第1626回 ウクライナと運命のプレーオフ(1) 解説者批判のパトリス・エブラが代表入り

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■9月10日のベラルーシ戦の後半から生まれ変わったフランス代表

 いよいよ11月15日と19日はウクライナとのプレーオフである。15日にウクライナのキエフ、19日にサンドニのスタッド・ド・フランスで行われる2試合で、フランス代表が5大会連続のワールドカップ出場を決めるかどうかが決まる。
 グループIでスペインに及ばなかったフランスは、夏以降はこのプレーオフに照準を合わせてきたと言ってもいいであろう。昨年夏に就任したディディエ・デシャン監督は成績低迷に苦しみ、特に今年3月26日のスペイン戦から9月6日のグルジア戦まで無得点の試合が続き、得点力不足に悩まされた。ところが9月10日のベラルーシ戦の後半からチームは生まれ変わり、ベラルーシ戦は後半だけで4得点、10月に入って11日の豪州戦は6得点、15日のフィンランド戦は3得点で2試合半で13得点とゴールを量産している。

■この1年でランキングを大きく上昇させたウクライナ

 フランスは回復基調であるが、対戦するウクライナは本連載第1620回で紹介した通り、この1年間は負けなし、世界ランキングを大きく上昇させ、10月に発表された最新のランキングではフランスをかわして20位となり、21位のフランスをおさえての上位シード入りである。上位シード国の中で一番世界ランキングが低いと言っても油断ならない相手である。

■24人のメンバーを発表したディディエ・デシャン監督

 さて、このウクライナ戦に向けてデシャン監督は11月7日に24人の選手を発表した。GKはウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、ミカエル・ランドローの3人、DFはマチュー・ドビュッシー、エリック・アビダル、ガエル・クリシー、パトリス・エブラ、バカリ・サーニャ、ローラン・コシエルニー、ラファエル・バラン、ママドゥ・サコーの8人、MFはブレーズ・マツイディ、ポール・ポグバ、ムーサ・シソッコ、クレマン・グルニエ、ヨアン・カバイエ、サミール・ナスリ、リオ・マブーバの7人、FWはフランク・リベリー、マチュー・バルブエナ、ディミトリ・ペイエ、カリム・ベンゼマ、オリビエ・ジルー、ロイック・レミーの6人となる。10月の2試合に選出された23人にMFのマブーバが加わった形となり、好調なチーム状態をそのまま引き継いだ妥当なメンバー選出かと思われたが、フランス国内では大きな議論になった。

■大きな議論を巻き起こしたパトリス・エブラの代表入り

 それはエブラである。エブラは10月20日の朝に放映されたTF1のサッカー番組のテレフットの中で4人の解説者(ルイ・フェルナンデス、ビシャンテ・リザラズ、ピエール・メネス、ローラン・クルビス)に対し、強い口調で非難し、解説者たち、特に同じ左サイドDFであるリザラズに対し、「自分のイメージを汚そうとしている」と発言した。このテレフットは日曜日の朝の国民的番組であり、エブラの発言は大きな衝撃を与えた。本連載の読者の方ならばよくご存じの通り、2012年の欧州選手権の際にジャーナリストに暴言を吐いたナスリは代表チームでの出場停止処分が科せられている。今回はテレビ、しかもたくさんの視聴者のいる人気番組での発言ということでどのような対応をするのかが注目された。
 早速フランスサッカー連盟はこの発言を問題視し、所属チームのマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)がチャンピオンズリーグでレアル・ソシエダ(スペイン)と対戦した翌日の24日にエブラを連盟に呼んで事情聴取した。ノエル・ルグラエ会長とデシャン監督が面談し、エブラの発言は正当化できないが、代表チームへの招集には影響しない旨の見解を発表している。
 2週間後、デシャン監督の発表した24人の中にエブラの名前があったことは、ファンの間で議論となった。9月のグルジア戦で半年ぶりに復帰したエブラは10月の連戦では2試合とも出場、不可欠なメンバーではあるが、2010年の南アフリカワールドカップでは練習ボイコットの中心メンバーとして5試合の出場停止処分を受けたこともある。このところ規律の問題でチームに亀裂の入ることの多いフランス代表、爆弾を抱えてのウクライナ入りである。(続く)

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