第435回 スイス、イスラエルと連戦(2) 3たびホームで無言のドロー、前半戦終了

■大量の負傷者をかかえ、前日のメンバー発表を拒否

 フランス代表にとって3月末の連戦は折り返し点をはさんでの試合となる。折り返し点を迎える最後の試合はホームでのスイス戦、そして折り返してからの初戦は4強との初のアウエーでの対戦となるイスラエル戦になる。これまでホームで1点も取ることができず、上位4強との対戦では勝ち星をあげることができない状況で迎えた中盤戦、連勝だけが求められている。一方のスイスもフランスに勝てば一気に首位に躍り出ることもできる。昨年の欧州選手権ではフランスに敗れたスイスであるが、新体制でもたついているフランスに対して勝機は十分にあると考えているはずである。
 フランスは21人のメンバーでこの連戦を乗り切ることを表明しているが、ティエリー・アンリ、ダビッド・トレゼゲ、ビカッシュ・ドラッソー、ガエル・ジベは負傷していることもあり試合出場が危ぶまれている。アンリ・トレゼゲ、ドラッソーの3人は2月のスウェーデンとの親善試合ではいい動きをしていただけに、この3人の負傷は気がかりである。通常は試合の前日にはメンバーが発表されるが、レイモン・ドメネク監督はこれを拒否、試合直前のメンバー発表となった。このことからも以下にフランスが追い込まれているかをうかがい知ることができる。

■経済面で打撃を受けたスイスとフランス

 フランスもスイスも試合の直前に経済面で衝撃的な事件に直面した。まずスイスはスイスエアーがドイツのルフトハンザに統合されてしまった。スイスエアーは80%がスイス政府などスイスの株主であり、これらの株主が同意したとは言え、ナショナルフラッグが実質的に国外の企業の傘下になることは国民の士気に関わることであろう。そして、日本のライブドアによるニッポン放送の株式取得の影響がフランス経済にも影響を与えており、ローラン・ルノーの牙城が日本のIT長者の手に落ちようとしている。このように自国経済が危機に瀕している時こそ、サッカーなどのスポーツでの好成績が望まれるところである。

■大統領も外遊のため不在のフランス

 しかし、この時期にフランスのジャック・シラク大統領は外遊中である。ワールドカップ予選時に一国の元首が不在であると言うことは日本の皆様には信じられないことであるが、フランス外交筋はワールドカップ予選よりも大相撲三月場所や愛・地球博の視察を重視した。主要国の元首級として愛・地球博はシラク大統領が一番乗りである。今年の日本の大きな外交問題である国連の安全保障理事国入りに対してすでに中国では反対署名が800万を越えている。そして韓国では独島問題で反日感情が高まっている。中国・韓国寄りの外交を貫いてきたフランス外交筋も日中韓のバランスを取るために大統領の訪日を設定したのであろう。

■ホームで3たびスコアレスドロー、試練の後半戦へ

 そして不在だったのは大統領だけではない。26日の21時にキックオフされる試合のスターティングメンバーには負傷しているアンリの名はなかった。一方、アンリ同様出場が危ぶまれたトレゼゲ、ドラッソー、ジベは出場する。トレゼゲはシルバン・ビルトールとともに2トップを務め、ホームでの予選での初ゴールと初勝利を狙う。一方のスイスはレンヌに所属するFWのアレクサンドル・フレイ1人をトップに残してカウンターアタックを狙う布陣である。試合はフランスが支配するがゴールは遠い。後半にはビルトールのパスを受けたトレゼゲがスイスのGKと1対1になる好機も訪れたが、ゴールは生まれず、スコアレスドローとなり、久しぶりに8万観衆がつめかけたスタッド・ド・フランスはため息に包まれた。
 フランスがホームで最後に勝利したのは昨年6月のウクライナ戦、次のホームゲームは8月17日のアルゼンチン戦である。つまり、フランスは1年以上ホームで勝ち星がないことになる。これはワールドカップや欧州選手権の予選が行われるようになり、国際試合が年に数回行われるようになった1950年代後半以降初めてのことである。
 前半戦を終了した段階で、フランスは順位こそ2位をキープしたが、前半戦で上位4強とホームでの対戦を終え、3引き分けに終わる。上位4強との対戦はアウエーでしか残されていない。フランスの後半戦は4強とのアウエーゲーム3試合と2弱とのホームゲーム2試合である。26日のアイルランド戦で終了間際に追いついた上位4強の一角イスラエルとの対戦で始まる後半戦は、試練以外のなにものでもないであろう。(続く)

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