第3302回 前半戦を終えたフランスリーグ(4) 40年ぶりの最下位を経験したリヨン

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■リヨンを支えてきたジャン・ミッシェル・オラス会長

 これまでの連載ではモナコ、ニースに代わって首位を奪ったパリサンジェルマンが前半戦をトップで折り返したことを紹介してきたが、なじみのクラブの名前が登場しないことにお気づきの長年にわたる読者の方もおられるであろう。それがリヨンである。2001年に本連載が始まったが、2000年代はまさにリヨンの独壇場であった。2011年にカタール資本となって大型補強を繰り返してきたパリサンジェルマンもリーグ7連覇という数字には及ばない。
 このクラブを語る上で、長らく会長を務めてきたジャン・ミッシェル・オラスは欠かせない。1949年にリヨン近郊で生まれたオラスは若くから起業することを繰り返したビジネスマンであった。1987年に当時2部だったリヨンの会長に就任、1989年に1部に昇格するとそれ以来現在まで1部の座を保っており、1部在籍チームの中ではパリサンジェルマンに次ぐ古参となった。また現在では欧州きっての強豪となった女子チームも、経営難で立ちいかなくなってきたチームをオラスが救い、男女のクラブを危機から強豪へ導いた。

■欧州カップ連続出場が23シーズンで途絶える

 先述のとおり2000年代には黄金期を迎え、2010年代に入ってもリーグ戦で上位を占め、欧州カップの常連であった。圧巻なのは1997-98シーズンから2019-20シーズンまで23シーズン連続で欧州カップの本戦に参戦したことである。
 しかし、2021-22シーズンにはヨーロッパカップに復帰したものの、昨季、今季と2年連続して欧州カップの出場権を逃している。ただし、2年連続で出場できなかったものの、リーグ順位は2021-22シーズンは8位、2022-23シーズンは7位でいずれのシーズンも出場権まで勝ち点5足りないだけであった。

■米国人のジョン・テクスターが経営権を握る

 そしてこの間にクラブには大きな動きがあった。25年ぶりにリーグ8位という悪い成績に終わった2021-22シーズンの後、クラブの株式の半数以上を米国人のジョン・テクスターが所有することになる。テクスターはブラジルのボタフォゴ、イングランドのクリスタルパレス、ベルギーのRWDモレンビークも所有している。そして2年連続で欧州カップ出場を逃した2023年5月9日にはオラスが会長の座を辞することになった

■開幕から低迷、ようやく前半戦最後に3連勝

 30数年にわたるオラスの時代が終わり、シーズン開幕を迎える。テクスターの所有するチームとプレシーズンマッチを重ねたが連戦連敗し、GKのアントニー・ロペスが負傷、昨年10月から指揮を執るローラン・ブランが率いるチームに対しファンは不安を抱いた。
 開幕戦はアウエーでストラスブール戦、アレクサンドル・ラカゼットが先制点を入れてリードして折り返すが、後半に入って2点を奪われて逆転負けとなる。ホームでの開幕戦となる第2節のモンペリエ戦は代役GKレミ・リウのミスも重なり、前半に2点を奪われ、1-4と大敗し、地元のファンを失望させる。リヨンがリーグ戦で開幕2連敗をしたのはなんと1966年以来57年ぶりのこととなった。
 初めて勝ち点をあげたのは第3節のアウエーでのニース戦であった。ラカゼットが出場停止になり、ほとんど攻めることができなかったが、無失点でしのぎ、スコアレスドローで勝ち点1を獲得した。
 そして第4節がビッグゲームのパリサンジェルマン戦である。これまでの本連載で紹介している通り、パリサンジェルマンも第3節でようやく初勝利、リヨンにも勝機があるとグルーパマ競技場に集まったファンは期待した。しかし、前半だけで4失点、後半にPKで1点を返すにとどまり、この時点でリヨンは最下位に陥落した。第1節終了時点を除くとリヨンが最下位になったのはオラスが来る前の1983年以来40年ぶりのことであった。
 ブラン監督は更迭、後任の監督にはクラブOBのイタリア人のファビオ・グロッソが就任する。しかし、グロッソも苦戦し、クラブが今季初勝利をあげたのは11月12日の第12節のレンヌ戦である。
 その後も勝利がなく最下位を低迷していたが、12月に入ってトゥールーズとモナコに連勝して最下位を脱出すると、前半戦の最終戦のナント戦にも勝利して3連勝、残留圏の15位まで順位を上げた。後半戦のリヨンに注目したい。(この項、終わり)

本年の入稿はこれが最後となります。本年もご愛読ありがとうございました。読者の皆様、よいお年をお迎えください。

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