第1941回 ようこそフランスへ (1) 24か国がフランスに集まる2014年欧州選手権

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■多くのスポーツイベントに影響を与えたパリ同時多発テロ

 11月13日に起こったパリ同時多発テロにより、前回の本連載でも紹介した通り、欧州では多くのスポーツイベントが中止、延期という措置を取った。フランス国内のサッカーもちょうどインターナショナルマッチデーであったことから国内リーグは11月13日の直後の週末には行われなかったが、11月20日にはリーグ戦が再開する。このリーグ戦は予定通り行われるが、セキュリティチェックを入念に行うとともに、ビジターのサポーターを入場禁止とすることになった。
 また、テロリストにとって次なる標的は11月30日から12月11日までパリで行われる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)である。地球環境問題を議論する今回のCOP21にはおよそ150人の政府元首が集まる。この会議をテロリストから守ることができるかどうかは議論の内容と同様に重要なことであろう。

■テロリストの標的となりうる2014年欧州選手権

 そして、フランスにおけるスポーツイベントとしては来年6月10日から7月10日までサッカーの欧州選手権が行われる。この欧州選手権での優勝に向けてディディエ・デシャン監督はチームを作ってきたが、セキュリティ面で問題が起これば、選手観客の人命はもちろん、2024年の夏季オリンピック招致にも大きな影響を与えることになる。
 フランスは開催国として本大会出場のチケットを獲得しており、予選には出場していないが、グループIに所属する国とホームアンドアウエー形式で親善試合を繰り返してきた。そしてこの11月中旬は、欧州のスポーツ界ではフランス-ドイツ戦を巻き込んだ同時多発テロで試合そのものよりも試合開催の有無、さらにはその試合の持つ社会的、政治的な意味合いが注目されたが、欧州選手権出場のための最後の4枚のチケットを巡って欧州各地でプレーオフが行われてきた。

■欧州選手権の大会形式の変遷

 来年の欧州選手権を語る上で2つ忘れてはならないことがある。まず、たくさんのチームが一国に集まって長期間戦いを繰り広げるのはこのフランス大会の後は当分ないということである。欧州選手権は1958年に始まり、最初の決勝は1960年に行われたが、この時は準決勝以降をフランスで行った。夏季オリンピックと同じ年に本大会を行っているが、1980年イタリア大会では本大会出場国が8か国となり、4か国ずつ2つのグループリーグを行い、各グループリーグの首位同士で決勝を行った。次の1984年大会からはグループリーグを行い、グループリーグの上位チームが決勝トーナメントを行うという形式になっている。さらに1996年イングランド大会からは決勝トーナメントに出場する国が16か国に増え、4つのグループリーグとなり、決勝トーナメントは8か国で行われるようになり、現在に至っている。

■本大会出場国が24か国に拡大、続く2020年大会は分散開催

 ところが2020年大会はUEFA創立60周年を記念し本大会が分散開催される。グループリーグならびに決勝トーナメントの1回戦、準々決勝については欧州各地の12都市で行い、準決勝と決勝をイングランドのロンドンで行う。1976年以前の大会の準々決勝までの戦いは実質的に分散開催であると言えるが、本大会に関してはこれまで2か国による共同開催は2000年大会(ベルギーとオランダ)、2008年(オーストリアとスイス)、2012年(ポーランドとウクライナ)があったが、分散開催はこれが最初である。そして多くの国が特定の国に集まって長期間にわたりリーグ戦、トーナメント戦を行う大会形式は2016年のフランス大会の後は8年待たなくてはならない。
 もう1つ注目すべきことは本大会出場チームが24チームとなることである。ワールドカップに欧州から出場するチーム数が14前後であることを考えれば、これまで欧州選手権やワールドカップという檜舞台を踏むことのなかったニューフェイスの出場、あるいはかつては力があったが現在は衰退してしまった古豪の復活も期待できる。
 多くの国が一か国に集まるセントラル方式であり、そして過去ないほど多くのチームが一堂に会する来年の欧州選手権がテロの危機に瀕していることは残念なことであるが、サッカー界だけではなく多くの英知を集めてこの難局を乗り越えることを望んでやまない。(続く)

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