第2272回 2018年ワールドカップ展望 (2) 強さを見せたブラジル、予選落ちした常連の米国とチリ

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■2年間の長丁場の戦いの南米予選

 前回の本連載では欧州から出場する14か国について紹介したが、今回は南米と北中米カリブ海の地区から出場する国を紹介しよう。
 まずは欧州と並んでワールドカップを牽引してきた南米地区であるが、欧州地区とは事情が異なる。まず、欧州では2年に1度ワールドカップと欧州選手権の本大会が交互に開催され、それに向けて予選が行われるが、南米の場合は南米選手権が変則的な日程で行われることに加え、本大会に全チームが出場するため、予選はワールドカップにしか存在しない。したがって、10か国がホームアンドアウエーの総当たりの18試合を2年かけて行う。今回の予選は2015年秋に始まり、2017年10月に終わるという長丁場である。
 さらに有力国の選手のほとんどは欧州のクラブに所属しているという点である。もちろん、予選の開催はインターナショナルマッチデーに行われるが、有力国の場合は親善試合も欧州で行われることが多く、選手にとってはホームゲームであっても長距離の移動を余儀なくされる。一方、中堅国以下のチームの場合は選手が自国内のクラブに所属している割合が高く、ホームゲームの恩恵を受けることができる。その結果としてジャイアントキリングがしばしば起こる。

■苦戦したアルゼンチン、コロンビア、強さを見せたブラジル

 今大会も苦戦したのはアルゼンチンであり、ホームでパラグアイ、エクアドルに敗れている。またコロンビアはホームゲームではブラジル、ウルグアイに引き分け、アルゼンチンを破るなど上位陣相手に好成績を残したが、アウエーで格下のチームに次々と敗れて苦戦した。その中で前回の自国開催で思うような成績を残すことができなかったブラジルはホームではウルグアイに引き分けただけで8勝1分、アウエーでもチリに敗れ、アルゼンチン、コロンビア、パラグアイ、ボリビアに引き分け、4勝4分1敗で乗り切り、早々と予選突破を決め、2位以下を引き離して首位で通過した。
 2位通過はウルグアイである。ブラジルにはホームで大敗したが、アウエーで引き分け、そして下位のチームから確実に勝ち点3を獲得したことが本大会出場を導いた。苦戦したアルゼンチンは3位、コロンビアは4位に入り、ここまでが本大会出場権を獲得した。

■大混戦となった2位以下の争い

 2位から7位までは混戦であった。4位までが本大会に出場でき、5位は大陸間プレーオフに回る。最終節を迎える段階で2位のウルグアイと7位のパラグアイまで勝ち点差はわずかに4、最終戦で勝利したウルグアイ、アルゼンチン、引き分けたコロンビアが本大会出場、コロンビアとホームで引き分けに終わったペルーは5位にとどまった。そして最終戦で敗れたチリ、パラグアイ、エクアドルは夢をかなえることができなかった。
 大陸間プレーオフに回ったペルーはニュージーランドと対戦し、1勝1分で久しぶりの本大会出場を決めた。
 前回大会で不本意な結果に終わったブラジルの強さが目立った予選であるが、ようやく出場権を得た他の有力国の選手にとってもロシアはホームであり、本大会では予選のようなことはないであろう。

■有力6か国で争われた最終予選の最終戦で逆転劇

 そして南米予選とは対照的に、35という多くのチームがエントリーしているのが北中米カリブ海地区である。世界ランキングを元に多段階の予選を行い、最終段階の5次予選にはコスタリカ、メキシコ、米国、ホンジュラス、パナマ、トリニダードトバゴの6チームが残った。
 この6チームは当初からシードされ、4次予選から参戦したチームが順当に4次予選を勝ち抜いた。ホームアンドアウエーの総当たりで2016年11月から2017年10月にかけて行われた5次予選ではメキシコとコスタリカが勝ち点を伸ばしたものの、米国、ホンジュラス、パナマの4チームが混戦となった。米国は最終戦を迎える時点で3位、ホンジュラス、パナマに勝ち点2差をつけていたが、最下位が確定しているトリニダードトバゴに敗れてしまう。そしてすでに本大会出場を決めているメキシコとコスタリカにホンジュラスとパナマがホームで勝利、得失点差でパナマが3位となり、本大会に初出場を決める。4位のホンジュラスは大陸間プレーオフに回り、アジアの豪州に敗れる。また5位に沈んだ米国は久しぶりにワールドカップ出場権を失ったのである。(続く)

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