第69回 連覇を目指す23人(5) 韓国に辛勝、不安定な守備陣とジダンの負傷

■パリ、大阪、指宿、そして京城

 ベルギー戦での敗戦の翌日、フランス代表は関西国際空港経由で指宿に到着し、6日間の合宿を行う。月曜日に指宿に到着し、合宿の中盤には浦和レッドダイヤモンズとの練習試合を行い、夫人の出産に立ち会ったジネディーヌ・ジダンも遅れて合流した。そして土曜日に京城に移動し、ここをベースにしてグループリーグを戦かうことになる。

■ベストメンバーでの韓国戦は鉄壁の守備が乱れて2失点

 フランス代表は韓国に到着した翌日の5月26日に韓国代表と親善試合を行い、5月31日のセネガル戦を迎える。京城から約50キロ離れた水原で行われた韓国戦にフランスはベストメンバーで臨んだ。相手の韓国には昨年のコンフェデレーションズカップで5-0と圧勝しており、ジダンとティエリー・アンリを欠いて敗れたベルギー戦のショックから立ち直るチャンスかと思われたが、3-2と勝ったものの精彩を欠く内容で不安を残した。
 フランスの守備陣はGKにファビアン・バルテス、DFはビシャンテ・リザラズ、マルセル・デサイー、フランク・ルブッフ、リリアン・テュラムが並び、守備的MFはパトリック・ビエイラとエマニュエル・プチが入るというベストメンバーであった。攻撃陣もジダン・アンリが復帰し、ダビッド・トレゼゲがトップに入り、その後方にはジダンを中央にしてアンリとジョルカエフが左右に控える。ジョルカエフはベルギー戦と浦和レッドダイヤモンズ戦での動きが評価されての先発出場である。これだけのメンバーが揃った青いユニフォームは久しぶりのことである。キックオフの笛を吹くのは日本の岡田正義氏。
 立ち上がりはフランスがリズムをつかみ、15分にはトレゼゲがアンリとの連携でアクロバチックな先制点をあげ、代表での20点目を決める。しかしながらフランスはこのベストメンバーの守備陣で2点を失ってしまう。26分には朴智星がデサイーとルブッフを置き去りにして同点ゴール、前半終了間際の41分にもこの2人がミスをし、逆転ゴールを薛琦鉉に許してしまう。また、ビエイラとプチのコンビも連携がよくなく、調子を落としている。ベルギー戦に続き2失点を喫し、今まで揺るぎなかった守備陣にも不安がよぎる。安定した守備が1998年ワールドカップ、2000年欧州選手権の二冠の原動力であり、現在の守備陣の状況は不安を持たざるを得ない。

■ジダン、負傷により途中退場

 一方、攻撃陣についての不安は負傷者である。38分にはジダンが左太ももを負傷し、フランス代表のチームドクターであるジャン・マルセル・フェレー医師の精密検査を京城で受けることになる。またアンリは5月22日の浦和レッドダイヤモンズ戦を欠場し、満を持して韓国戦のピッチに立ったが、大事を取って前半だけで退く。すでにロベール・ピレスを失っている攻撃陣にこれ以上の負傷者は許されないところである。

■控えメンバーにもまだチャンス?

 ジダンに代わりピッチに入ったのがシルバン・ビルトール、右サイドを守っていたジョルカエフが中央に入り、ゲームメーカーを務める。そしてアンリに代わってクリストフ・デュガリーが左サイドに入る。また精力的に走り回ったチーム最年長である34歳のジョルカエフに代わってチーム最年少の20歳の青年、ジブリル・シセが代表2試合目の出場を飾る。相手の韓国も後半になってメンバーを代えてきたが、フランスはこれらの控えメンバーや従来あまり得点に絡んだことになかったメンバーの活躍により、逆転勝ちを呼び込む。53分には自らに対するファウルでFKを得たデュガリーがジョルカエフからのFKをヘッドであわせて同点に追いつく。ロスタイムが3分と表示された試合終了間際の89分にはルブッフがビルトールからのセンタリングにあわせて決勝点をあげる。
 韓国戦は勝利はおさめたものの、守備の乱れとジダンの負傷はあとわずかに迫ったワールドカップの開幕に向けて不安材料である。その一方、従来とは違う得点パターンで勝利をあげたことも事実である。この韓国戦が本大会前最後の準備試合と思われている読者の方も少なくないだろうが、実はフランスは友好国韓国の恩恵を受け、準備試合を他にも用意していたのである。(続く)

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