第1503回 3強大苦戦のフランスカップ(4) マルセイユもパリサンジェルマンも辛勝

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■主力メンバーを大幅に欠くマルセイユ

 前回の本連載では昨年のフランスカップのディフェンディングチャンピオンのリヨンがナショナルリーグのエピナルにPK戦で敗れたことを紹介したが、同時刻にキックオフを迎えたマルセイユも思わぬ苦戦をした。
 マルセイユの相手は2部のギャンガンである。マルセイユは本拠地ベロドロームでこのベスト32決定戦を迎え、3万2000人という多くのファンの前で今年最初の試合を行うことになる。ファンの期待は大きいが、ベストメンバーからかけ離れた陣容で戦わなくてはならない。それはロッド・ファンニ、ニコラ・ヌクル、ジョルダン・アユーが出場停止、アンドレ・アユー、モルガン・アマルフィターノが負傷により欠場している。さらにアルジェリア代表のフェド・カディールがアフリカ選手権のためにアルジェリアに帰国している。

■マルセイユを救ったアンドレ・ピエール・ジニャックの2ゴール

 多くの主力メンバーを欠いたマルセイユ、年末年始のバカンスから明け、まだ練習を再開してから4日しかたっていない。
 このような状況のマルセイユの動きは決してよくはない。その中で一人気を吐いたのが、CFのアンドレ・ピエール・ジニャックであった。23分にはギャンガンの守備陣のパスミスから先制点をあげる。
 一方のギャンガンは2009年にフランスカップを獲得したこともあるチームであるが、2部リーグでは前半戦を終えたところで首位ナントと勝ち点5差、昇格圏の3位カーンと勝ち点1差の5位であり、後半戦にかける意欲は並々ならないものがある。2013年最初の試合で1部のトップ集団のマルセイユに善戦あるいは勝利して勢いをつけたいところである。その思惑通り、ギャンガンは好調とは言えないマルセイユに対し、終盤の83分にクリストフ・マンダンヌがジェレミー・モレルに競り勝ってゴールを決める。またロスタイムにもマルセイユのゴールをヘディングで襲うが、スティーブ・マンダンダが防ぎ、試合は延長戦となる。この延長戦でマルセイユを救ったのはジニャックであった。延長後半になった106分、決勝点を奪う。マルセイユは2部のギャンガンに延長戦の勝利、チームは後半戦に向け、その翌日からモロッコのマラケッシュで合宿を行い、次週の試合地であるソショーに赴くのである。

■CFA2部のアラスと対戦するパリサンジェルマン

 3強の中で最後に登場したのが、リーグ戦を首位で折り返した秋の王者パリサンジェルマンである。18年間リーグ優勝から遠ざかっているが、フランスカップ、リーグカップを得意とするカップ戦のスペシャリストが、日曜の夜、他のすべての試合が終了した20時45分にCFA2部のアラスと対戦する。5部に相当するCFA2部のアラスはノール・パ・ド・カレー地方のパ・ド・カレー県の県庁所在地である。人口4万人、そして本拠地のスタジアムの収容人員はわずか1500名であり、パリサンジェルマンを迎え撃つ一戦はカレーに舞台を移し、収容人数1万2000人のエポッケ競技場で行われた。収容人員が多いと言ってもチケットは瞬く間に売り切れる。

■得点ラッシュの一戦、パリサンジェルマンが逃げ切る

 年末年始の中断中はオーナーのいるカタールで合宿を行ってきたパリサンジェルマンは、オーナーのためにも下位のクラブに圧勝したいところである。パリサンジェルマンはアジアへの移籍が話題になっているギヨーム・オラオ、ネネだけでなく、ズラタン・イブラヒモビッチを欠くが、力の離れた相手には十分な陣容であり、7分にエセキエル・ラベッシ、10分位ブレーズ・マツイディが得点をあげ、楽勝ムード。アラスも26分に1点返すが、40分にズーマ・カマラがゴール、3-1で折り返す。そしてアラスは52分に2点目をあげ、1万2000人の歓喜が爆発する。1点差に迫られたパリサンジェルマンは68分にラベッシが得点するが粘るアラスは83分に3点目、3-4と詰め寄り、長いロスタイムとなったが追いつくことができなかった。パリサンジェルマンもリードを許すことはなかったが、4-3と冷や汗ものの勝利であった。
 3強も大苦戦であったが、すべての1部勢が下位のリーグのクラブと対戦した今年のフランスカップベスト32決定戦は、リヨン、アジャクシオ、バスティア、スタッド・ド・ランス、レンヌ、バランシエンヌの6チームが初戦で敗れたのである。(この項、終わり)

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