第71回 開幕戦でセネガルに敗れる(1) 敗因1:ジネディーヌ・ジダンのバックアップ

■ジダンの欠場が最大の敗因

 決して油断していたわけではなかっただろう。しかし、フランスはセネガルに敗れた。ジネディーヌ・ジダンの負傷欠場、守備の乱れと不安材料はあったものの、開幕戦でフランスが敗れるとは想像すらしていなかった。
 ジダンの不在が最大の敗因であると指摘する声が強い。事実、ジダンの不在により中盤での球回しに時間と手数がかかり、有効な攻撃につながらなかった。ボール支配率の高さ、シュート数ではセネガルに勝ったものの無得点に終わったのは攻撃陣が「生きた球」を受けることができなかったであろう。また、ジダンの代役であるユーリ・ジョルカエフは攻撃面で精彩を欠いただけではなく、自らがボールを奪われ、決勝点の原因を作ってしまった。

■バックアップのゲームメーカーの必要性

 ジダンの欠場による攻撃力の低下と代役ジョルカエフのミスは明白であり、セネガルの勝利は順当なものである。しかしながら、ジダンの不在については想像し得るものであり、セネガル戦の敗戦を回避することはできなかったのであろうか。
 ジダンの欠場とその代役を務めたジョルカエフについてはセットで論じるべきであろう。ゲームメーカーであるジダンを試合中にリズムを変えるために他の選手を起用すると言うケースは考え難い。むしろジダンが負傷などにより出場できない場面を想定し、ジダンのバックアップのゲームメーカーが必要である。通常の試合であればベンチ入りの人数は限定されており、ジダンの代役という立場の選手をベンチに入れるような贅沢な選手起用はできない。しかし、ワールドカップ本大会では登録した23人全員がベンチ入りするため、代役の選手を入れることができ、入れなくてはならない。チームにとって最も影響力のある選手がジダンであるならば、その代役の選出については十分に吟味する必要があるはずだった。

■2人のバックアップ、ユーリ・ジョルカエフとジョアン・ミクー

 当初、このジダンの代役は昨年のコンフェデレーションズカップでも大活躍したエリック・カリエールが担うはずであった。ところが、本連載第47回で紹介したとおり、3月のスコットランド戦の直前にロベール・ピレスが負傷したことにより、候補者から一旦は外れたジョルカエフが代表に半年ぶりに復帰する。そして第66回で紹介したとおり5月の初めにジョルカエフとジョアン・ミクーがカリエールを抑えてジダンの代役として最終の23人の中に入る。
 そして3月23日のスコットランド戦ではゲームメーカーにジダンを先発させ、ジダンの右にシルバン・ビルトール、左にアンリ、前にトレゼゲという布陣で試合開始。前半に大量得点差がついた余裕のフランスは74分にカリエールをトレゼゲに代えて投入、81分にはジダンに代えてジョルカエフを起用する。
 次の親善試合は4月17日のロシア戦であり、メンバー決定前最後の試合である。この試合のメンバーにはすでにカリエールの名は無く、ジダンのバックアップ候補としてミクーが招集された。この段階でカリエールは構想外となり、イタリアのパルマで出場機会に恵まれないミクーがテストされることになったのであろう。ロシア戦もゲームメーカーはジダン、右にジョルカエフ、左にアンリ、前にニコラ・アネルカという布陣のスタートとなる。俊足のアンリとアネルカが前方に入り、後方のジダンとジョルカエフが2人でゲームメーカーと言うフォーメーションも見られたが、結局ジダンがフル出場し、ミクーは82分にトップのアネルカに代わって出場するにとどまった。試合そのものはフランスが圧倒的に支配し、シュート数でもロシアの5本に対し20本のシュートを放ったがノーゴール。また、親善試合といいつつも両チームの闘志がぶつかり、つかみ合いの試合中断がある、という展開の中で大黒柱のジダン以外の選手にゲームメーカーを任せることはできなかったのであろう。

■疑問の残るバックアップのゲームメーカーの選考

 このように2つの親善試合を経て、ジダンの代役はカリエールからジョルカエフとミクーの2人がリストアップされたのである。そして夫人の出産と重なりジダンが欠場した5月18日のベルギー戦ではジダンの代役として前半ジョルカエフ、後半ミクーがゲームメーカーを務めた。結果については本連載第64回でご紹介したとおりである。
 ジョルカエフはメンバーを決定する段階の試合でジダンの代役を務めたのは大差のついたスコットランド戦のラストわずか9分、ロシア戦は先発し62分間出場したもののジダンとの併用であった。一方、ミクーについてはジダンをはずせない状況のロシア戦で最後の8分間出場しただけである。果たしてこれらの「テスト」で彼らをジダンの代役と認定したことに間違いは無かっただろうか。答えはすでに5月18日のベルギー戦で出てしまった。「登録メンバー全員がベンチ入り」というワールドカップ本大会特有の大会規定に適応できなかったフランスらしからぬミスである。(続く)

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