第1757回 2014年バスケットボールワールドカップ(5) 優勝候補スペインを下し、準決勝へ

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■サッカーの代表と異なり強さを見せつけるスペイン

 決勝トーナメント1回戦でクロアチアに勝利したフランスは準々決勝でスペインと対戦する。この時点でスペインの世界ランキングは米国に次いで2位、欧州ではナンバーワンであり、まさにこの夏までのサッカーのスペイン代表を思わせる強さである。そしてサッカーの代表との違いは本大会に入ってからの戦績である。前回までの本連載でも紹介してきた通り、グループリーグでは5戦5勝、そして注目すべきはすべての試合で大差で勝利してきたことである。6戦して一番差のつかなかった試合がグループリーグのセルビア戦の16点差(89-73)、決勝トーナメント1回戦ではセネガルを89-56と33点差で下している。グループリーグを連敗でスタートし、敗退してしまったサッカーの代表とは大きく異なる。フランスは前々回の本連載で紹介した通り、グループリーグでは64-88で大敗している。

■スターター5人を変えないバンサン・コレ監督

 決勝トーナメント1回戦から中1日おいた9月10日にマドリッドでは準々決勝のセルビア-ブラジル戦、スペイン-フランス戦が行われた。第1試合のセルビア-ブラジル戦はグループリーグで敗れたセルビアがブラジルを破っており、フランスもセルビアに続きアップセットを起こしたいところである。今大会に入ってフランスは4勝2敗、スペインとの差はリバウンドである。リバウンドを取れず、結局はボールを失ってしまうのがフランスのパターンである。トニー・パーカーの欠場により負担の大きくなったベテランのボリス・ディアウは調子が上がらず、本連載の第1755回で紹介したようにエバン・フルニエ、ルディ・ゴベールというスターター以外の選手が活躍しており、ディアウをスターターから外すべきであるという声もなかったわけではないであろう。しかし、バンサン・コレ監督は一貫してスターターを固定し、この準々決勝のスペイン戦もボリス・ディアウ、ニコラ・バタム、ミカエル・ジェラバル、トマ・ウルテル、ジョフレイ・ローベルニュの5人で試合開始のジャンプボールを迎える。

■シュートの精度の悪いスペインが思わぬ苦戦

 ジャンプボールを確保したのはスペイン、そのまま3ポイントシュートを狙うが得点はならず。早くもスペインのゲームになる予感はあったが、スペインはその後もシュートを外し続ける。シュートを外し続けたスペインは立ち上がりからいらついたのか、ファウルを連発。フランスはフリースローで得点を重ね、4分の時点で8-0と大きくリードする。スペインは追い上げ、8分にようやく12-11と逆転するが、フランスも再逆転、その後両者得点を重ね、第1クォーターは15-15のイーブンスコアで終える。フランスは相変わらずリバウンドが取れないが、スペインはこれまでとは異なりシュートだけではなくフリースローも成功率が低く、フランス相手に思わぬ苦戦となる。

■第2クォーター、第4クォーターで得点を重ねたフランスが快勝

 第2クォーターはフランスの10分間となる。スターター以外の選手がこのクォーター最初の得点を演じる。アントワン・ディオからパスを受けたフローラン・ピートラスのシュートでフランスが先手を取る。フランスはこの第2クォーターでスペインにリードを許すことなく、第2クォーターはフランスが20-13と差をつけ、前半を終わったところで35-28と7点差。この差は主に3ポイントシュートの精度であり、フランスが13本中4本決めているのに対し、スペインは11本狙って成功はわずかに1本だけである。
 第3クォーターは第2クォーターとは逆にスペインの反撃の時間となった。スペインが猛チャージ、フランスが3分間特典がない間位にスペインは6点を奪い、コレ監督はたまらずタイムアウト。スペインは26分についに逆転、フランスも盛り返し、第3クォーターを終わって43-42とスペインがわずかに1点のリード。
 最終第4クォーターが始まりフランスが逆転、そして34分にはエバン・フルニエが狙ったロングシュートが外れ、リバウンドをルディ・ゴベールが取り、最後はディアウが3ポイントシュートを決めるというスーパープレーでフランスが51-45と差を広げる。さらに試合終了間際にはフランスが次々と得点を重ね、65-52という予期せぬ大差で勝利し、準決勝進出を決めたのである。(続く)

このページのTOPへ