第3366回 ボルシア・ドルトムントが先勝(2) 両チームを結ぶ選手たち

 平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨、令和6年能登半島地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ウェンブリーでの決勝で敗れたボルシア・ドルトムント

 今年のチャンピオンズリーグの決勝はロンドン(イングランド)のウェンブリーで開催される。これまで7回、決勝戦の舞台となり、最も多くの栄光の場となった。これまでにボルシア・ドルトムント(ドイツ)は2回決勝を戦い、そのうち1回はこのウェンブリーが舞台であったが、この2013年の決勝はドイツ勢対決となり、バイエルン・ミュンヘンに敗れている。一方のパリサンジェルマンは決勝は1回しか経験がなく、それは第3363回まで取り上げたマルセイユが戦ったリスボン(ポルトガル)のルス競技場である。

■新型コロナの感染拡大初期に対戦した両チーム

 今季のグループリーグの前に両チームが対戦したのは2019-20シーズンの決勝と-トーナメント1回戦、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、第1戦のドルトムントでの試合は観客を入れて行われたが、第2戦のパリでの試合は無観客、パリサンジェルマンは8強入りした。この時のボルシア・ドルトムントにはレアル・マドリッド(スペイン)からレンタルされていたアクラフ・ハキミも出場していた。ハキミは当時21歳、その後インテル・ミラノ(イタリア)を経由し、チャンピオン経験があるということでパリサンジェルマンに加わったが、この時はパリサンジェルマンに敗れている。

■ボルシア・ドルトムントでプロ契約し、今年初めに戻ってきたジェイドン・サンチョ

 当時のボルシア・ドルトムントは若いチームで、19歳の選手が2人先発していた。1人がジェイドン・サンチョ、もう1人がアーリング・ハーランドである。ノルウェー代表のハーランドはマンチェスター・シティに移籍したが、サンチョはマンチェスター・ユナイテッドを経てこのパリサンジェルマン戦に戻ってきた。
 トリニダード・トバゴ出身の両親を持つサンチョはロンドン生まれであるが、プロ契約を最初に結んだのは17歳の時、ボルシア・ドルトムントであった。その時に背番号7を与えられたが、これはサンチョと入れ替わる形でバルセロナ(スペイン)に移籍していったウスマン・デンベレが日本の香川真司を受け継いでつけていた番号であった。サンチェはボルシア・ドルトムントでキャリアを積み、イングランド代表にも選出され、2021年に広域開催された欧州選手権では決勝に進む。ウェンブリーでの決勝はイタリアと延長戦まで戦っても決着がつかず、PK戦となった。サンチョは4番目のキッカーであったが、GKに阻まれる。この時のイタリアのGKは現在パリサンジェルマンのゴールを守るジャンルイジ・ドンナルンマである。サンチェはマンチェスター・ユナイテッドに移籍し、今年初めにボルシア・ドルトムントにレンタル移籍、今度は背番号10を背負うことになった。
 ボルシア・ドルトムントは欧州のビッグクラブの中では比較的選手の出入りは激しくないが、このように両チームは多くの線で結ばれている。

■ボルシア・ドルトムントを率いるエディン・テルジッチ監督

 ボルシア・ドルトムントを率いるエディン・テルジッチ監督は典型的なドイツの監督のキャリアである。現在のクロアチアからのユーゴスラビア移民としてドイツに渡ってきた両親のもとでドイツで生まれ育つ。選手としてはアマチュアレベルでしかなかったが、20代の後半でボルシア・ドルトムントのスカウトになる。そして若手育成を任されるようになり、クロアチア人脈を活かしてクロアチア人のスラバン・ビリッチが監督を務めていたトルコのベクシタシュ、イングランドのウエストハム・ユナイテッドでコーチを務め、2018年にルシアン・フェーブルの目に留まり、ボルシア・ドルトムントにコーチとして戻ってきた。無観客のパルク・デ・プランスでパリサンジェルマンに敗れた時もベンチで試合を見守った。
 そして2020年の暮れ、シュツットガルトに大敗してフェーブルが解任された跡を継いで、監督になった。初の監督がドイツのビッグクラブであるが、就任以来、3年連続してチャンピオンズリーグでは決勝トーナメント進出、3年目の今季は準々決勝を突破して最高のシーズンとなり、その先を狙っているのである。(続く)

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