第1627回 ウクライナと運命のプレーオフ(2) プレーオフとフランス戦で勝利のないウクライナ

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■2010年大会予選ではギリシャに敗れ、2002年大会ではドイツに敗れる

 本連載第1620回ではウクライナがプレーオフを苦手としていることを紹介した。前回の2012年ワールドカップ予選ではギリシャと対戦し、アウエーでの第1戦はスコアレスドローでしのいだが、4日後にホーム、ドネツクのドンバス競技場で行われた第2戦は前半31分に先制点を奪われたまま90分が過ぎてしまい、1分1敗で敗退する。
 その10年前には2002年ワールドカップ予選のプレーオフでは本大会で決勝に進出するドイツと対戦した。キエフのオリンピック競技場での第1戦、ウクライナは先制するが、ドイツのミハエル・バラックに追いつかれてドロー、ドルトムントのウェストファーレン競技場ではドイツが猛攻をかけ、ウクライナはロスタイムにアンドリー・シェフチェンコが1点を返しただけで1-4と大敗する。

■キエフの超満員のファンを失望させたスロベニア戦

 さらに2000年の欧州選手権もプレーオフでスロベニアと対戦する。第1戦はアウエーでの戦い、リュブリャナのベジグラード競技場での試合、前半にシェフチェンコが先制点をあげて、ウクライナはリードして折り返すが、後半に2得点を奪われ逆転負け、第1戦アウエーで1-2の敗戦というのは悪い結果ではなく、ホームでの第2戦は1-0で勝利すればいい。その定石通りにウクライナはキエフのオリンピック競技場で行われたホームゲーム、68分にセルゲイ・レブロフが先制点を奪う。この1点を残り32分間守り切れば初の欧州選手権出場権を獲得できるはずだったが、78分にミラン・パブリンにゴールを決められてしまう。残り12分で最低1ゴールをあげなくてはならないウクライナは守りを固めたスロベニアの前に屈し、8万大観衆を失望させたのである。

■初出場を賭けた争いはクロアチアに軍配

 ウクライナが初めて世界の舞台へ王手をかけたのが1998年ワールドカップ予選である。この当時はウクライナのように1990年代に入って誕生した旧ロシア、旧ユーゴスラビアから独立した国々はまだ十分に国際試合の実績がなく、予選のグループ分けをする段階でのシード順は低く、ウクライナも第4シードとして予選を戦ったが、第2シードのポルトガル、第3シードの北アイルランドをかわして、第1シードのドイツに次ぐ2位となりプレーオフに臨む。
 プレーオフの相手は旧ユーゴスラビアが解体して誕生したクロアチアである。旧ソ連と旧ユーゴスラビアを支えたウクライナとクロアチアが顔を合わせ、第1戦はクロアチアのホームゲーム、ザグレブで行われた試合はクロアチアがスラバン・ビリッチが先制点、後半に入ってもゴラン・ブラオビッチが追加点をあげる。ブラオビッチについてはこの年の初夏に訪日したことから日本の皆様はよくご存じであろう。第1戦をアウエーで0-2と落としたウクライナは11月15日にキエフのオリンピック競技場にクロアチアを迎える。5分にシェフチェンコが先制ゴール、8万大観衆は早い時間帯の得点に歓喜するが、ウクライナの得点はこの1点だけ、逆にクロアチアは27分にアレン・ボクシッチが同点ゴールを決めて1-1のドローとして初出場をかけた戦いはクロアチアに軍配が上がり、本大会でも4位になったのである。
 このように、ウクライナのこれまで4回のプレーオフの戦績は8戦して4分4敗、ホームゲームは3分1敗、アウエーゲームは1分3敗と今まで1回も勝利したことがない。

■フランスとの対戦成績は3分4敗と未勝利

 そしてウクライナが勝利を記録したことがないのはプレーオフだけではない。フランスとのこれまでの対戦成績は3分4敗と今まで1回もウクライナはフランスに勝利したことがない。両国の最初の対戦は2000年欧州選手権の予選、ホーム、アウエーともスコアレスドローとなり、手ごわい相手であると感じたが、その後はフランスが4勝1分と圧倒している。直近の対戦は昨年ウクライナとポーランドで開催された欧州選手権のグループリーグ、ドネツクでの試合でフランスは2-0と勝利、このプレーオフに対して楽観的なファンも多数いたのである。(続く)

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