第642回 ラグビー、秋の陣(1) オールブラックスとの第1テストは大敗

■注目を集めたワールドカップ1年前の戦い

 来年秋の開催されるラグビーのワールドカップまであと1年、サッカーのワールドカップを超える規模となったこの大会にかける地元の期待は大きく、サッカーの欧州選手権予選の日程や試合会場が変更されている。
 ラグビーのワールドカップがサッカーのワールドカップと大きく異なるところはシーズンオフではなくシーズン中に開催されることであろう。逆にテストマッチと言われる国際試合が行われるのは1月から3月にかけての北半球での六か国対抗、6月から8月にかけての北半球勢の南半球遠征、そして11月の南半球勢の北半球遠征が標準的なカレンダーである。来年のフランスでのワールドカップはこの南半球勢の北半球遠征の時期に行われる。したがって、ワールドカップイヤーであるからと言って特別なカレンダーになるわけではなく、通常のテストマッチの代わりにワールドカップを行うと考えればよいであろう。今年もこの時期に多くの国際試合が北半球で行われ、来年のワールドカップを占う上で注目を集めた。

■3週連続でテストマッチを行うフランス代表

 フランスは今夏の親善試合は6月17日にブカレストに遠征してルーマニアと対戦し、62-17と勝利、続いて24日にはケープタウンに渡って南アフリカを36-26と下している。南アフリカ戦についてはそれまで13試合ホームで負け無しと言うチームを破ったことでフランスの評価は一気に上がった。秋の親善試合は、11月11日と18日にニュージーランドと対戦、25日にアルゼンチンをフランス国内に迎え、3週連続でテストマッチすることとなった。

■100年前のフランス代表のデビュー戦の相手はニュージーランド

 フランスとニュージーランドの初対決は今から100年前の1906年1月1日のことである。実はこの試合がフランスにとって初めての国際試合である。欧州勢との初めての試合は同年3月26日のイングランド戦である。パリのパルク・デ・プランスで行われた試合、フランスはニュージーランドの猛攻を受け、10トライを許し、8-38と敗れてしまう。
 フランスは1987年の第1回ワールドカップでの決勝戦で顔をあわせており、ワールドカップが創設されてからは北半球と南半球を代表するチームとなっている。前回のワールドカップでは両チームとも決勝に進出しなかったが、2004年の11月にスタッド・ド・フランスで親善試合を行って以来の対戦となる。この2年前の対戦は本連載第400回で紹介している通り、6-45と言うフランス代表としては歴史に残る大敗を喫し、現在1引き分けを挟んで4連敗中である。
 この2年前の大敗の雪辱を期して、フランスはまずリヨンでオールブラックスを迎え撃つことになった。第638回の連載で紹介したとおり、第1テストは11月11日にリヨンのジェルラン競技場で行われた。フランスにとってはこれがこの秋初めての試合であるが、ニュージーランドは6日前にロンドンで前回ワールドカップの優勝チームであるイングランドを41-20と大差で下し、自信を持ってリヨン入りする。

■次々とトライを許し、3-47と大敗

 試合会場のジェルラン競技場はフランス国内では無敵、そして欧州レベルでも屈指の力を持つオランピック・リヨネ(サッカーのリヨンの正式名称)の本拠地であるが、トップレベルのラグビーチームはリヨンならびにこのローヌ・アールプ地方には存在しない。しかしながら、通常のリヨンのサッカーの試合を上回る4万1000人の観衆がジェルラン競技場に集まり、新たなフランス・サッカーの聖地となったこのリヨンの地においてもラグビーに対する関心が高いことがうかがわれる。
 土曜日の夜9時という絶好の時間にキックオフされた試合は、満員の観衆だけではなくテレビの前で数多くのファンが注目した。しかし、 試合はまさに両チームのコンディションの差が現れた。開始早々から黒衣のフィフティーンが試合を支配する。ニュージーランドは6分に先制トライを許す。その後も立て続けにオールブラックスのトライは積み重なり、前半だけで3トライを許す。一方のフランスは23分にCTBのフローリアン・フリッツがドロップゴールを決めて無失点を免れるのが精一杯であった。フランスはFWが安定した球を供給することができず、ボールは支配しているものの、効果的な攻撃につながらない。
 後半に入ってFW中心にメンバーを入れ替えるものの、状況は好転しない。後半のオールブラックスのトライは前半の3個を上回る4個であり、一方のフランスは全く攻め手がなく無得点。後半のスコアは24-0と一方的であり、前後半合計した得点でニュージーランドは47-3という大勝を記録したのである。(続く)

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