第906回 フランスのクラシコ、マルセイユ-パリサンジェルマン戦(2) マルセイユ大敗、首位奪還に失敗

■15年間リーグ優勝から見放されたマルセイユとパリサンジェルマン

 首位リヨンは得意のオセールと対戦したが、試合を支配しながらもシュートに精度を欠き、枠の中に飛んだシュートはわずかに1本、引き分けに終わってしまい、勝ち点を1しか伸ばすことができなかった。その結果、翌日にホームで試合を行うマルセイユに首位奪回のチャンスがめぐってきた。マルセイユの相手は宿敵パリサンジェルマンである。
 マルセイユとパリサンジェルマン、フランスのクラシコと呼ばれるカードであるが、国内リーグでのタイトルから離れて久しい。パリサンジェルマンの最後のリーグ優勝は1993-94シーズン、そしてマルセイユの最後のリーグ優勝はその1992-93シーズンのこと(結果的にはこのタイトルはバランシエンヌ戦の八百長疑惑で剥奪された)であり、両チームのリーグ優勝から15年の月日が過ぎ去ろうとしている。

■マルセイユとパリサンジェルマンのライバル心

 フランスのサッカークラブで有数の歴史を誇るマルセイユ、片や1970年代に誕生し、フランスのトップレベルのクラブの中ではもっとも歴史の浅いパリサンジェルマン、この両チームがリーグ優勝を争ったのは1980年代の後半から1990年代の初めまでの数年間に過ぎない。しかしながらこの間の熱い争いに加え、政治のみならず、経済、文化、芸術の都であるパリに対し、サッカーの都であるマルセイユという両都市のライバル心がパリサンジェルマンとマルセイユの戦いをフランスのクラシコとしたのであろう。
 両チームとも近年は優勝争いをするには至らず、リヨン独走を許しており、特にパリサンジェルマンは昨年はあわや2部降格と言う崖っぷちに追い込まれた。しかし、今シーズンはマルセイユは首位リヨンと勝ち点1の差で第10節を迎えた。またパリサンジェルマンも第9節を終えた時点で9位と中位を保っている。1990年代前半には首位マルセイユと2位パリサンジェルマンがリーグ戦の終盤で直接対決するということもあり、それに比べれば今回の2位と9位の戦いは物足りないが、近年の両チームの成績を見ればクラシコの名に恥じない戦いとなった。

■前半終了間際にリードしたマルセイユ、後半にパリサンジェルマンが大逆転

 好天のマルセイユ、満員の観衆の中で先制点をあげたのはパリサンジェルマンであった。ジェローム・ロタンのCKがきっかけとなる。今季2部のルアーブルから移籍してきたギヨーム・オラローが、マルセイユのDF陣に競り勝ち、ヘッドでゴールに叩き込む。フランス代表の正GK位なったスティーブ・マンダンダ、大一番で痛恨の失点となる。しかしマルセイユは21分にシュートのこぼれ球を拾ったセネガル代表のママドゥ・ニアンがヘッドで無人のゴールに押し込む。フランス代表から声がかからなくなったミカエル・ランドローも失点を喫す。そして前半終了間際に慎重163セントの小柄なMFのマチュー・バルブエナが逆転ゴールを決めて、ベロドロームはボルテージを上げてハーフタイムを迎える。
 しかし、後半は後々まで長く語り継がれる展開となった。かつてマルセイユに所属していたペギー・リュインデュラが53分に同点ゴールを上げる。ここでパリサンジェルマンのマルセイユに対する闘志に火をつける。76分にはセットプレーのキックを任されているロタンがFKから得点をあげてついに逆転、そして試合終盤の82分には先制点をあげたオラローがこの日2点目のゴールを上げて、パリサンジェルマンは4-2とリードを広げる。マルセイユは大声援をバックに試合を優位に進め、シュート数でも勝ったが、パリサンジェルマンは9本のシュートの内4本が枠内と精度の高い攻撃陣の活躍で勝利したのである。

■久しぶりにクラシコで勝利したパリサンジェルマン

 パリサンジェルマンは2006年4月29日のフランスカップ決勝以来およそ2年半ぶりのマルセイユ戦勝利であるが、リーグ戦での勝利こそクラシコの真の勝利である。そのリーグ戦での勝利はパルク・デ・プランスでは2004年11月以来4年ぶり、そしてベロドロームでは実に2003年11月以来5年ぶりのことである。またベロドロームでパリサンジェルマンが4得点をあげたのはリーグ戦以外の戦いも含めて初めてのことである。
 マルセイユの首位奪回はならなかったが、パリサンジェルマンは6位に浮上し、首位リヨンと勝ち点4差、2位マルセイユとも勝ち点2差である。パルク・デ・プランスでのクラシコは第28節で来年3月15日、その時の両チームの順位はどうなっているであろうか。(この項、終わり)

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