第713回 2007年大統領選挙(3) 決選投票でニコラ・サルコジ候補が勝利

■記録的な高投票率の末、決選投票へ

 直接選挙で国家元首を選ぶ選挙の中でフランスの大統領選挙は世界で最も注目を集める選挙であろう。4月22日の大統領選挙の投票率は83.77%、前回の2002年の投票率の71.60%を12ポイント以上上回った。そして過去最高である1965年の84.75%に迫る数字であり、フランス国民の関心の高さが現れた。ちなみに投票率が過去最高となった1965年の大統領選挙は第五共和制発足後初めての選挙であり、物珍しさも手伝ってこの高い数字となったのであろう。実質的に今回が最高の投票率であろう。
 投票の結果であるが、トップはニコラ・サルコジ候補、得票数1145万票で得票率(有効投票数に対する得票数)31.18%、2位はセゴレーヌ・ロワイヤル候補で得票数950万票、得票率25.87%、3位はバイル候補で得票数682万票、得票率18.57%、4位はルペン候補で得票数383万票、得票率10.44%となった。得票率が50%を越えた候補者がいなかった場合、上位2候補で決選投票が行われる。サルコジ候補とロワイヤル候補の決選投票は5月6日に行われることになったのである。

■2000万人が見たテレビ討論、サルコジ候補が新大統領に

 選挙前の各種の世論調査から順当な結果となったが、決選投票となれば、3位のバイル候補、4位のルペン候補の票が、サルコジ候補とロワイヤル候補のどちらに流れるかが注目の的となった。そして決選投票へ向けてのクライマックスが5月2日の夜21時から2時間半にわたって行われたテレビ討論会である。同じ時間帯にチャンピオンズリーグ準決勝のACミラン(イタリア)とマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)の第2戦が行われていたが、大統領選のテレビ討論の視聴者数は2000万人を超えた。サッカーのワールドカップ決勝をしのぐ多くの視聴者であり、日本の紅白歌合戦のように国民全体が注視する番組となったのである。
 討論会ではサルコジ候補が冷静に論を進める一方で、ロワイヤル候補は興奮気味、このテレビ討論で勝負あった。5月6日の決選投票の投票率は83.97%と過去最高に迫り、得票率はサルコジ候補が53.06%、ロワイヤル候補は46.94%とサルコジ候補が新大統領となった。
 サルコジ氏は「もっと働き、もっと稼ごう」と言うスローガンで現在の週35時間労働を見直す雇用の流動化を促進する経済政策を唱え、移民取締りを強化する治安の維持を訴えた。サルコジ氏支持派の家庭では祝杯となったが、今年は会津葵とシャンパンで乾杯が流行であったようである。一方、同じ時間帯に早速サルコジ候補の当選に対して不満を感じる若者たちがパリやリヨンで暴動を起こした。一昨年秋に「クズ」とサルコジ内相からののしられた若者たちが早速抗議行動を起こしたわけである。

■サッカー場の治安の確保

 さて、サルコジ新政権がサッカーに与える影響はどうなるであろうか。サルコジ氏は内相時代から治安を乱す若者に対して強硬な態度で臨んできた。競技場の治安を守るために競技場内での不法行為を行った観客に対する取り締まりは厳しくなるであろう。現在のゴール裏は残念なことに極右思想を持ったサポーター集団が存在する。敵味方関係なく移民選手や肌の色の違う選手にブーイングをし、時として物を投げたりしている。右派とはいえ、このような不法行為にサルコジ氏は目をつむってはいないであろう。

■強いフランス代表の良き伝統の継承

 そしてフランス代表は白人選手だけになってしまうであろうか。そのようなことはないであろう。サルコジ氏は、国際競争力強化のために実力主義で人材を登用することを経済政策の中で訴えている。実力主義であるならば、肌の色や出自は関係ないはずである。1950年代のフランス代表はポーランド移民の二世たちが支えた。1980年代のフランス代表も黒人の主将がスペインやイタリアの出身者を率いた。そして1998年と2000年の二冠メンバーは黒人とアラブ系の選手がほとんどであった。フランスの国力はこのように異邦人を受け入れて、培われてきた。その良き伝統をサルコジ新政権下の新しいフランスが受け継ぎ、発展させていくことを願ってやまない。(この項、終わり)

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