第204回 ローランギャロス2003(2) ヤニック・ノア優勝20周年にあやかれないフランス男子

■ヤニック・ノア優勝20周年に高まる期待

 今年はヤニック・ノアが男子シングルスで優勝してからちょうど20年になる。昨今の男子フランステニスチームの活躍については本連載でも紹介しているが、サッカー同様ナショナルチームの活躍と反比例するかのように、個人レベルでは目立った活躍はない。女子シングルスに関しては2000年大会でマリー・ピエルスが優勝しているが、男子はローランギャロス以外の四大大会を見渡してみてもその後優勝者が出ていない。サッカーの世界でマルセイユが1993年の欧州チャンピオンズリーグという至高のタイトルを獲得して以来、国内外のいかなるタイトルにも縁がないことに似ている。そのマルセイユも今年は10周年ということでリーグ戦では首位争いを演じ、マルセイエーを熱狂させた。
 男女ともシングルス本選は128選手で争われるが、今年フランス人選手は本選に男子18人、女子15人が出場した。初夏を迎え、汗ばむような陽気の中でクレーコート特有の延々と続く長いラリーがローランギャロスの真骨頂である。四大大会であるから男子は5セットマッチ。陽気なパリジャンからの声援・歓声もこの大会の特徴であり、心身ともにタフでなければ最終日のチャンピオンスピーチをすることはできない。

■明暗の分かれたセバスチャン・グロジャンとニコラ・クートロ

 フランス男子で最も期待が集まったのは第14シードのセバスチャン・グロジャンである。世界ランキング26位であるが、地元選手であり、昨年は準々決勝、一昨年は準決勝に進出した実績から高めにシードされたのであろう。1回戦は難なく突破し、5月29日の2回戦はスペインのフェルナンド・ビセンテと対戦。ところが、今大会の台風の目となったスペイン勢の前にグロジャンは0-3のストレートで敗退してしまう。この日はグロジャンの25回目の誕生日であったが、悪夢の誕生日となり、ノア以来の優勝を期待したフランス人をがっかりさせた。
 一方、それと同じ日に金星を上げたのが予選勝ち上がりのニコラ・クートロである。世界ランキングは173位であるが、1回戦で世界ランキング57位のイタリアのダビッド・サンギネッティと対戦し、はるかに格上の相手を3-0と下している。クートロの2回戦の相手は第8シードのアルゼンチンのダビッド・ナルバンディアン。さすがに地元の声援があるとはいえ、相手は一桁台のシード選手である。ところが、クートロはこの強敵相手にフルセットの接戦で競り勝ち、3回戦に進出したのである。

■フランス勢対決はアルノー・クレマンに軍配

 3回戦には32人で争われるが、18人が出場したフランス勢はクートロ以外にはあと1人だけになってしまった。そのもう1人のフランス人の3回戦進出者がアルノー・クレマンであり、皮肉なことにこの2人は3回戦で対戦した。クレマンは世界ランキング75位であるが第32シード。シード選手のしんがりであるが、デビスカップでも活躍しており、本連載の読者の方ならよくご存知であろう。クレマンとクートロ、フランス人同士のサバイバルの対戦となったが、この2人はともに1977年生まれであり、少年時代からのライバルである。プロになってからの実績はクレマンが上回っているが、アマチュア時代の成績はクートロに軍配が上がる。プロになってからの対戦は1回だけであり、その時はクレマンが勝っている。注目の一戦となったが、試合は一方的でプロとして実績のあるクレマンが圧倒、ストレートで少年時代からのライバルを破る。試合時間はわずか51分であった。

■前年覇者のアルベルト・コスタを破れず、フランス男子は全滅

 4回戦に進出したクレマンの相手は昨年の覇者、スペインのアルベルト・コスタである。フランス人のクレマンは初めてローランギャロスのセンターコートにあたるフィリップ・シャトリエに足を踏み入れ、前年覇者に挑戦したのである。第1セットこそ2-6と引き離されたが、第2、第3セットはいずれも5-7と競り合いを落とし、フランス男子はベスト8に残ることができなかった。しかし、わずか3セットのゲームながら3時間7分という大熱戦になり、スタンドのパリジャンは大満足でクレマンの健闘をたたえたのである。(続く)

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