第1576回 ラグビーも王国相手に3連敗(5) 3試合でわずか1トライ、3連敗で遠征を終える

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■世界のベストスタジアムの3位に入ったニュープリマスのヤロー競技場

 オールブラックス相手に0-30とフランスが大敗を喫したクライストチャーチでの第2テストマッチ。遠征の最終戦となる第3テストマッチはニュープリマスのヤロー競技場で行われる。第1戦の行われたオークランドは元首都で周辺も含むと人口120万人以上を誇るニュージーランド最大の都市であり、第2戦の行われたクライストチャーチはオークランドに次ぐ第2の都市であり、南島最大の都市である。それらに比べて最終戦となる第3戦の行われるニュープリマスは人口はわずか5万3000人というニュージーランドでは12番目の都市である。このような都市でテストマッチの最終戦が行われる理由は、このヤロー競技場とタラナキ地方がラグビーにおけるレジェンドであるからである。ヤロー競技場の収容人員は2万4500人というサイズであるが、ラグビー王国ニュージーランドで発行されているラグビー専門誌の「ラグビーワールドマガジン」の世界のベストスタジアムの第3位にランキングされている。ちなみに1位は豪州のブリスベーンのサンコープ競技場、2位はウェールズのカーディフのミレニアム競技場であり、ラグビー王国における最高のスタジアムということになる。市内から望むタラナキ山は今回世界遺産に認定された富士山とそっくりの山であり、この景色も競技場の価値を高めている。

■フランスでプレー経験のある伝説の主将グラハム・モーリー

 フランス人にとってタラナキというとグラハム・モーリーを思い出さずにはいられない。オールブラックスの伝説の主将にして、現在は日本の矢部達三などと並んでIRB理事を務めている。タラナキに所属していたこの第三列の選手は全盛期に1年だけフランスのPUC(パリ大学クラブ)に所属している。現在でもそうであるがニュージーランドの選手が欧州のクラブでプレーすることはまれであり、フランスのラグビーファンには印象が強く残っている。

■第2戦と半数以上を入れ替えたフランス

 連敗を喫したフランスは最後の1戦で何とか一矢を報いたいところである。フランスは第2戦から半数以上の8人を入れ替える。第1列はトマ・ドミンゴ、ベンジャマン・カイザー、ニコラ・マス、第2列はアレクサンドル・フランカール、ヨアン・マエストリ、第3列はフランカーにティエリー・デュソトワールとダミアン・シュリー、ナンバー8にアントニー・クラセン、ハーフ団はスクラムハーフにジャン・マルク・デュサン、スタンドオフがレミ・タレス、そしてスリークォーターバックは左からヨアン・ウジェ、ウェスレイ・フォファナ、フローリアン・フリッツ、マルク・アンドルー、フルバックは・デュランである。
 特筆すべきはハーフ団をまた入れ替え、スクラムハーフを代表3試合目のデュサン、スタンドオフを代表2試合目のタレスと経験の少ないコンビに託す。さらにフッカー、ナンバー8、フルバックというセンターラインの3人も入れ替えた。

■ベテランハーフ団を起用したオールブラックスが後半は圧倒

 一方のオールブラックスには3戦目にしてようやくスタンドオフにダン・カーター、スクラムハーフにピリ・ウィプーという実績のある選手を起用してきた。オールブラックスの試合でカーターは95試合目、ウィープは71試合目の出場になる。
 試合は前半8分にフランスがフリッツのドロップゴールで先制し、カーターのペナルティゴールで追いつかれたが、よく持ちこたえ37分にベン・スミスのトライを許すまで同点であった。トライを奪われた直後にフランスはペナルティゴールで3点を返し、前半は6-8と2点差で後半を迎え、後半最初の得点は46分のフランスのペナルティゴールでついに9-8と逆転する。
 しかし、その後はオールブラックスがボール支配率で上回り、フランスは防戦一方、タックルを繰り返すが、第2戦同様、オールブラックスがペナルティゴールを重ね、最後にボーデン・バレットにトライを決められ、9-24と最終戦も敗れたのである。
 フランスは3連敗に終わっただけではなく、第1戦の10分にフォファナがあげたトライがこの遠征で唯一のトライとなり、深刻な結果を残して帰路につき、選手はシーズンオフを迎えたのである。(この項、終わり)

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