フランス代表のメンバーは、体調不良のためマルタ戦に出場しなかったパトリック・ビエイラがブノワ・ペドレッティに代わってはいる。ビエイラを主将に推す声もあったが引き続きキャプテンマークは背番号10のジネディーヌ・ジダンが付ける。25歳の誕生日を迎えたばかりのジェローム・ロタンはベンチ入りの18人から外れ、唯一のスタンド観戦となる。
 試合はいきなりイスラエルにリードを許す。立ち上がりの2分、ガラタサライで活躍するハイム・レビボからのパスを受けたハポエル・テルアビブのオムリ・アフェクが先制点をあげる。フランスがこの予選で失点をしたのは初戦のキプロス戦以来のことである。その後12分にもあわや追加点という危ない状態が続く。さすが、サンティーニ監督がフランスの対抗馬というだけの相手であり、所属クラブでも欧州で実績を残しているメンバーの揃ったイスラエルである。そして徐々にリズムをつかんできたフランスが同点に追いついたのが22分である。左サイドのティエリー・アンリからのセンタリングを中央のダビッド・トレゼゲがヘッドで得点。左サイドのロベール・ピレスの不在を十分に補うアンリの活躍である。その後はフランスが完全に息を吹き返す。そして前半のロスタイムに2試合連続でキャプテンマークをつけたジダンが意表をつくシュートを決め、フランスが逆転する。
 後半に入るとイスラエルのプレスが機能し始め、フランスのボール支配が揺るぎ始める。フランスベンチは交代選手にアップを命じ、シドニー・ゴブー、ジブリル・シセを投入し、豊富な運動量でイスラエルのプレスをかわす。後半ロスタイムにはイスラエルのエースのレビボがゴール前でFKを蹴るが、枠から外れ、事なきを得る。
 そして、フランス代表はシチリア島で初めての勝利をあげることになり、5連勝で勝ち点15、得失点差は実に+17。同日にキプロスを4-1と破ったスロベニアが2位であるが、勝ち点6、得失点差は+1。試合消化数の違いはあるものの、グループ1ではフランスが独走している。4月と6月にも欧州選手権の予選はあるが、フランスは試合がなく、次は9月6日のキプロス戦である。12年ぶりのグランドスラムに期待したい。(この項、終わり)

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