第207回 ローランギャロス2003(5) 男女とも初王者の誕生で赤土の祭典に幕

■ジュスティーヌ・エナン・アーデンが大金星

 ラテン勢の活躍で終盤を迎えた今年のローランギャロスであるが、男女ともセミファイナルでは予想を覆す試合があった。まず、6月5日に女子のシングルス準決勝2試合が行われた。準決勝の第1試合は第2シードのキム・クライシュテルス(ベルギー)とノーシードのナディア・ペトロワ(ロシア)の対戦である。本連載第202回で紹介した通り、1回戦でペトロワは元女王のモニカ・セレシュを破っている。その後も第7シードのジェニファー・カプリティアニに勝つなど、勢いに乗ったペトロワであるが、さすがに第2シードの壁は高かった。第1セットこそ5-7と競り合った末に落としたが、第2セットは1-6とあっさりと落としてしまい、決勝進出を阻まれる。一方のクライシュテルスは2001年に決勝進出して以来2年ぶりの決勝進出となる。
 そして第2試合は第1シードのセレーナ・ウィリアムズ(米国)が第4シードのジュスティーヌ・エナン・アーデン(ベルギー)の挑戦を受ける。セレーナ・ウィリアムズは四大大会を4連覇し、33連勝中という抜群の強さを誇る。判官びいきのローランギャロスの観衆は隣国の選手に声援を送る。強すぎる女王はそれまでの戦いでも相手への判官びいきの声援をはね返してきたが、この日ばかりは違った。第1セットからエナン・アーデンが勢いを見せつけ、セレーナ・ウィリアムズはミスを重ねる。そのミスをパリジャンが拍手喝采、セレーナ・ウィリアムズはミスを繰り返すという展開になる。第1セットはエナン・アーデンが6-2と圧倒する。セレーナ・ウィリアムズにとって今大会初めてセットを失う。第2セットこそ後半にセレーナ・ウィリアムズが盛り返しセレーナ・ウィリアムズが6-4と取り、タイに持ち込むが、セレーナ・ウィリアムズの勢いは最終セットの前半まで。セレーナ・ウィリアムズが4-2とリードしたが、そこからエナン・アーデンが大逆転。最終セットはエナンが7-5と取って、決勝進出を決める。パリジャンの行き過ぎた応援は猛省を促したいが、エナン・アーデンの初の決勝進出により、ローランギャロス史上初めてのベルギー人同士の決勝となったのである。

■史上初のベルギー勢の決勝を制し、キム・クライシュテルス初優勝

 6月7日に行われたエナン・アーデンとクライシュテルスのベルギー人同士の決勝は一方的な試合になった。第1セットはエナン・アーデンが6-0と圧倒する。第2セットになってクライシュテルスが盛り返すものの、時すでに遅し。第2セットも6-4と取り、ローランギャロスの女王となる。2年前のウィンブルドン決勝では達成できなかった四大大会制覇を成し遂げたのである。

■ラテン勢に食い込んだ初出場のマルティン・フェルカーク

 一方、男子の準決勝は6月6日に行われた。今大会の主役となったラテン勢は順調に勝ち進み、アルゼンチンのギレルモ・コリア(第7シード)、スペインのフアンカルロス・フェレーロ(第3シード)とアルベルト・コスタ(第9シード)という3人と初出場でノーシードのマルティン・フェルカーク(オランダ)がセミファイナリストである。準決勝第1試合で驚きの声があがった。なんとフェルカークが7-6、6-4、7-6というストレートでアルゼンチンのコリアを破り、決勝に進出してしまったのである。続く第2試合はスペイン勢同士の戦いとなったが、シード上位で4年連続4強入りしたフェレーロが6-3、7-6、6-4のストレートで勝ち、2年連続の決勝進出を決めた。
 初出場で決勝進出というのは1986年大会のミカエル・ペルンフォルス(スウェーデン)以来17年ぶりのことである。ペルンフォルスはイワン・レンドル(当時チェコスロバキア)に決勝で敗れたが、初出場で初優勝というのは1982年大会の同じスウェーデンのマット・ビランデルまでさかのぼることになる。ビランデルは決勝でアルゼンチンのギレルモ・ビラスに逆転勝ちし、初出場初優勝という偉業を達成している。

■クレーコートのスペシャリスト、フアンカルロス・フェレーロが初優勝

 3日前の女子シングルス準決勝と同じ雰囲気になった最終日のローランギャロス。強力サーブが売り物のフェルカークへの声援とクレーコートの申し子と言われるフェレーロへの声援が呼応する。前日の女子シングルス同様、決勝は一方的な試合になった。昨年の決勝でコスタの前に屈したフェレーロがフェルカークの強力サーブを封じ込め、6-1、6-3、6-2というストレートでフェレーロが四大大会初優勝を飾った。決勝で失ったゲームが6ゲームというのは1978年大会でビヨン・ボルグ(スウェーデン)がビラスに対して5ゲームを失って以来というワンサイドの試合内容で、悲願の赤土の王座となり、14日間にわたる赤土の祭典は男女の初王者の誕生と共に幕を下ろしたのである。(この項、終わり)

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