第1899回 ワールドカップに向けイングランドと連戦(2) 100回目のクランチはイングランドが勝利

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランスが第1シードを確定した3年前のウインドウマンス

 過去4年間か不振が続いたと前回の本連載で紹介したが、4年間の中で1度だけ輝きを放ったことがある。それが3年前の秋のウインドウマンスである。フランスは豪州、アルゼンチン、サモアに3連勝し、世界ランキングを4位までアップさせ、今回のワールドカップの予選プールで第1シードとなった。このフランスと反対に同時期にランキングを落とし、第1シードから外れてしまったのがイングランドである。
  多くのスポーツでライバル関係にあるフランスとイングランドであるが、3年前の秋は直接対決こそなかったものの、自国開催のワールドカップでシード落ちしたイングランドはフランスに並々ならぬ闘志を燃やしていると言えよう。

■100試合目のイングランド戦に挑むフランスのフィフティーン

 フランスとイングランドの試合はクランチと呼ばれ、1906年にパルク・デ・プランスで対戦して以来これまでに99戦し、フランス38勝、イングランド54勝、7つの引き分けという記録が残っている。
 記念すべき100試合目のクランチ、フランスはセカンドジャージーの赤でこの一戦に臨む。フランスの先発メンバーは第1列は左からバンサン・デバティ、ディミトリ・サルゼウスキー、ニコラ・マス、第2列はアレクサンドル・フランカールとヨアン・マエストリ、第3列はフランカーにヤニック・ニャンガとフルジャンス・ウドラオゴ、ナンバー8はルイ・ピカモールという陣容。そしてハーフ団はスクラムハーフにモルガン・パラ、スタンドオフにフランソワ・トラン・デュック、バックスはセンターにアレクサンドル・デュムーランとレミ・ラムラ、ウィングは左にブリス・デュラン、右にソフィアン・ギトゥン、フルバックはスコット・スペディングとなる。
 注目のパラとトラン・デュックのハーフ団は経験豊富であるが、実戦から遠のいていた不安はある。また、本来であれば主将を務めるティエリー・デュソートワール、その代役とみなされるパスカル・パペの2人が負傷でメンバーから外れているため、この試合の主将は久しぶりの代表戦となるサルゼウスキーが務めることになった。
 一方のイングランド、伝統の純白のジャージー、驚きはサム・バージェスである。13人制ラグビーのスター選手であり、15人制ではバースで第3列を務めていたが、ワールドカップ本番を前に代表に招集し、センターで起用する。

■フォワード戦で劣勢のイングランドが3トライ

 トラン・デュックのキックオフで始まった試合、序盤にフランスは攻め込み、7分にイングランドはたまらずオフサイドの反則、パラがペナルティゴールを決めてフランスは先制し、なおも敵陣で試合を進める。 守勢一方のイングランドを救ったのが右ウィングのアントニー・ワトソンであった。11分に右隅にトライし、難しいところをオーウェン・ファレルがゴール成功、7-3と逆転する。ワトソンは18分にも連続トライ、ゴールは成功しなかったが、12-3とリードを広げる。
 フランスは26分、33分にパラがペナルティゴールを決めて9-12と追い上げる。前半のフランスはゲームを支配しながらイングランドにリードを許してハーフタイムを迎える。
 後半に入り、両チーム積極的にメンバーを交代する。46分にイングランドはまるジョニー・メイがトライをあげ、フランスは60分にハーフ団を入れ替え、ロリー・ココットとレミ・タレスがコンビを組む。

■フランスの反撃は1トライ、イングランドが勝利

 フォワード戦では優勢だったフランスがようやくトライをあげる。61分、ラインアウトでマエストリがボールを確保、そのままモールで前進、ゴールラインを越えたところでウドラオゴがタッチダウンし、この試合チーム初のトライをあげる。右隅からのゴールはココットが狙うが、外れ、14-19と5点差を追うことになった。フォワード戦で優位なフランスはイングランドの反則を誘うが、ペナルティゴールではなくトライを狙い、同点、逆転を企むが、イングランドの白い壁を破ることはできなかった。
 100回目のクランチは3トライをあげたイングランドがフランスを19-14と下したのである。(続く)

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