第37回 スタッド・ド・フランス1周年

■スポーツからコンサートまで、23回のイベントが行われた

 昨年1月28日に無敵艦隊スペインをジネディーヌ・ジダンのゴールで下し、7月12日にはワールドカップ初制覇と、フランス・サッカーの新しいページをつくってきたスタッド・ド・フランス(フランス・スタジアム)が1周年を迎える。20世紀最後のモニュメントと言われるスタッド・ド・フランスの1年を振り返ってみよう。
 この1年間、全体ではサッカー13試合、ラグビー4試合、コンサート4回、スーパークロス1回、ファンボード1回の合計23回のイベントが行われた。
 まず、サッカーの試合は13試合行われ、そのうち9試合がワールドカップ、1試合が欧州選手権予選、1試合が親善試合、2試合がフランス国内のカップ戦の決勝。フランス代表はこのスタジアムで5勝1分、記録上は引き分けとなっているワールドカップ準々決勝のイタリア戦もPK戦で勝利を収めたので、実質的には6戦全勝と言えるであろう。

■パリサンジェルマンの二冠達成

 特筆すべきは、昨年まったくの不振にあえいだパリサンジェルマンがカップ戦で無類の強さを発揮し、フランスカップ、リーグカップともに制覇したことである。4月4日のリーグカップ決勝ではボルドーと延長の末、2-2の引き分け、PK戦で勝利を収め、このスタジアムで初めて勝利を記録したクラブチームとなった。この試合、延長後半にパリサンジェルマンがライーのゴールで勝ち越したが、終了5分前ジャン・ピエール・パパンがフリーキックから見事なシュートを決めたのが印象的である。
 そしてパリサンジェルマンは、5月2日のフランスカップ決勝でも、翌週にリーグ優勝を決めることになるランスを2-1で下し、二冠を達成した。パリサンジェルマンはホームスタジアムの移転の申し入れを再三拒否した。スタッド・ド・フランスにホームスタジアムを移さなくとも、カップ戦でファイナルに残り、勝てばそれでよし、というクラブの意地を見事に示す結果となったのである。

■ラグビーでも地元チームの活躍がパリを沸かせた

 ラグビーを見てみよう。昨年の五か国対抗では、開幕戦で劣勢を予想されたイングランド戦に見事に勝利、勢いづいたフランスは2年連続のグランドスラム(4戦全勝)でスタッド・ド・フランス開幕の年を飾ったのである。クラブチームのフランスナンバーワンを決めるラグビーのフランス選手権でも異変が起こった。決勝は南西部の強豪 ペルピニャンが大応援団とともにパリにやってきた。迎え撃つのはパリの名門クラブ、スタッド・フランセ。100年以上の歴史を誇り、前世紀の末には優勝をたびたびしているが、今世紀になってからは目立った戦績は残していない。チーム名(フランスのスタジアム)からわかるとおり、貴族社会の英国人が持ち込んだスポーツの分野でフランス人が対抗してマルチスポーツクラブをつくったものである。決勝ではこの超古豪が34-7と圧勝してしまった。クラブチームが覇権を競った3つの決勝ではいずれも地元パリのチームが見事に勝利を収めたのである。
 さて、ラグビーでもフランス代表が全勝で終わりたかった年であったが、最後の試合でつまづいた。11月21日のテストマッチ豪州戦。フランスは試合を支配し、前半は21-20でリードして折り返したが、後半逆転され、結局21-32で敗れ、スタッド・ド・フランスでの無敗神話は崩れた。秋に欧州勢は南半球の強豪を迎えてテストマッチを行うが、前年にパルク・デ・プランスで行った南アフリカ戦では10-52と大敗を喫した。この結果や最近の豪州との対戦成績(3連敗中)を考慮すると、格段の進歩であり、スタッド・ド・フランス効果がサッカー同様にあったと言えよう。

■高すぎる使用料に弊害も生まれた

 コンサートに関しては、ワールドカップの余韻がさめない7月にローリングストーンズが公演を行ったことは知られているが、9月にはフランスを代表するミュージシャンであるジョニー・アリデーが3日間コンサートを行った。9月4日に予定されていた初日は雨にたたられ11日に延期となったが、いかにもフランス人好みの大がかりな仕掛けのコンサートを行うこの老人に、パリジャンは酔った。
 このスタジアムに問題点がないわけではない。パリサンジェルマンなどのクラブチームの誘致に失敗し、スタジアムとしても芝の状態が悪く、コンサート会場としても未だに会計報告がなされておらず、主催者を悩ませている。なんといっても1回1億円を超える使用料は主催者泣かせである。五か国対抗ラグビーはそのため入場料を大幅に値上げせざるを得なかった。

■フランス勢、パリ勢の活躍で、スタジアムは神話的存在に

 のべ170万人を動員したこれらの23回のイベントの他に、一般見学コースを設け、17万人が見学をした。また会議場をオープンし、半年間で200回の会議が行われ7万人が利用するなど、スタッド・ド・フランス側も努力をしている。しかしながら、これらの活動以上に、ここで行われたスポーツイベントではフランス勢、パリ勢の活躍が何よりの成果であり、すでにこのスタジアムの存在は神話となった。
 今年はすでに17のイベントが予定されている。サッカーではフランス代表のホームスタジアムとして定着し、2000年の欧州選手権に向けて、ホームゲームの残り4試合を戦う。昨年同様、フランスカップとリーグカップの決勝も予定されている。ラグビーは五か国対抗、フランス選手権決勝に加えて、10月にはワールドカップの準々決勝が行われる。コンサートも映画「タイタニック」の主題歌で話題となったセリーヌ・ディオンが6月に行う。特筆すべきは7月に陸上大会が予定されていることである。
 さて、2年目となったスタッド・ド・フランス、今年はどのようなドラマが待っているのであろうか。

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