第205回 ローランギャロス2003(3) アメリー・モーレスモ、鬼門の地元

■2000年大会の覇者マリー・ピエルス、初めての初戦敗退

 前回の本連載では男子シングルスの戦いについて紹介したが、今回は女子シングルスについて紹介しよう。フランス人選手の男子シングルスの優勝が1983年のヤニック・ノアを最後に途絶えているが、女子シングルスは2000年にマリー・ピエルスが優勝を飾っており、そのピエルスは今大会も出場している。ところが、現在世界ランキング47位のピエルスにはシード権が与えられず、1回戦で第28シードのアルゼンチンのクラリサ・フェルナンデスと対戦する。第2コートに相当するスザンヌ・ラングランの最終ゲームでピエルスは12回目のローランギャロスに登場する。ところがピエルスは2-6、3-6といいところなく敗れ、初めての初戦敗退となったのである。

■ナタリー・デッシーも巨漢の前に屈す

 フランス女子でシード権が与えられたのは2人。まず、第25シードのナタリー・デッシーは1回戦でチェコのリブゼ・プルソワを突破、2回戦は予選勝ち上がり組のスペインのガラ・レオン・ガルシアと対戦する。過去2戦し、2回とも勝利を収めているデッシーが今大会の旋風となっているスペイン勢をストレートで下し、最近6年間で5回目の3回戦進出を決める。ところがデッシーの3回戦の相手は米国の巨漢リンゼイ・ダベンポート。デッシーは第6シードの米国の巨漢の前に屈し、赤土の祭典から去ったのである。

■期待の高まるアメリー・モーレスモ

 そしてもう1人のフランス人女子のシード選手は男女を通じて最もフランス人として期待されたアメリー・モーレスモである。世界ランキング5位で第5シード。近年の輝かしい実績についてはあらためて紹介するまでもないが、四大大会では1999年全豪オープン準優勝、2002年に全米オープンと全英オープンでベスト4に入っている。ところが地元のローランギャロスだけでは1996年にジュニアで優勝して以来、好成績とは縁がなく、2度ベスト16に残ったことがあるだけである。しかし、先輩のナタリー・トージアが「毎年成長している」と評すように、今年は期待が高まる。大会初日のフィリップ・シャルトリエでフランス人同士の戦いとなった1回戦ではビルジニ・ラザーノをストレートで下す。フィリップ・シャルトリエの最終ゲームという舞台が与えられた2回戦はロシアのリナ・クラノルスツカヤと対戦。モーレスモは最高の出来で、6-1、6-2と圧倒。そして3回戦ではコロンビアのファビオラ・ズルアガをストレートで下し、ベスト16に入る。4回戦の壁を今まで突破できなかったが、4回戦の相手はスペインのマギー・セルナ。4回戦も圧勝し、ついに9回目の出場で初めてベスト8に進出したのである。

■第1シードのセレーナ・ウィリアムズに敗れ、フランス勢消える

 さて、準々決勝の相手は第1シードのセレーナ・ウィリアムズである。それぞれが順当に勝ち上がってきた結果の対戦であるが、優勝候補の本命、セレーナ・ウィリアムズとの対戦は誰しもが避けたいところである。1999年のフランスガス・トーナメントで始まった両者の過去の対戦成績はセレーナ・ウィリアムズが5勝1敗と大きくリードしている。ところがこの唯一のモーレスモの勝利である今年5月17日のローマでの勝利には大きな意味がある。まず、最新の対戦であること、そしてこのローマのサーフェースがローランギャロス同様クレーコートであったことである。また、モーレスモはウィリアムズ姉妹の姉のビーナス・ウィリアムズにも5月4日にワルシャワで初勝利をあげている。
 そのようなデータに加え、男子シングルス最後の砦、バンダナ姿のりりしいアルノー・クレマンも前日に消えてしまったことから、モーレスモに対する期待は高まった。ところが、パリジャン、パリジェンヌの期待もむなしく、モーレスモは圧倒される。エースが取れず、ダブルフォールトの山。結局、1-6、2-6という一方的なスコアでローランギャロスを去る。モーレスモはローランギャロスに近いサンジェルマン・アン・レー出身であるが、四大大会のうちローランギャロスだけ準決勝に進めないのである。
 そしてこのモーレスモの敗退は、まだ5日間も残りがある赤土の祭典のシングルスから地元選手が姿を消してしまったことを意味するのである。(続く)

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