第1922回 アルメニア、デンマークに連勝(3) カリム・ベンゼマの久しぶりのゴールでアルメニアに勝利

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■アルメニア最大のスター、ヘンリク・ムヒタリアン

 欧州選手権予選グループIのアルメニアとは昨年10月にアルメニアのエレバンで親善試合を行い、この時は3-0とフランスが勝利したことは本連載第1766回と第1767回で紹介した通りである。この時は進境著しいアルメニアと紹介したが、今大会は全く振るわず、ここまで未勝利、勝ち点わずかに2である。
 すでに予選敗退の決まったアルメニアであるが、最大のスター選手はヘンリク・ムヒタリアンである。ドイツのボルシア・ドルトムントに所属し、エースナンバーの10番を背負っている。3年前にチャンピオンズリーグで対戦したウクライナのシャフタール・ドネツクから移籍してきたが、この時の移籍金額は2700万ユーロ、ドルトムント史上最高の移籍金額となった。この金額にたがわぬ活躍を続け、3季目となる今シーズンも好調なスタートを切っている。またムヒタリアンは6か国語に精通し、フランス語も堪能である。その理由はムヒタリアンの父のハムレット・ムヒタリアンはかつてアルメニア代表として活躍し、当時フランス2部のバランスにも所属していた。ムヒタリアンは生後間もなくフランスに移住し、幼少期をフランスで過ごし、その後、故国アルメニアに戻ったというわけである。

■試合前の黙祷とキックオフセレモニー

 さて、ニースのアリアンツ・リビエラには3万2136人の観衆が集まる。キックオフ前には10月初めにコートダジュールで発生した洪水で犠牲となった16人、そしてフランス代表の名GKとして活躍し、10月7日に亡くなったドミニク・ドロプシーを悼み、1分間の黙祷がささげられた。キックオフのセレモニーはアルメニアにルーツを持ち、フランスサッカーを代表する審判であったミッシェル・キタブジャンが行う。

■不調のカリム・ベンゼマに1トップを託す

 フランスの布陣はGKは主将を務めるウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、ラファエル・バラン、ママドゥ・サコー、パトリス・エブラ、MFは中央の低い位置にラッサナ・ディアラ、右にヨアン・カバイエ、左にブレーズ・マツイディ、FWは右にアントワン・グリエズマン、左にマチュー・バルブエナ、中央にカリム・ベンゼマである。失点の目立つ中でストッパーはバランとサコーのコンビとなった。また攻撃陣はベンゼマが1トップを務めるが、昨年のワールドカップでは3得点をあげたが、ワールドカップ以降は昨年10月のポルトガル戦で1ゴールをあげただけで、6試合連続でまた音無しとなる。ワールドカップ以降にフランスは20ゴール(うち1得点は相手のオウンゴール)をあげているが、その中でベンゼマが1点だけというのは本人もファンも納得できないであろう。
 試合はフランスのペースで展開される。ボール保持率はフランスが6割以上であり、攻撃陣が次々とシュートを放つ。そしてアルメニアのエースのムヒタリアンが孤軍奮闘したが、ムヒタリアンをマークするのは5年ぶりの代表戦出場となったラッサナ・ディアラである。このポジションのレギュラーはポール・ポグバであるが、ポグバが負傷していることもあり、ラッサナ・ディアラの出番となったが、代表チームでもクラブチームでもブランクがあったものの、それを感じさせない精力的な動きでムヒタリアンを封じ、アルメニアの攻撃を枠内シュート数わずか1本に押さえたのである。そして先制点はグリエズマン、ベンゼマとのワンツーパスから35分に先制点を決める。

■ベンゼマ、1年ぶりに1試合複数ゴール、地方都市で強いフランス

 パス主体の攻撃となったフランスが試合を支配し、後半に入っても55分にカバイエが追加点をあげる。そして78分にはついにベンゼマが待望のゴールをあげる。さらにベンゼマは79分にもゴール、ベンゼマにとっては昨年のワールドカップのホンジュラス戦以来の複数得点であり、代表戦ではこれが5試合目となる。
 フランスは守備陣も安定し、4-0と快勝するが、パリ以外の地方都市のホームゲームでは本当に強い。過去5年間で一度も負けていないのである。(続く)

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