第630回 またも観客動員記録更新、スタッド・フランセ-ビアリッツ戦

■リヨンも勝てないラグビー人気

 リヨンのジェルラン競技場で行われたリヨンとサンテエチエンヌのダービーマッチはリヨンが首位、サンテエチエンヌが4位と、久々の上位同士の対戦となり、ローヌ・アルプス地方だけではなくフランス全体が注目した。入場券は前売りで早々に完売、ジェルマン競技場は満員の4万人のファンで埋まった。
 前回までの本連載で紹介したとおり、この一戦は終了間際のジュニーニョの決勝ゴールにより、久しぶりのダービーマッチの勝利を目指すサンテエチエンヌの挑戦をリヨンが退けた形になった。8試合を終えた段階で7勝1分と無敵のリヨンであるが、実はこのリヨンにも勝てないものがある。それが今回紹介するラグビー人気である。

■土曜のゴールデンタイムに中継されたラグビーの試合

 リヨン-サンテエチエンヌはテレビ中継もあったため、通常の試合が行われる夜8時からではなく、夕方の5時からの試合となった。土曜日の夜こそゴールデンタイムであるが、このゴールデンタイムでフランス中の注目を集めたのがラグビーのフランスリーグ、スタッド・フランセとビアリッツの一戦であった。ラグビーのフランスリーグも週末に行われているが、第11節の7試合のうちこのスタッド・フランス-ビアリッツ戦もテレビ中継の関係で他の試合と時間をずらし、夜9時キックオフとなったのである。サッカーのリヨン-サンテエチエンヌ戦も同じテレビ局が中継しており、特等席はラグビーの試合に準備され、サッカーの伝統のダービーマッチは前座試合となってしまったのである。

■新記録更新となった79,619人

 また、会場もスタッド・ド・フランスを使用し、関係者の間ではスタッド・ド・フランスの観客動員の新記録なるかが注目を集めた。スタッド・ド・フランスは元々1998年のサッカーのワールドカップ開催のためのメインスタジアムとして建設され、当初はサッカーの試合で観衆を集めたが、近年になって観客動員の記録はラグビーの試合に次々と塗り替えられており、現在の記録は今年3月4日のスタッド・フランセ-ビアリッツ戦の79,604人である。リーグ戦の第11節を迎える段階で首位は勝ち点41のスタッド・ド・フランスが独走しているが、勝ち点28で5位のビアリッツも独走にストップをかけたいところであり、半年前の同カードと同様に注目が集まり、ゴールデンタイムにサッカーの試合ではなくラグビーの試合を放映するテレビ局の判断は妥当なものであろう。
 この日のスタッド・ド・フランスは異常な熱気に包まれた。続々と観客が集まり、これまでの記録を15人上回る79,619人が土曜日の夜のスタッド・ド・フランスを埋め尽くしたのである。試合前から各種のイベントが行われ、キックオフの前には試合球がスタッド・ド・フランスの屋根からジョン・レノンの「イマジン」の曲にのって降下され、感動的なキックオフとなったのである。

■首位スタッド・フランセが逃げ切って勝利

 そして試合そのものも印象的なものとなった。開始5分にスタッド・フランセの左ウイングのジュリアン・ソーバドが先制トライ、コンバートも決まり7-0とリード、その後、PGを次々と決めて前半は22点をあげる。方や遠来のビアリッツはPGを2本決めただけで、6点どまりで前半を終える。後半に入り、ビアリッツは切り札を投入する。SHにフランス代表としても活躍しているドミトリ・ヤシビリを投入、ここで試合の流れが変わる。
 試合終了まで5分となった段階でついにビアリッツは初トライ、さらにヤシビリがコンバートも決める。79分にはヤシビリがPGを決めて16-21と追い上げ、トライで同点というところまでくるが、ノーサイドの笛が吹かれ、スタッド・フランセが首位の地位をさらに磐石のものとした。
 試合後、スタッド・ド・フランスではパリを本拠とするラグビーチームの勝利を祝福し、花火が打ち上げられる。スタッド・フランセのマックス・グアジニ会長は「まるでスーパーボウルの雰囲気だ」と感激のメッセージを残す。来年にワールドカップ開催を控えていることもあるが、サッカーは完全にラグビーの後塵を拝すことになってしまうのであろうか。(この項、終わり)

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