第3227回 女子ワールドカップ開幕(1) クラブは好成績も、代表はトップに届かないフランス女子

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■初の共同開催、出場国が32に増えた女子ワールドカップ

 前回までの本連載では9月に開幕するラグビーワールドカップを前に、弟分の20歳以下のラグビー代表チームが南アフリカで開催されたワールドラグビーU20チャンピオンシップでは圧倒的な成績で優勝した。この勢いがそのままワールドカップに維持することを期待したい。そして、ラグビーワールドカップの前にもう1つフランスの快進撃が期待される大会がある。それがサッカーの女子ワールドカップである。今大会はこれまでの24チームから出場チーム数を32に増加させ、そして女子ワールドカップとしては初めて複数国での開催となり、豪州とニュージーランドの共催となる。さらに賞金もこれまでの大会の4倍に上げ、男女間の格差を是正(しかしながら、それでも男子の4分の1である)した。

■隆盛を極める欧州の女子サッカー

 その結果として放映権料が高騰するという副作用も起こり、国によってはなかなかテレビ放映が決定しなかったが、米国代表チームが賞金の男女間格差をなくす主張に端を発した放映権料の高騰であるが、欧州ではこの放映権料の高騰に見合った女子サッカーの盛り上がりがある。女子のチャンピオンズリーグは開始されてまだ20年強の歴史しかないが、カードによっては数万の観客を動員するようになった。特に2021-22シーズンは終盤に好カードが集中し、決勝のトリノ(イタリア)で行われたリヨン-バルセロナ(スペイン)戦こそ、3万2000人の観衆にとどまったが、バルセロナは準決勝と準々決勝のホームゲームではカンプノウ競技場に9万人を超える観衆を集めた。また、準決勝ではリヨンとパリサンジェルマンというフランス勢が対戦し、リヨンでは2万2000人、パリでは4万3000人の観衆がダービーマッチに立ち会った。

■欧州チャンピオンに8回輝いたリヨン

 また、フランス勢は男子はなかなか欧州のタイトルを獲得できないが、女子の場合はこれまで22回の大会の中でリヨンが最多の8回の優勝を誇っている。フランス勢の優勝はリヨンのみであるが、パリサンジェルマンも準優勝が2回ある。準決勝に進出した経験のあるチームはリヨン、パリサンジェルマンに加え、トゥールーズ、モンペリエ、パリFCと5チームに上る。男子の場合は欧州五大リーグと言われ、その5位の座が危ないフランスリーグであるが、女子の場合はUEFAインデックスでフランスは堂々の首位である。新シーズンもフランスからはリヨン、パリサンジェルマン、パリFCと最多の3チームが出場する。
 この数年、欧州において女子サッカーに対する関心が高まっている中で、フランス勢はその首位の位置をキープしていることは特筆すべきであろう。

■なかなかトップに立てない代表チーム

 リヨンだけではあるが、クラブレベルで欧州の頂点に8回も立っているのに対し、代表チームはなかなかトップに立つことができない。フランスでは男女は逆の構図となっている。女子の世界規模の大会としてはオリンピックとワールドカップがあるが、1996年大会から採用されたオリンピックは予選落ちが続き、初出場となった2012年大会は準決勝で日本、3位決定戦でカナダに敗れ、4位となった。2016年大会は準々決勝でカナダに敗れ、2021年大会は予選落ちの憂き目を見た。
 ワールドカップも予選敗退が続き、初出場は2003年大会であるがグループリーグで敗退している。唯一の輝きは2011年大会で準決勝に進出、米国に敗れ、スウェーデンにも3位決定戦で敗れ4位となった。以降2015年大会と2019年大会は準々決勝で敗れている。
 直近の主要大会は昨年7月にイングランドで開催された女子欧州選手権である。女子欧州選手権も他の大会同様、創成期はフランスは予選落ちが続く。ようやく1997年大会に初出場したが、グループリーグの壁をなかなか破れなかった。2009年大会でグループリーグを初めて突破し、3大会連続でベスト8となる。そして昨年の大会でフランスは準々決勝を初めて突破する。準決勝ではドイツに敗れたが、3位決定戦がないため、3位となり、これがこのチームにとって史上最高の成績となった。
 そして、3位になった女子欧州選手権の本大会を挟んで今回のワールドカップ予選が行われたのである。(続く)

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