第1588回 U-20ワールドカップで初優勝(7) ガーナを下し、初の決勝進出

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■今世紀はまだ優勝のない欧州勢

 2大会連続での準決勝進出を果たしたフランス、準決勝で勝利するか、準決勝で敗れたとしても3位決定戦で勝利すれば過去最高の成績を残すことができる。しかし、ファンが望んでいるのは過去最高の成績ではなく優勝であろう。
 前回の本連載で欧州勢がこれまでの欧州開催の大会で振るわなかったことを紹介したが、これは欧州開催に限ったことではない。過去18回の大会のうち、欧州勢の優勝はわずか6回、第1回大会はソ連が圧倒的な強さで優勝し、その後はポルトガルが2回、西ドイツ、ユーゴスラビア、スペインが1回ずつ優勝しているが、欧州勢の優勝は日本が決勝に進出した1999年大会のスペインが最後である。

■圧倒的な強さを誇るアルゼンチンとブラジルの南米2強が予選落ち

 欧州勢が優勝から遠ざかっているのは今世紀になってアルゼンチンとブラジルという南米の2強がこの優勝の座を争っているからである。21世紀になってからこのU-20ワールドカップは6回開催されているが、アルゼンチンが2001年、2005年、2007年の3回優勝、ブラジルが2003年と2011年の2回優勝しており、それ以外は2009年にガーナが優勝したことがあるだけである。また20世紀にアルゼンチンは3回(1979年、1995年、1997年)、ブラジルも3回(1983年、1985年、1995年)優勝しており、この両国だけで過去18大会のうち11回優勝している。
 ところが、今大会は予選に相当するアルゼンチンで今年1月から2月にかけて行われた南米ユース選手権でアルゼンチン、ブラジルともグループリーグで敗退、本大会に出場することができなかった。ブラジルが本大会に出場しないのは1979年以来のことであり、史上2回目のことである。また、アルゼンチンが本大会に出場しなかったのはこれが6回目のことである。

■準決勝の組み合わせはフランス-ガーナ、イラク-ウルグアイ

 このように南米の2強が本大会に出場しなかったことは欧州勢をはじめとする他のチームにとっては大きなチャンスである。前回の本連載では準々決勝に進出した8チームのうち欧州勢はフランスとスペインの2チームだけであることを紹介したが、それ以外の顔ぶれは南米のウルグアイとチリ、アジアからウズベキスタン、韓国、イラクの3チーム、アフリカのガーナである。この中でウズベキスタンはフランスに敗れたが、ほかの準々決勝の結果はガーナが延長戦の末チリを4-3で下し、アジア勢同士の対戦となったイラク-韓国戦はPK戦でイラクが準決勝に初めて進出する。そして欧州王者のスペインと南米3位のウルグアイという好カードも延長戦になり、延長前半にウルグアイが1点奪い、スペインを下した。
 準決勝の組み合わせはフランス-ガーナ、イラク-ウルグアイとなったのである。

■ガーナに競り勝ち、初の決勝進出

 フランスの準決勝の相手のガーナであるが、本連載第1585回で紹介した通り、フランスはガーナにグループリーグで3-1と勝利している。ガーナはグループリーグで3位にとどまったが、3位チームの中での成績で決勝トーナメントに望みをつなぎ、決勝トーナメントでも1回戦は終盤にポルトガルに逆転勝ち、2回戦のチリ戦も後半に追いついて延長戦に入り、延長戦でもチリに先手を取られたが、延長後半に追いつき、そして延長後半のロスタイムに勝ち越し点を決め、ミラクルともいえる戦いで準決勝に進み、フランス戦を迎える。
 ガーナ戦の舞台はトルコ北西部のブルサである。フランスはこの大会のグループリーグ3試合はイスタンブールの同じ会場で試合をしたが、決勝トーナメントに入って移動が続き、3つ目の会場となる。ちょうど女子の欧州選手権がスウェーデンで開催されているが、フランスサッカー連盟のノエル・ルグラエ会長もスウェーデンから駆け付けた。ガーナは先述の通り2009年にはこの大会で優勝しているだけではなく、2001年大会と2005年大会では準優勝、21世紀に入ってからはアルゼンチン、ブラジルに次ぐ第3の勢力であると言えるであろう。しかし、ガーナは主将のローランス・ラーティをはじめ3人が出場停止という厳しい布陣。
 しかし、この試合はフランスにとっては厳しい戦いとなり、ガーナとは全く互角の展開となった。前半終盤にフローリアン・トーバンが決めて先制したものの、後半の立ち上がりにガーナが追い付く。その後も一進一退の展開となり両チームとも積極的にゴールを狙うが、勝利の女神はフランスに微笑んだ。74分のトーバンのシュートが決勝点となり、2-1で勝利したフランスが初の決勝進出を果たしたのである。(続く)

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