第1465回 スペイン戦、敵地で貴重なドロー(3) オリビエ・ジルー、スペイン戦で6年ぶりのゴール

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■立ち上がりから守勢に回るフランス

 2年後のブラジル行きのチケットをかけた戦いがいよいよキックオフされた。白いユニフォームのフランス、スタッド・ド・フランスでの敗戦のショックから立ち直るという意味でもいい色である。フランスのキックオフで始まった試合だが、開始直後からスペインが試合を支配する展開となった。ローラン・コシールニー、ママドゥ・サコのストッパー陣、GKのウーゴ・ロリスは仕事に追いまくられることになる。フランスは試合を組み立てることができず、前方にロングボールを蹴りこむがスペイン守備陣に容易に阻まれる。フランスは守勢一方の展開となる。
 フランスにとっての活路はサイド攻撃である。右サイドのジェレミー・メネス、左サイドのフランク・リベリーが攻撃の起点となる。激しい試合となり、10分にはスペインのダビド・シルバがピッチに倒れ、交代を要求し、サンチャゴ・カゾーリアと交代する。

■25分にスペインの先制を許す

 スペインの攻撃は左サイドから、アンドレアス・イニエスタが攻め込み、ジョルディ・アルバがクロス、コシールニーがCKに逃れる。最初の15分間のフランスのボール保持率はわずかに26%、フランスは数少ないボール保持のチャンスも最終ラインでボールを回して苦し紛れに前方に放り込んでボールを奪われるというパターンが続く。
 フランスにとって厳しい時間帯が続き、直前のフランス-日本戦とは全く逆の立場となる。フランスが一方的に支配した日本戦はフランスがなかなかゴールを奪えず、最後に失点したが、世界王者、欧州王者はこういう展開できっちりと得点をあげる。25分、スペインのクロスに対してフランスはヘディングで対応するが、クリアしきれず、ペドロ・ロドリゲスのパスに対して最後にボールを触ったのはスペインのセルヒオ・ラモス、スペインの先制点に対し、歓喜の赤のうねりが起こる。

■リズムをつかんだフランス、スペインゴールを襲うが無得点

 フランスに初めてのチャンスが訪れたのは、スペインに先制を許してから10分後、フランク・リベリーからカリム・ベンゼマへとつなぐが、スペインのGKイケル・カシージャスがCKに逃れる。得点ならず。さらに39分ヨアン・カバイエからのクロスをメネスがシュートするが、オフサイドの判定。
 ここでフランスはコシールニーがペナルティエリア内で反則を取られ、スペインにPKが与えられる。PKのキッカーはセスク・ファブレガス、万事休すと思われたが、主将ロリスがシュートを止める。ロリスはこの日好調で、その3分後の決定機も阻止する。日本戦では試合勘の戻らなかったロリスであるが、ようやく目を覚ました。
 そして前半はスペインの攻撃、フランスの守備という構図になったが、試合を支配されながらもフランスはシュートの機会が増えていく。ボール保持率はスペインが7割近くとフランスを圧倒する。
 1点のビハインドで迎えた後半、ローラン・ブラン監督は攻めに出る。一方のスペインは試合は支配し続けるものの、その勢いは前半ほどではない。選手交代はまずマキシム・ゴナロンに代わってマチュー・バルブエナ、スペインの攻撃に耐えたゴナロンから攻撃の起点となるバルブエナを投入した。ここからフランスがチャンスをつかみ始める。リベリーのシュートは名手カシージャスがCKに逃れる。またブレーズ・マツイディからベンゼマへの縦パス、リベリーのクロスをベンゼマがシュートするなどフランスはしばしばスペインのゴールを襲うが、カシージャスが立ちはだかる。

■ロスタイムの94分、ジネディーヌ・ジダン以来のスペイン戦での得点が決まる

 前半よりもチャンスが増えたとはいえ、試合を支配していたのはスペイン、時計の針は動き、フランスの敗色濃厚となる。3試合連続で完封負けを喫している相手の前に今回もゴールを記録することなく、4連敗となるのか。フランスは地元マドリッドの悪役ベンゼマに代えて、昨季のフランスリーグ得点王オリビエ・ジルーを88分に投入、しかしスペインに押し込まれ、93分位はCKのピンチ。しかし、この敵CKから奇跡が起こる。カウンター攻撃でリベリーにつなぎ、リベリーからのクロスをジルーが得点し、フランスは土壇場で追いつく。日本戦とは全く逆の展開となった。
 ジルーの得点はスペイン戦では2006年ワールドカップでのジネディーヌ・ジダン以来のゴールである。この6年ぶりのゴールでフランスは敵地で貴重なドロー、勝ち点1を獲得したのである。(この項、終わり)

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