第1429回 初戦は米国に逆転負け (2) 2点先行するが、4得点を奪われ黒星スタート

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■米仏で大統領選挙が行われる2012年

 オリンピックイヤーにはサッカーの欧州選手権が行われるが、米国の大統領選挙が行われることも忘れてはならない。今年はフランスで大統領選挙が行われ、フランソワ・オランド大統領が誕生したことは本連載の読者の方であればよくご存じであろう。第五共和制になってからフランスと米国の大統領選挙が同じ年に行われたのは1988年以来史上2度目のことである。1988年は社会党のフランソワ・ミッテランが当選しており、今回同様、政権が社会党に移っている。
 その米仏ともに大統領選挙が行われる年のオリンピック、両国にとってオリンピックの始まりは女子サッカーのフランス-米国戦となった。

■昨年のワールドカップ準決勝の再戦

 本連載第1270回で紹介したとおり、昨年のワールドカップの準々決勝でフランスは米国と対戦し、1-3と敗れたが、試合内容では圧倒し、フランス女子サッカーの存在を世界に知らしめした試合となった。
 7月25日、グラスゴーのハンプデンパーク、「星条旗よ永遠なれ」に続き、「ラマルセイエーズ」が鳴り響く。
 両チームの先発メンバーと比較すると、フランスは11人中7人、米国は11人中6人が昨年7月13日にドイツのメンヘングランドバッハで行われたワールドカップ準決勝にも先発したメンバーである。また途中交代出場したメンバーも含めるとフランスは11人中8人、米国は11人中9人が準決勝に出場している。
 フランスのGKは昨年のワールドカップメンバーではなかったサラ・ブハディ、DF陣は右からコリン・フランコ、ウェンディ・ルナール、オフェリー・メイユルー、ソニア・ボンパストール、MFは守備的な位置にエリーズ・ビュサグリア、攻撃的な位置は右にカミーユ・アビリー、左にルイーザ・ネシブ、FWは右からエロディ・トミ、マリー・ロール・デリー、ガエタン・ティネである。

■劣勢のフランスが2点を先取

 キックオフから攻め込むのは米国、昨年のワールドカップとは異なる展開となる。米国はしばしばフランスのゴール前に迫るが得点ならず。逆に先制点は守勢のフランスが奪った。12分にルナールがロングフィード、このボールを受けたティネーが25メートルのロングシュート、世界一のGKと評される米国のホープ・ソロもセービングしたが届かず、フランスが先制点を奪う。
 1点を失って動揺を隠せない米国に対し、フランスはたたみかける。2分後にビュサグリアからのCKにネシブが強烈なシュート、米国守備陣はクリアしきれず、混戦が続き、デリーが最後はネットを揺らす。代表42試合目で37得点目のデリーはストライカーとしての役割を十分に果たしている。

■フランス守備陣に集中力の欠如、米国が大逆転

 フランスが序盤に2点をリードしたが、ここでひきさがるわけにいかないのが米国である。18分にはエースのアビー・ワンバックが体格差を生かしてCKから1点を返す。この日の米国は昨年の準決勝時には先発メンバーではなかったアレックス・モーガンがキープレーヤーとなる。右ウィングのモーガンはスピードのある選手であり、実はフランスの2得点はモーガンが負傷してピッチの外に出ていた時間帯に記録したものである。このモーガンのスピードにフランスの左サイドが追い付けないシーンがたびたびあった。32分にはGKのソロのロングフィードにモーガンがうまく反応し、左足で強烈なシュート、フランスのGKブハディは反応が遅れ、ネットが揺れることとなる。これで試合は振り出しに戻り、2-2というスコアで後半を迎えることになったのである。
 後半開始時にフランスはネシブと主将のメイユルーを下げ、昨年のワールドカップでも活躍したローラ・ジョルジュとユージェニ・ルソメを投入する。しかし56分にフランスは米国に逆転される。またもや米国のロングボールに対応しきれず、カーリ・ロイドに逆転ゴールを決められてしまう。さらに66分、ゴール前でノーマークとなったモーガンが得点を決めフランスは2-4と窮地に追い込まれる。
 72分には昨年のワールドカップまで主将を務めていたサンドリーヌ・スーベイランを投入、中盤からのロングパスに活路を見出そうとするが、米国の壁を破れず、2-4と第1戦を落とす。フランスのオリンピックは米国相手の敗戦で始まったのである。(この項、終わり)

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