第609回 2008年欧州選手権予選開幕(3) 巻き返しを図る新生イタリア

■因縁の対決を前に対照的な結果の第1戦

 欧州選手権予選の初戦でフランスはアウエーでグルジアに完勝、イタリアはホームでリトアニアと引き分けと対照的な成績となった9月2日、その4日後にはスタッド・ド・フランスでフランスがイタリアを迎え撃つことになる。7月のワールドカップ決勝で顔をあわせ、延長、PK戦で雌雄を決した両チームであるが、なんと言っても世界中で議論となったジネディーヌ・ジダンがマルコ・マテラッティに頭突きを食らわせた遺恨試合としての注目を集めた。当事者であるジダンは現役を引退、マテラッティは出場停止となり、2人ともメンバーに入っていないが、ビッグタイトルの決勝戦で初めて敗れたフランスはイタリアに勝ちたいところである。

■メンバーを大幅に入れ替えたイタリアはクロアチアに敗戦

 前回までの本連載でフランスはレイモン・ドメネク監督が留任し、ワールドカップに出場した選手のほとんどを継続して今回の予選のメンバーに起用したと紹介したが、イタリアはそれとは対照的なメンバー先行となっている。まず、イタリアも8月16日のクロアチアとの親善試合でリスタートしている。ワールドカップ優勝を花道にリッピ監督が勇退し、後任にはロベルト・ドナドニ監督が就任している。ドナドニ監督は現役時代はACミランで活躍し、訪日経験も豊富であり、日本の皆様はよくご存知であろう。さらに1990年と1994年のワールドカップでも活躍している。引退後は小クラブの監督を務め、セリエAのリボルノの監督を務めていた。そのドナドニ監督が選んだメンバーはワールドカップ登録組はわずかに1人、しかもそれは第3GKのマルコ・アメリアだけであり、メンバーを一新しての再スタートとなった。ドナドニ監督がクラブの監督として采配を振るったリボルノでのデビュー戦となったが、試合内容、試合結果とも最悪であり、0-2といいところなく敗れてしまったのである。

■メンバーを呼び戻したリトアニア戦も引き分け

 いきなり窮地に立たされた新生イタリア代表は9月2日のリトアニア戦、6日のフランス戦に向けてメンバーを再選出する。この2試合に向けて18人のメンバーを選出したが、そのうちワールドカップ組は3分の2に当たる12人であった。20人中18人がワールドカップ組という今回のフランス代表のウエイトは高すぎるが、従来のフランス代表の数字と比べれば妥当である。欧州選手権予選初戦のメンバーのワールドカップ本大会出場者の割合は1998年は77%(18人中14人)、2002年は60%(20人中12人)である。そういう意味からもイタリアの今回のメンバーは妥当であり、フランスのメンバーはワールドカップ経験者への依存度が高いといえよう。
 ところが、ワールドカップ組を大幅に呼び戻したナポリでのリトアニア戦でイタリアはまた失態を演じてしまう。前回の本連載で紹介したとおり、1-1という引き分けで終わってしまう。

■ワールドカップ優勝国の鬼門、欧州選手権予選初戦

 欧州のワールドカップ優勝国のその後を振り返ると決して欧州選手権予選の初戦ではいい成績を残していない。例えば8年前のワールドカップで優勝したフランスも欧州選手権予選初戦のアイスランド戦はアウエーとはいえ1-1で引き分けている。これはワールドカップ優勝という大きな目標を成し遂げた選手が一旦オフに入り、所属クラブで新シーズンを迎えたばかりであり、そのモチベーションを維持することがいかに難しいかを物語っている。さらに今回のイタリアの場合は八百長疑惑で国内のサッカー界、特にクラブレベルが混乱に陥っていること、また、例年のことであるがクラブのシーズン開幕が欧州の中でも遅いため、選手のコンディション作りが難しいことが挙げられる。
 しかし、そのような要素があったにせよ、因縁のフランス戦を控えてバルトの小国相手の引き分けが許されるわけがない。逆にフランスにアウエーで勝利すれば、リボルノの敗戦、ナポリでの引き分けは帳消しにすることができるのであり、巻き返しを図っているのである。(続く)

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